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ケガをした時に心がけたい食事

2022.09.30

ケガをした時に心がけたい食事 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 朝晩は涼しく、日中は暑さが残ることも多い日々が続きますが、皆さんは体調など崩さずに元気に過ごしていますか。季節の変わり目と呼ばれる時期は半袖・長袖といった服装の調整がむずかしい面もありますが、汗をかいたらすぐに拭くようにする等、体を冷やさず、睡眠時間を十分確保して体調を整えるようにしていきましょう。さて今回はケガをしてしまった時の食事について考えてみたいと思います。「これを食べたらいい!」という万能の食品はありませんが、なるべく早く競技復帰したいのはどの選手も同じこと。どのようなことに気をつければいいか、選びたい食材などについてお話をしたいと思います。

ケガをしてしまうと運動量が落ちやすい

ケガをした時に心がけたい食事 | 高校野球ドットコム
ケガをした時は揚げ物など脂質の多い食べものは控えめに

 ケガの程度にもよりますが、ケガをしてしまうと全体練習に参加できなくなったり、運動量そのものが落ちてしまったりします。安静期間が長くなればなるほど筋肉量や筋力の低下につながりやすいため、いかに筋肉量、筋力を維持しながら食事をコントロールするかがポイントとなります。ただし高校生の皆さんは基礎代謝(安静にしていても必要なエネルギー)や活動量そのものが多く、さらに体づくりにも多くの栄養を必要とするため、炭水化物をまったく摂らないといった過剰な食事制限は勧められません。またケガによって運動量が落ちてしまったとしても、松葉杖などを使う場合は歩行にかかるエネルギー消費は通常の2~3倍にもなると言われているため、思ったよりもエネルギーを必要とする状態かもしれません。こうしたそれぞれのケガや個人のコンディションによっても必要となるエネルギー量は変わります。

減らしたいもの、意識して摂りたい栄養素

 運動量が減ってしまっても体づくりに必要な栄養素は毎日の食事からしっかりと摂ることが大切です。その上でケガの修復を促す栄養素や、この時期は少し減らした方がいいものを確認しておきましょう。

《意識して摂りたい栄養素》
筋肉量を維持するために欠かせない栄養素がタンパク質です。タンパク質を多く含む食材(肉、魚、卵、豆類、乳製品など)を中心に食事から摂るように心がけましょう。またタンパク質を代謝するために必要なビタミン類(特にビタミンB群)、体のコンディションを整えるため欠かせないミネラル分なども、普段の食事と同じようにとることが大切です。肉離れなど筋肉を傷めたときはもちろんですが、関節や靱帯、骨など組織の多くはタンパク質の一種であるコラーゲンが使われています。こうした組織の修復をはかるためにはコラーゲン=タンパク質を積極的に摂るようにしましょう。このとき「タンパク質の摂取=プロテインをとること」と考える選手がいるかもしれませんが、基本は食事からタンパク質をとること。プロテインはあくまでも栄養補助食品として不足分を補うように利用することが大切です。

《減らしたいもの》
通常よりも運動量が減っているときに、今までと同じように食事をとっていると体重や体脂肪量が増加してしまいがちです。競技復帰するときに体脂肪量が増えてしまっていると、体の中の「おもり」が増えてしまうため、体が重くなって動きづらいといったことが起こります。食事ではエネルギー源の一つである脂質を減らすようにしましょう。必要以上の油脂分をとらないように調理法なども油で揚げたものではなく、蒸す・焼く・茹でるといった方法で調理されたものを食べるようにすると、体脂肪の急激な増加をおさえることにつながります。ケガをしてリハビリをしている期間が長くなるときは炭水化物の量も見直します。「腹八分目」くらいを心がけ、ドカ食いや夜中の間食などは避けるようにしましょう。

[page_break:骨折にはカルシウム以外にも必要なものがある/トレーニングや睡眠と成長ホルモン]

骨折にはカルシウム以外にも必要なものがある

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カルシウムとタンパク質が豊富に含まれる魚類は骨折した時に積極的にとりたい食品の一つ

 骨折をしてしまったときにすぐ思い浮かぶのは「カルシウムをとる」ことではないでしょうか。もちろんカルシウムは骨の再生に必要な栄養素であり、骨密度はカルシウムの含有量によって評価されるため、強い骨の指標として参考になるものです。ただ骨はカルシウムのみで構成されているのではなく、カルシウムを定着させるための土台としてコラーゲンが使われているため、コラーゲン(=タンパク質)もまた必要な栄養素の一つです。骨折時に小魚などが勧められるのは、カルシウムにくわえてタンパク質を多く含むことが理由の一つかもしれません。またこの他にも骨の再生を促すようなビタミン(ビタミンD=キノコ類や魚など、ビタミンC=果物や野菜など、ビタミンK=納豆やパセリなど)やミネラル分(マグネシウム=ゴマ、ナッツ類等)もあわせてとることで、栄養面から骨癒合を促すことが期待できます。

トレーニングや睡眠と成長ホルモン

 栄養面から競技復帰を促すことに加えて、心がけたいことは患部外トレーニング(ケガをした部位以外のトレーニング)と十分な睡眠の確保です。患部外トレーニングについては、医師の指示のもとに「どこまで動かしていいか」「どの部位をトレーニングしていいか」を確認しておきましょう。上肢のケガであっても「ランニングはしばらく止めておきましょう」というケースもあるからです。運動量や体全体の筋量、筋力をなるべく維持するためにも、できるだけ積極的に行うようにしましょう。

 さらに組織修復に最も重要なものの一つが睡眠です。トレーニング後や入眠時には成長ホルモンが多く分泌されることが知られていますが、成長ホルモンは筋肉や骨の成長を促す、文字どおり「体の成長」に関与することだけではなく、傷んだ組織を修復することにも貢献します。ケガからの競技復帰には食事面とともに、できる範囲でのトレーニングと十分な睡眠をとることが大切であることを理解しておきましょう。

【ケガをした時に心がけたい食事】
●ケガをした後は運動量が落ちてしまう傾向にある
●筋肉量、筋力を維持しながら食事をコントロールしよう
●組織のもととなるタンパク質やビタミン、ミネラル分を積極的にとる
●体重、体脂肪量を急激に増やさないように脂質を控えめに(長期にわたるときは炭水化物も)
●骨折ではカルシウムとともにタンパク質も必要な栄養素の一つ
●成長ホルモンを促すトレーニング、十分な睡眠は競技復帰に必要不可欠

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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