Column

なぜセルフコンディショニングは大切なのか

2014.08.30

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 4年前に書き始めたこのコラムも何と100回を迎えることとなりました。これもひとえに読んでくださっている皆さんのおかげです。本当にありがとうございます!
少しでも高校野球の現場に役立つ話をお伝えしたいと思い、さまざまなトピックスや話題を取り上げてきましたが、コラムを印刷して部室に貼っていただいたり、ポスターをダウンロードして活用していただいたりと嬉しい報告を数多くいただいています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 さて記念すべき100回目は「なぜセルフコンディショニングが大切なのか」ということについてお話をしたいと思います。

ケガは予防できるということを伝えるために

選手たちに埋もれている感のあるウォームアップ風景

 私がトレーナー活動を始めた10数年前に比べると、多くの学校にトレーナーやトレーニングコーチといったフィジカル面をサポートする専門家が増えてきたように思います。それでも実際にサポートを受けられるのは、ホンの一握りの選手たちではないでしょうか。

 また専門家といっても得意分野が違えばサポートする内容も変わります。その多くはケガをしたときの対応であったり、その後の治療やマッサージといったことが中心となり、ケガの予防に対するアドバイスや指導まではなかなか手が回らないのではないかと想像しています。

 私のように実際のスポーツ現場で指導にあたるアスレティックトレーナーは、ケガの応急処置や対応、リハビリテーションの指導はもちろんですが、一番大切にしているのは何より「ケガをどのように防ぐか」というケガ予防のための教育・啓蒙活動なのです。

 スポーツ現場には「ケガはつきもので防ぎようがない」と思われているかもしれませんが、日頃からのコンディショニングによって予防できるものも多くあります。この「セルフコンディショニングのススメ」というコラムは、こうしたことを文字と写真でわかりやすく伝えられるかという私の挑戦でもあります。

自分でできることを増やす

 コンディショニング方法を知っているか知らないかという知識の差は、フィジカル(身体)面に大きな影響を与えます。コンディショニング、すなわちプレーに関する身体的な体力要素(筋力とか柔軟性とか持久力、バランス等)を良い状態に調整することは、自分たちでもできることが多くあります。

 たとえば急にケガをした場合に患部が腫れないようにRICE処置を行ってから病院に行くのと、何もせずにそのままにしておくのとでは、ケガをしてから競技復帰までのかかる時間(日数)が大きく変わってきます。ケガをしたときの適切な対応を知っているかどうか、そしてこれをすぐに実践できるかどうかというところにかかっているのです。

 またケガの予防でいえば走っている最中に起こりやすい「肉離れ」。違和感を感じたときや筋疲労への対応、筋力バランスのチェックとトレーニング方法等、大きなケガにつながる前にできることがたくさんあります。セルフコンディショニングとはこうしたフィジカル面を自分で調整するために知っておきたいことであり、よりよい状態で野球ができるために必要不可欠なものなのです。

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[page_break:野球の現場でどんなことが起こるのか]

野球の現場でどんなことが起こるのか

ケガを予防するためにできることはたくさんある

 今まで野球部のトレーナーとしてさまざまな経験をするうちに、野球というスポーツに特徴的なことや、高校生という成長期特有のコンディショニングなどについても考えさせられることが多くありました。そしてその多くが「こういうことも選手は知らないのか」「教えてもらったことがないのか」とセルフコンディショニングに対する認識不足を感じさせるものでした。

 特に高校生は成長期にあり大人の身体とは違った特徴をもつため、「適切な」トレーニングやコンディショニングを行う必要があります。こうしたことを選手だけではなく指導者の方にも実践していただけるように、さまざまなトピックスを取り上げることで「なるほど!」という理解につながればいいなと思います。

 ウォーミングアップの意義やクールダウンの重要性、疲労回復のためのコンディショニング方法等、どのチームでも取り入れられるようなことを実践し、ケガの予防や野球のパフォーマンスにつながる体力要素の向上に役立てたいと考えています。

自分が自分のトレーナーとして

 専門家の指導を直接受けられる選手もそうでない選手も、自分の身体について理解を深め「自分が自分のトレーナー」という意識でさまざまなことに取り組むことは大切なことだと思います。私自身も選手たちには「できることを増やしましょう」「選択肢を多く持ちましょう」という話をしています。またコンディショニングに対する意識が高い選手はいろんなことを学ぼうとします。

 ストレッチをするたびに筋肉の名前を聞いてくる選手がいたのですが、そのうち関連する筋肉をすべて覚えてしまい、これには驚かされました。その後も腰が痛くなったらこのトレーニングをする、疲労回復のためには入浴にも気を配るといった具合に一つ一つが野球に関連するものとして位置づけられ、私がいるいないに関わらず、一人でもしっかり行っていたようです。こうした選手が卒業後もさらに上のレベルで大活躍しているのは本当に嬉しいことですよね。

 セルフコンディショニングは知っているか知らないかということから始まり、実践するかしないかによってフィジカル面で大きく差が出るでしょう。こうした認識不足を少しでも減らし、「こんな話聞いたことなかった!ためになった!」と選手や指導者の皆さんに喜んでいただけるよう、高校野球の現場に役立つ内容をお届けしたいと思います。今後も「セルフコンディショニングのススメ」をどうぞよろしくお願いいたします!

(文=西村 典子

次回コラム公開は9月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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