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プレー中に足がつる要因と対策

2022.07.15

プレー中に足がつる要因と対策 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 本格的な夏の到来とともに、各地で甲子園を目指す試合が続いています。暑さによる影響でコンディションを維持することがむずかしい時期でもありますが、試合に向けてしっかり準備をした上で精一杯プレーをしてほしいと思います。さて今回はこの時期によく見られるプレー中の筋けいれん、特に「足がつった状態」「ふくらはぎの筋けいれん」について、その原因や対策、予防などについてお話したいと思います。

筋けいれんがよく起こる部位

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試合の後半になると筋疲労や水分・ミネラル分不足などで筋けいれんを起こしやすい

 筋けいれんは、筋肉のある部位であればどこでも起こりうるものですが、特にふくらはぎの筋肉や太ももの裏側(ハムストリングス)の筋肉、わき腹などによく見られます。いわゆる「足がつる」という状態は、足の筋肉が不意に細かく収縮・けいれんを起こすもので、ふくらはぎの場合には腓腹筋(ひふくきん)のことを指して、「こむら返り」と呼ばれることもあります(「こむら」とは腓腹筋のこと)。筋けいれんは激しい運動中や運動後に起こることが多く、疲労がたまっている場合などは安静時や就寝時にも起こります。

足がつる要因はさまざま

 腓腹筋のけいれんによって起こる「足がつる」状態ですが、それを引き起こす要因は一つではなく複数あります。まず考えられるのは脱水による水分不足、ミネラル分不足ですが、これ以外にも極度の緊張状態や、筋疲労によるもの(試合の後半によくみられる)、下肢の筋温低下によるもの、体調不良によるもの(睡眠不足など)、食後などで筋肉への血流が不足している状態なども挙げられます。特に体重を支える筋肉であるふくらはぎや太ももの筋肉は、守備や走塁を繰り返すことによって筋疲労を起こしやすいことは、皆さんの経験からも理解してもらえるのではないでしょうか。また環境面では人工芝のグランドに注意しましょう。慣れないグランドで下肢への負担がかかりやすく、筋けいれんを起こしやすいことが考えられます。

 運動すると筋肉は必ず収縮しますが、このときにナトリウム(いわゆる塩分)、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラル分が必要になります。ところが時間の経過とともに汗をかき、体内から水分やミネラル分が奪われるような状態が続いてしまうと、筋肉に指令を出す神経に誤作動が生じてうまく収縮させることができず、筋けいれんを起こしてしまいます。運動中に見られる筋けいれんは、筋肉の疲労に加えて水分やミネラル分が不足しがちなため、これからの要因が重なって起こることが多いと考えられます。

[page_break:足がつったときの対応/普段からできること、試合の時に準備したいもの]

足がつったときの対応

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緊張した状況も筋けいれんの要因となることがある。水分や補食などで予防を心がけよう

 筋けいれんは筋肉が細かく収縮をしている状態であり、かなり強い痛みを伴うこともあります。痛みがあるとその痛みによって筋肉がさらに緊張し、力が入った状態になってしまいますので、まずは大きく息を吐いてみましょう。息を吐くことによって副交感神経を刺激し、緊張状態を和らげる効果も期待できます。そこからゆっくりと呼吸を繰り返し、けいれんした部分の筋肉を伸ばしていくようにします。スパイクは脱ぎ、ストッキングなど締め付けているものがあればそれも緩めるようにします。一人で行うことがむずかしい場合は誰かに手伝ってもらってパートナーストレッチを行いましょう。このとき筋肉を軽くさすったりほぐしたりすることや温めることなども効果的です。

 ケガをした際の多くは患部を氷などで冷やすRICE処置を実践しますが、足がつった場合などの一時的な筋肉のけいれん※は血流不足によるものと考えられるため、冷やすのではなく温める、固定ではなくより積極的に動かすことで、血流を促すようにします。

※筋肉のけいれんが長く続くと、筋肉の肉離れを起こす場合があります。
 ストレッチをしたり、ほぐしたりしても痛みが変わらない、痛みが増す場合は
 プレーをやめてRICE処置を行う必要があります。

普段からできること、試合の時に準備したいもの

 足がつらないよう普段から心がけられることとしては、適切な水分・ミネラル分の補給です。特に試合など緊張した状態が続くときには、水分やミネラル分の補給がおろそかになりがちなので、少しずつこまめに補給することを心がけましょう。チーム内で声を掛けあうこともいいですね。麦茶やスポーツドリンクなどを中心に飲みものを準備し、梅干しや塩昆布など手軽に塩分のとれるものを補食の一つとして置いておくと良いでしょう。この他にもバナナやアーモンドチョコ(糖分+マグネシウム補給)、レモンのハチミツ漬けなど、状況に応じて準備しておくことも検討しましょう。

 また運動前にはウォームアップを入念に行い、体温・筋温を上げるようにしましょう。暑い時期なので長く時間をかける必要はありませんが、体の中から温まる感覚を得られるまではしっかりと体を動かすことが大切です。

 足がつってしまうと、筋けいれんの影響でその後も痛みが残ってしまったり、思うようにプレーができなくなってしまったりといったことが起こります。こうした状況をなるべく避けるためにも、連戦が続く場合は特に疲労回復を優先させてコンディションを整え、緊張状態の中でも最高のパフォーマンスが発揮できるように準備していきましょう。

【プレー中に足がつる原因と対策】
●筋けいれんがよく見られる部位はふくらはぎ、太ももの裏側、わき腹など
●足がつる原因はさまざまあり、水分・ミネラル分不足はその一つに過ぎない
●下肢への疲労や睡眠不足なども筋けいれんの要因となりうる
●筋けいれんが起こったときはあせらずに息を吐きながら筋肉を伸ばす
●筋けいれんが長引くと肉離れのような状態になることがあり、注意が必要
●筋けいれんを予防としてこまめな水分・ミネラル分補給、入念なウォームアップを心がけよう

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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