靴を見直してケガを予防しよう
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
夏休みも後半に差しかかり、多くのチームは秋の大会に向けて日々練習を積み重ねていることと思います。暑い日が続きますので熱中症予防の対策をとりながら、体調が良くないときは無理をせずに休む、技術練習やトレーニングの総量を考えながらオーバーワークにならないようにすることを心がけてください。さて今回は皆さんがいつも使っている靴について考えてみたいと思います。靴がケガの一因となることも少なくないため、今使っている靴やこれから購入する際の参考になればと思います。
ランニングシューズやスパイクは消耗品
かかとがつぶれている靴は早急に買い換えよう
靴の寿命は「購入してからの年数」「使用頻度」「見た目でわかるほつれや傷み」「ソールなど素材の劣化」などによって変わります。履き慣れた靴が使いやすいとは思いますが、購入から2~3年経っているものであればすでに素材の劣化は始まっていると考えられます。特に毎日練習で使用しているランニングシューズやスパイクであれば使用頻度が高いため、早いタイミングで買い換えを検討する必要があるでしょう。まれに見た目にもわかるような破れ、ほつれ、穴あきなどをそのままにして使っている選手を見かけることがありますが、傷んだものを使い続けると、体を支える足元が不安定になり、ケガの一因となることも考えられます。練習などで使用するランニングシューズやスパイクは消耗品であるという意識を持ち、見た目にも破損が確認できるものは、新しいものを購入するようにしましょう。
特にかかと部分を安定させるヒールカウンターと呼ばれる部分がつぶれている場合は、すぐに使うのをやめて新しいものを準備しましょう。かかとの保護機能は激しい運動を支える根幹部分であり、かかとを踏んだまま立ったり、歩いたりすると靴の機能そのものが失われます。かかとを踏んで歩くような靴の履き方は「アスリート失格」です。
足にあわない靴がケガにつながることも
靴の劣化だけではなく、自分の足にあっていない靴を使い続けるとケガにつながることがあります。足はもとより膝や腰、さらには足元がぶれることによってフォームが崩れ、肩や肘などにも影響を及ぼすことが少なくありません。靴が一因となって起こりやすいケガの例としては、
・足底筋膜炎
・シンスプリント(脛の痛み)
・足の甲部や脛の疲労骨折
・爪のトラブル(巻き爪、爪下血腫(そうかけっしゅ:爪の内出血)、爪が指に当たって出血するなど)
といったものが挙げられます。この他にも足元の不安定さをかばおうとして膝痛や腰痛などを起こすこともあります。特に成長期の選手にとっては足がどんどん大きくなるため、あらかじめ大きいサイズにしてしまいがちですが、大きすぎるサイズの靴は足が靴の中でぶれやすく、骨のアライメント(骨の配列)が崩れたり、摩擦によって爪や指先を痛めたりといったことが考えられます。かかとを固定させ、靴ひもによってある程度カバーすることはできますが、靴に関しては「大は小を兼ねる」とはいかないことを理解しておきましょう。
新しい靴を買うときのポイント
靴ひもは上に引き上げる(左)のではなく、内側にねじるように(右)締めよう
古い靴から新しいものに買い換えるときは、どのようなことを意識して選べば良いでしょうか。自分の足にあった靴を選ぶ際のポイントをまとめておきます。
《購入するときは午後の時間帯にしよう》
人間の足は朝と夕方でおよそ0.5~1.0センチほど大きさが変化するといわれています。これは日中体重をかけて過ごしているうちに足裏のアーチ部分が荷重ストレスによって押しひろげられてしまうことや、下肢に血液や水分などがたまりやすくなるためです。朝に比べると夕方の方がやや足のサイズが大きくなるため、なるべく午後の時間帯に購入したほうがよいということになります。
《かかとをあわせてフィット感をチェックする》
靴をあわせるときはかかとが安定するように履きましょう。試し履きでは靴ひもをゆるめて足を入れ、かかとの位置を決めたらトントンと軽く地面に押しつけるようにします。かかとの位置が固定されると、足元がぐらつかず動作も安定します。
《試し履きは両足で。片足荷重も忘れずに》
人間の足長(いわゆる数値で表記されるサイズ)や足幅は左右で微妙に違いがあるのが一般的です。試し履きを行う時には必ず両足で行いましょう。足長に左右差があるときは長い方にあわせ、短い方は靴ひもなどで調節します。また試し履きのときは片足で立って確認することも大切です。片足に全体重をかけると、足裏の接地面積は両足で立った時に比べてひろがります。走ったり、跳んだりといったプレー中の動作ではさらに足裏の接地面積はひろがるため、片足荷重で足指が変に靴にあたったりしないかをチェックするようにしましょう。
《通販よりも実店舗で》
通販はさまざまなメーカーや種類から選ぶことができる一方で、試し履きを繰り返すことがむずかしいという側面があります。またメーカーによってサイズ表記と実際のサイズに違いがあることも多く、同じ26.0cmの靴でも一方は大きく、一方はやや小さいといったことも起こります。自分の足にあったものを選ぶためには、購入前に試し履きをした方がよく、ケガ予防という点を考慮すると実店舗の方がより安心して購入できると考えられます。
正しい靴ひもの結び方を覚えておこう
左右の足のサイズ(足長、足幅など)が微妙に違っている場合は大きい方にあわせて靴を選ぶようにしますが、靴ひもの結び方によってもフィット感を調節することができます。靴を履いたらまずはかかとの位置を決めて固定し、そこから靴ひもを内側にねじるように締めていきます。両手を使い、力加減をなるべく均等にしながらねじるようにすると良いでしょう。靴ひもを結ぶときに、ついギュッと上に引き上げて締め付けたくなりますが、このような結び方は足の甲に負担をかけやすくなるので注意しましょう。
自分の足にあった靴はケガ予防につながるだけではなく、パフォーマンスアップのためにも欠かせないものです。足元を安定させて、心置きなくプレーができるように今使っている靴を見直してみましょう。
【靴を見直してケガを予防しよう】
●靴は消耗品。購入年数や使用頻度、破損の程度などを確認しよう
●かかとを安定させるヒールカウンターが機能していない靴は使用しない
●足にあわない靴は足だけではなく、膝や腰、上肢にまで影響を及ぼす
●大きすぎるサイズの靴もまたケガを引き起こすことがある
●靴を購入するときは「午後の時間帯・かかとの固定・片足でのチェック」を忘れずに
●靴ひもは両手で力を均等に加えながら内側にねじるように締めよう
(文=西村 典子)