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日焼けによる体へのダメージとその対応

2022.07.31

日焼けによる体へのダメージとその対応 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 夏休みに入ると、日中に活動する時間が増えることと思います。存分に野球の練習ができる反面、日射しの強い中でプレーをすることは体へのダメージが大きいことも知られています。特に熱中症などのリスクも高まりますので、毎日体調を整えて練習や試合などに備えましょう。さて今回は日中の活動時間が長くなるときに考えたい日焼けが及ぼす体への影響や、その対策などについてお話をしたいと思います。

日焼けがもたらす疲労感を知る

日焼けによる体へのダメージとその対応 | 高校野球ドットコム
強い紫外線によるダメージをなるべく避けよう

1)皮膚が「やけど」をすることによるダメージ
 屋外で紫外線を浴びると皮膚が赤くなったり黒くなったりする、いわゆる日焼けが起こります。これは皮膚が軽いやけど状態になっていると考えられ、ヒリヒリと焼け付くような痛みが伴ったり、皮膚のかゆみを覚えたりすることがあります。また紫外線にさらされる時間が長くなると皮膚へのダメージが進行し、熱を持ったように赤くほてったり、損傷を受けたことによって水ぶくれが見られたりすることもあります。このように皮膚組織へのダメージが大きくなると、その状態から回復するまでに時間を要することになります。

2)体内の活性酸素が過剰に増えて、正常な細胞を傷つける
 太陽光には目に見える光(可視光線)と目に見えない光があり、その中で最も波長が短く目に見えない光が紫外線です。1日のうちでは正午ごろ、日本の季節では6月から8月に最も紫外線が強くなり、天候では快晴時により強くなります。この時期に日光に当たると多くの紫外線を浴びることになりますが、紫外線が強ければ強いほど皮膚へのダメージも大きくなりやすいため、体には防御反応としてメラニン色素(皮膚を黒くする働きをもつ)を生成し、紫外線から皮膚を守るようなしくみが働いています。ただこのとき、メラニン色素の生成と同時に大量の活性酸素を発生させることもわかっています。

 活性酸素は体にとって免疫作用を担う必要不可欠なものではありますが、過剰に増えると正常な細胞を傷つけ、疲労物質を生み出すといわれています。日光を浴び続けると疲労を感じるのはこうした体のメカニズムによるものと考えられます。

3)目から日焼けして疲労感が増す
 近年、紫外線のによる目への影響が指摘されています。目は内臓などと違って外部にさらされている器官であり、直接ダメージを受けやすいところです。紫外線を浴び続けることによって目の角膜や白目を覆う結膜などが炎症を起こし、目が赤く充血したり、まぶしい光によって目がショボショボしたりします。また脳は目から入った紫外線を察知すると、体へのダメージを防ぐためにメラニン色素を生成して皮膚を黒く変化させます。このように皮膚が直接紫外線を浴びていなくても、目から日焼けするという現象が起こることが知られています。

[page_break:日焼けによる疲労を防ぐために/日焼けをしたときの対応]

日焼けによる疲労を防ぐために

日焼けによる体へのダメージとその対応 | 高校野球ドットコム
日焼けした皮膚は氷水などで冷やして炎症を抑えよう

 野球は屋外でのスポーツですので、紫外線を完全に遮断することはむずかしいでしょう。ある程度、日焼けは避けられないという前提の上で、日焼けによる疲労を軽減させるためにはどのようなことを心がければいいでしょうか。物理的に紫外線を遮断する方法として考えられるものを挙げてみます。

・皮膚の露出を少なくするために長袖のアンダーシャツを使用する
・皮膚が露出している部分は市販の日焼け止めクリームや乳液などを使う
(ただし数時間おきに塗り直す必要がある)
・目から紫外線が入るのを防ぐためにサングラスを利用する
・休憩時などは日陰で過ごすことを徹底する

 こうした対策は必要以上に紫外線を浴びないようにするものであり、高い外気温の中で激しい運動を行う野球選手にとっては、熱中症対策と同様に心がけてもらいたいことと言えるでしょう。特に暑い時期に着用する長袖アンダーシャツは通気性の良いものを選ぶようにすると、熱が体内にこもることを防ぎ、熱中症予防にもつながると考えられます。

日焼けをしたときの対応

 皮膚が赤く変色し、痛みを伴ったり、ほてった感じが残ったりするようであれば、軽度のやけどと考えて氷水などを使って冷やすようにしましょう。その後、皮膚を保護する保湿クリームなどを使ってカサカサになった皮膚への保湿を行うようにします。多くの場合、数日経つと皮膚の炎症が落ち着いてきますが、皮がむけ始めてしまったらなるべく自然にむけるまでさわらないようにしましょう。また体全体が熱く感じられるようであれば、クールダウンを兼ねて水風呂などで皮膚を表面から冷やして体温を下げることもよい方法です。日焼けによって発熱がある場合や皮膚に水ぶくれが見られるときなどは、医療機関を受診して適切な処置を受けることが大切です。

 夏の練習では熱中症などへの対策と同時に日焼けによる疲労にも配慮が必要です。紫外線の影響を少なくするためにも、帽子を必ず着用し、練習の合間には日陰で水分補給を行う等、体力の消耗を抑えるような休憩の取り方などにも配慮するようにしてみてくださいね。

【日焼けによる体へのダメージとその対応】
●紫外線を浴びた皮膚は軽いやけど状態になっている
●体内の活性酸素が過剰に増えると疲労物質を産出する要因となる
●紫外線が目に入ることによって直接的なダメージとともに体の日焼けを引き起こす
●日焼けを予防するためには紫外線をなるべく遮断する
●皮膚が痛みやほてりを伴う場合は氷水で冷やす、もしくは全身を水風呂で冷やす
●発熱を伴うときや皮膚に水ぶくれが見られるときは医療機関を受診しよう

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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