投げ始めに気をつけたいこと
第16回 投げ始めに気をつけたいこと2011年03月15日
冬季練習中(北照高等学校)
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
3月に入り春季大会が開催される時期になりました。冬のトレーニングや体力強化の時期を経て、ボールを使った練習を行う時間が増えてくると思います。気候も暖かくなり、張り切って投げ始めると何だか肩や肘が痛いなと感じることはありませんか。
今回は春先によく見られる、投げ始めのときに起こりやすい痛みや気をつけたいことについてお話をしたいと思います。
皆さんは硬式ボールの重さはどのくらいか答えられますか。規定によれば141.7~148.8gの重量のものが採用されています。たった150g未満の重さですが、繰り返し投げ続けることで肩や肘に負担がかかり痛みを伴うことがあります。痛みの原因として考えられるのは大きく2つ。1つは「投げ始めのフォームに問題があること」、もう1つは投げる筋力が追いつかずに「投げすぎによる疲労によって関節や筋肉、靱帯に負担がかかること」です。
投げ始めのフォームについては、下半身を使った投球動作ではなくいわゆる「手投げ」状態になってしまうことがあります。投球動作は本来、下半身から上半身にかけて力を連動させて投げるものですが、投げる感覚を忘れてしまっているとどうしても上半身の肩や肘のしなりだけを利用して投げようとする傾向が見られます。こうなると肩や肘の関節には大きな負担がかかりやすく、いくらトレーニングを積んでいても筋力的にも追いつかずに負担をかけ、痛みを感じるということになります。
靴のかかととつま先を合わせて歩数で測る
このような選手の投げ方をチェックしてみると、投げるときに身体が浮き上がってしまう状態になることが多く、下半身をうまく使えていないことがわかります。また足のステップ幅が狭くなっているのも特徴的です。
個人差はありますが、投球時のステップ幅は靴の長さで5歩半~6歩程度を目安にすると良いでしょう(投手はマウンドの傾斜があるのでこれよりも広くなります)。
ステップ幅は写真のように靴のかかととつま先を合わせて歩数で測るようにします。
この範囲で、右投げであれば右の股関節(支持足)から左の股関節(踏み込み足)への重心移動をより意識して投げるようにすると、必然的に下半身をしっかり使った投球動作になります。
支持足である股関節部分のユニフォームに軽くしわが入るように体重をのせ、投げる動作で踏み込み足側の股関節へと体重移動を行うこと。投げ始めで肩や肘が痛い、違和感があるなと感じるときは、まず投球フォームがいわゆる「手投げ」状態になっていないかどうかをチェックしてみてください。また痛みへの対応としては痛い部位へのアイシングを忘れずに行うようにしましょう(第3回コラム「投げた後に氷で冷やすのはなぜ?」を参照のこと)。
●投げ始めで肩や肘が痛いと感じたらまずは投球フォームをチェックする
●身体が浮き上がって投げていないか
●投球時のステップ幅が狭くなっていないか(目安は足の長さで5歩半~6歩程度)
●股関節の重心移動を意識する(支持足から踏み込み足へ)
●支持足のユニフォームに軽くしわが入るように体重をのせる
●痛みのセルフケア(アイシングなど)も忘れずに
(文=西村 典子)
次回、第17回公開は03月31日を予定しております。