目次

[1]デッドボールや打球による打撲への初期対応
[2]特に気をつけたい打撲への対応(頭頸部・顔面)/胸部打撲と心臓震盪(しんぞうしんとう)


 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 いよいよ春のシーズンが近づいてきましたね。週末からは練習試合を実施していくチームも多いのではないでしょうか。実践練習が増えるにしたがって気をつけたいのがデッドボールを始めとするアクシデントによるケガ(急性外傷)です。野球では選手同士のぶつかり合いによる打撲は比較的少ないとされていますが、デッドボールや打球による打撲などは試合やバッティング練習等でよく見られるものです。今回はこのような打撲に対する初期対応と、そして特に注意が必要な打撲について、お話をしていきたいと思います。

デッドボールや打球による打撲への初期対応



冷却スプレーは痛みに対する一時的な対応であり、プレー後は患部を氷などで冷やすようにしよう

 デッドボールはピッチャーの投球ミスから起こる突発的なケガです。ユニフォームをかすめた程度の軽症のものから、立ち上がれないほどの重症のものまであり、特に頭頸部、顔面付近へのデッドボールは迅速な対応が必要となります(詳細は後述します)。

 デッドボールの場合、ボールが当たった選手は「プレーができるか、できないか」をまず判断しなければなりません。受傷直後にさほど強い痛みを感じなかったり、動きに支障がなかったりする場合は、そのままプレーを続行することになりますが、その際にもランナーとしてベースランニングができるかどうかを確認する必要があります。特に足部や膝、太ももといった下半身にボールが当たった場合、走塁中にだんだんと痛みが増してくることがありますので、あわてずタイムをとり、患部をゆっくり動かして判断するようにします(場合によっては臨時代走を起用すること)。自力歩行が困難であったり、体重をかけると痛みによって動きづらさが残ったりする場合は選手交代し、すみやかに患部を氷などで冷却するようにしましょう。

 デッドボールや打球が投手を直撃するようなシーンでは、ランナーコーチやベンチから選手が駆け寄って患部に冷却スプレーを吹きかけているところをよく見かけます。これは痛みの感覚を一時的に軽減させるために用いられるものであり、患部の炎症を抑える冷却効果はあまり期待できません。打撲後にプレーを続行した場合であっても、試合後には必ず患部を冷却して炎症がひろがることを抑えるようにしましょう。また打撲によって明らかな変形や激しい痛み、広範囲に及ぶ腫れや熱感が見られる場合は骨折の疑いがあります。プレーを中止し、患部を冷却しながら動かないように固定をして、すみやかに医療機関を受診するようにしましょう。