シーズン中でもトレーニングを続けたほうがいい理由
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。
春のセンバツ大会が開催されていると同時に、皆さんのチームも地区大会が開催されていることと思います。オフシーズンに培った体力を野球のプレーに活かすときがきましたね。チームに貢献できる選手として、またチーム全体のレベルアップにつながっているといいなぁと思います。
さてトレーニングをするのはオフシーズンと考えられていることも多いのですが、今回はシーズン中でもトレーニングを続けたほうがいい理由について考えてみたいと思います。
トレーニングの年間計画
トレーニングの最大の目的は「野球の技術レベルを上げること(パフォーマンスの向上)」と「ケガを予防すること」です。春休みなどの長期休み期間は朝から練習できるチームも多いと思いますが、新学期が始まると、夕方の短い時間で効率よく練習を積み重ねなければならなくなります。技術練習や実践練習に時間をかけると、どうしてもトレーニングは個人任せになってしまうのが現状ではないでしょうか。
トレーニングは年間を通じて計画を立て、大きな大会にちょうどベストコンディションで臨めるように、時期ごとに内容を変える必要があります。大まかなサイクルの例を挙げます。
【主にオフシーズン】
●筋肥大・持久力段階・・・オフシーズンの始めに設定し、主に体の土台を作るためのトレーニングを行う
●基礎筋力段階・・・筋肥大期の後に設定し、前段階よりも負荷を高く設定する。また専門的な動きを考慮したエクササイズを取り入れる
●筋力・パワー段階・・・いわゆる「瞬発力」を養うための時期。今まで築いてきた体力レベルをベースに大きな負荷・高スピードでエクササイズを行う
【シーズン中】
●試合期
ピーキング・・・筋力とパワーがピークになるよう、トレーニング強度を強め、量を少なめにする
筋力維持・・・練習のしすぎによるオーバーワークを避けるため、トレーニング強度をやや落とし、量はやや少なめにする
【シーズン終了直後】
●移行期・・・シーズン中の疲労をとり、他のスポーツなどレクリエーション的な要素を取り入れながら行う。トレーニング量はやや少なめに
時期的なものを考慮しつつ、今まで築いてきた体力レベルを維持するためには、シーズン中であってもトレーニングを行う機会はあったほうがいいでしょう。
ただし、野球の練習量が多い時期ですので、さらなる疲労蓄積にならないよう、全体的な練習量やトレーニング量を調整していくことが大切です。トレーニングをしたことによって、ケガをしてしまっては本末転倒ですからね。
ウエイトトレーニングにこだわらない
技術練習の前後や合間にフィジカルトレーニング
重いものをもちあげるウエイトトレーニングだけがトレーニングではありません。体の軸を安定させるために腹筋や背筋を鍛えたり、自重でバランス能力を高めるようなエクササイズを行うことも、試合期では十分な効果が見込めます。筋力レベルをアップさせるのであれば、ある程度の負荷は必要となりますが(過負荷の法則※)、パフォーマンスを安定させるのであれば、大きな負荷にこだわらず、専門的な動きを意識したエクササイズによって、神経系の反応を刺激し、実際のプレーに反映されることが期待できるからです。
片足で体重を支える動きであったり、ボールをトスしながら行うサイドランジなどは、技術練習の合間などの短い時間で取り組むことができそうですよね。
※過負荷の法則・・・トレーニングを行うときは、ある一定上の負荷で運動しなければ効果があらわれないといわれている
投球に必要なローテーターカフを鍛える
投球動作に必要な筋力もしっかり維持させよう
投球動作を安定させるために必要なローテーターカフ(いわゆるインナーマッスル)を鍛えることも、試合期に行ってほしいトレーニングの一つです。
肩関節の安定性を高めるための小さな筋肉群ですが、筋肉ですので疲労もしますし、トレーニングをしなければ筋力レベルは低下します。
正しくトレーニングを行うことによって、肩への負担も軽減されますので、ストレッチとあわせてぜひ毎日の練習に取り入れてくださいね(参考コラム:第39回正しくインナーマッスルを鍛える)。
【シーズン中でもトレーニングをしたほうがいい理由】
●トレーニングの目的は「野球が上手くなること」と「ケガを予防すること」
●トレーニングの年間計画に沿って、試合期にできるトレーニングを行う
●疲労が蓄積されないよう全体的な練習量やトレーニング量を調整しよう
●ウエイトトレーニングにこだわらず、自重トレーニングをうまく活用しよう
●肩のインナーマッスルトレーニングは試合期でも続けて行おう
(文=西村 典子)
次回コラム公開は4月15日を予定しております。