Column

暑熱馴化と日頃の暑さ対策

2015.07.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 夏の暑い時期はいかに体を暑さに慣れさせるかというのが一つのポイントになります。水分・塩分補給などで脱水症状を起こさないようにすることはもちろんですが、日頃から暑くてもバテない体づくりを念頭に置いて練習を心がけたいものですよね。
そこで今回は暑さに慣れるための「暑熱馴化(しょねつじゅんか)」とその方法、また試合や練習後に自分でできる暑さ対策のセルフコンディショニングについてお話をしたいと思います。

暑熱馴化とは?

真夏の暑さに馴れる体づくりを

 暑熱馴化とは、文字通り「暑さ」に体が馴れる、馴化するということで、暑さに体が適応した状態のことを指します。一般的には暑さ対策を行っておよそ一週間ほどで体が暑さに慣れてくると言われますので、暑さが予想される時期の遅くとも一週間前からはこうした対策をとることが必要です。具体的には、汗を多くかいて汗腺の働きをよくすること。たくさん汗をかくにつれて、汗から排出されるミネラル分が少なくなり、適切な水分補給を行うことで電解質バランスが崩れにくくなると言われています。

 暑熱馴化の環境は人工的にも作り出すことができるため、夏前にウインドブレーカーを羽織ってわざと暑い環境下で練習をするチームもあるようです。しかしこれはウインドブレーカーという特性上、熱がこもりやすくなり、脱水症状や熱中症のリスクが高まります。気温・天候などの外部環境や個人の基礎体力、コンディション(睡眠不足であるとか、風邪をひいているとか)によっても適応能力が違ってきますので、こうしたことを理解した上で無理のないレベルにとどめておくようにしたいものです。

 オススメしたいのは長袖アンダーシャツをうまく活用すること。暑い時期ですが皮膚の日焼け対策としても効果的ですし(日焼けをすると皮膚が炎症を起こし疲れやすくなる)、汗をかいたら着替えるようにして何枚か準備しておくと、効果的に暑熱馴化を行うことができます。


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・【7月特集】真夏のコンディショニング特集
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[page_break:シャワーですませずしっかり入浴 / 日常生活でも暑さ対策を / 集中力を保つためにはよい睡眠を]

シャワーですませずしっかり入浴

汗を流すだけではなく湯船につかって疲労回復を

 特に夏の時期は汗をかいたら、シャワーで汗を流してスッキリしたいという選手も多いと思います。しかし、これは暑熱馴化としても疲労回復としても見直さなければならないもの。暑熱馴化は汗をかくことによって起こりますので、練習後はシャワーにとどめず、湯船に入ってしっかりと体を温めるようにしましょう。肩までつかることが難しいようであれば、半身浴でも構いません。

 じっくりと体を温め、お風呂でも汗をかくようにしましょう。体を温めることは血流を良くし、運動でたまった疲労物質を分解・代謝するサイクルが早くなります。疲れを翌日に残さないためにも、入浴は日頃から心がけたい習慣の一つです。

日常生活でも暑さ対策を

 また普段過ごす室内の温度もなるべく外気温との差が大きくならないように調節します。毎日練習で汗をかいていても、エアコンの効いた涼しい部屋にいると、暑熱馴化は進みません。熱がこもった室内にとどまることは避けなければなりませんが、「少し暑いかな」と感じる程度の室温で外気温に体を馴れさせるようにしましょう。

集中力を保つためにはよい睡眠を

 試合当日にベストコンディションで臨むためには、十分な睡眠が不可欠です。暑い時期はなかなか寝つけないこともあると思いますが、眠りやすい睡眠環境を整えましょう。まずは気になるスマートホン(スマホ)、携帯、パソコンなどを寝る直前まで見ないこと。スマホなどに使われるブルーライトは睡眠のリズムを崩しやすく、またさまざまな情報を得ることで交感神経が刺激されて「眠れない」ということが起こります。

 また体が温まった状態から少しずつ体温が下がるときに眠気を催すので、寝つきにくさを感じる人は寝る直前に少しぬるめのお風呂に入るとよいでしょう。さらに眠れないという人は額を冷やすと眠りやすくなります。頭がヒートアップしているとなかなか寝つけないので、冷たいタオルや冷却シートなどをうまく活用してみましょう。

 暑い時期は暑さに馴れるということと同時に、暑さに負けないようコンディションを整えることが、よりよいパフォーマンスに結びつきます。真夏に心がけたいセルフコンディショニング、ぜひ実践してみてくださいね!

(文=西村 典子

次回コラム公開は7月30日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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