雨の日には古傷が痛む
天候が良くないと気圧が下がって古傷が痛む
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
雨の多い季節となりました。どんよりとした曇り空や雨が降りそうな時、過去に大きなケガや手術をしたことのある選手、慢性の痛みを抱える選手などは「患部の調子が悪い、痛い」と訴えることが多く、困っているケースをよく見かけました。天候によってケガの状態が変わるというのも不思議なものですが、晴れたり、雨が降ったりと移り変わりの激しいこの時期、どうして天候によって患部に痛みが起こるのかについてお話をしたいと思います。
痛みを感じる閾値(いきち=限界値のようなもの、これを超えると痛みを感じる)は天候によって左右され、曇りや雨など気圧が下がった状態や低温度になると、その閾値も下がるといわれています。閾値が下がると痛みを感じやすくなるわけですが、こうした気圧や温度の変動による痛みの変化は自律神経の一つである交感神経が関与していると考えられています。交感神経は身体を活発に動かすためにかかせないものですが、同時に血管を収縮させるため、患部周辺部の痛覚が刺激されて興奮し、痛みを感じるというメカニズムなのです。
【痛みを感じるメカニズム】
天気が悪くなる(=気圧が下がる) → 気圧を感じるセンサーが反応して脳に伝達 → 交感神経が作用 →
患部周辺部の痛覚が刺激を受ける → 痛みを感じる
また交感神経の働きが活発になることで、患部周辺部の痛覚が刺激されるだけではなく、血管の収縮によって末梢の血行が悪くなり、疲労物質がたまってしまうことにも原因があるといわれています。いつもより気温が低くなっていることも血行不良の一因となるため、患部の痛みや腫れがなかなか軽減せず「患部の調子が良くない」と感じさせるのかもしれません。痛みがあらわれると、その痛みによって交感神経が刺激を受け、血管が収縮して血行不良になり、さらに痛みが増して…という悪循環におちいりやすいのです。こういった天候の時はどのようなことに気をつけたらいいでしょうか。
入念なウォームアップで身体の中から温めよう
天候が良くない日に「いつもより痛いな」と感じたらあわてずに、曇りや雨の日は痛みを感じやすいということを理解しましょう。そして血行を良くするためにもいつもよりも入念にウォームアップを行うようにします。身体の中からじんわりと汗が出てくる程度まで十分に動くようにしましょう。また環境が整えば、湯船に浸かって入浴し、身体の外から温めるようにするとさらに良いでしょう。ただし、これはあくまでも以前からの古傷・関節痛など慢性的なスポーツ障害に対応するものであり、急性のスポーツ外傷で患部を温めてしまうと腫れがひどくなったり、痛みが増すことがありますので注意しましょう。
また豆知識として、ケガからの復帰を目指すリハビリ期がどの季節になるかというのも考えておく必要があります。手術をしてリハビリを行う期間がこれからの季節(春~夏頃)であれば、気温もどんどん高くなるため患部への血行循環も良く、細胞の治癒促進過程も進みやすいと考えられますが、秋から冬時期であれば、少々時間をかけながらあせらずリハビリを行う必要があるでしょう。気温によって患部への影響も変わってくるからです。ただ高校生にとって大きなケガをした後に、手術の時期を選ぶことはむずかしいと思いますので、寒い時期にリハビリを行う際は「じっくり・あせらず・入念に」行うように心がけてくださいね。
【雨の日には古傷が痛む】
●痛みを感じる閾値は天候によって左右される
●曇りや雨の時は気圧が下がり、交感神経が刺激されて痛みを感じやすい
●血行不良を改善するために、入念にウォームアップを行う
●慢性的なスポーツ障害では患部を温めるが、急性外傷では腫れや痛みの原因になるので注意する
●リハビリを行う季節も考慮して、寒い時期は「じっくり・あせらず・入念に」行う
(文=西村 典子)
次回、第46回公開は06月15日を予定しております。