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睡眠を左右するさまざまな要因とは

2022.04.15

睡眠を左右するさまざまな要因とは | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 日を追うごとに暖かくなり、心地よい気候となってきました。学校では新学期を迎え、選手の皆さんは学校生活とともに野球の練習や試合など、忙しくも充実した日々を過ごしていることと思います。「やりたいこと」や「積み重ねる練習」が増えるにつれ、減ってしまいがちなのが睡眠時間ですが、コンディションを整えるためには「練習」とともに「栄養」「休養」のバランスを維持することが大切です。今回は選手の皆さんに覚えておいてほしい、睡眠に関するさまざまな要因についてお話をしたいと思います。

《年齢》高校生に必要な睡眠時間とは

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高校生に必要な睡眠時間は8~10時間。睡眠時間は足りていますか?

 その人にとって必要な睡眠時間は「個人によって変わる」ものですが、年齢によってある程度推奨される睡眠時間があります。一般的には若い年代ほど睡眠時間はより多くとる必要があり、大人になるにつれて少しずつ必要な睡眠時間は短くなっていくことが知られています。厚生労働省の資料や米国睡眠学会が勧告する睡眠時間によると、目安は10代で8~10時間とされていますが、実際には日本の高校生の平均睡眠時間は6時間ほどとする調査報告などもあり、多くの高校生が「夜寝る時間が遅く、睡眠不足におちいっている」可能性があります。

 皆さんは野球選手として日々練習を行い、体力的にも精神的にも疲労した状態になりますが、それを回復させる手段の一つが睡眠です。睡眠は時間だけではなく、睡眠の質(熟睡できたか、起きた後に疲労を感じないかといったもの)にも左右されますが、なるべく8時間は睡眠にあてられるように生活のスケジュールを見直してみましょう。

《季節》一番起きるのがつらい季節とは

 お布団から出るのがつらい季節といって思い浮かぶのは「冬」ですが、これは布団の中よりも部屋の温度が寒すぎることが原因であり、環境によるものです。体調面で起きにくい季節といわれているのが「春」。意外に思われるかもしれませんが、季節の変わり目と言われるこの時期は、気温や気圧の変化によって自律神経が乱れやすいことが知られています。

 自律神経には活動モードである「交感神経」とリラックスモードである「副交感神経」の2つがあり、それぞれがバランスを取りながら体調を整えています。通常であれば起きるときに交感神経が優位になり、活動モードへとスイッチが入るのですが、自律神経が乱れた状態のときは起床時からしばらくたっても副交感神経が優位になることがあり、リラックスモードのまま起きてしまって「目覚めが悪い」「体がだるい」と感じることがあります。この他には花粉症などのアレルギーによって睡眠の質が低下してしまうことも、春先に「起きづらい」と感じる大きな要因です。

[page_break:《環境》睡眠の質を上げるための取り組み/《入浴習慣》シャワーではなくバスタブにつかろう]

《環境》睡眠の質を上げるための取り組み

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入浴で上手に自律神経のスイッチをコントロールしよう

 日本は睡眠不調の割合が世界一多い国だと言われています。普通に生活をしていても睡眠不足、睡眠不調におちいりやすい原因の一つが夜の照明が明るすぎることだと言われています※。確かにコンビニエンスストアは夜でも日中と変わらないくらい明るく(防犯対策という一面もあります)、家の中でも比較的明るい中で過ごしている時間が長いのではないでしょうか。スムーズな入眠を促すためには就寝時間が近づくにつれて、少しずつ部屋の明かりを落としていくことも一つの方法です。スマートフォン(スマホ)が放つブルーライトが睡眠に影響を及ぼすことはよく知られていますが、こうした明かりをなるべく避けるようにすることも意識してみましょう。

 また定期的に部屋の掃除を行うことも大切です。「掃除と睡眠?」と思われるかもしれませんが、部屋のホコリは床上30cmあたりに集中しているといわれ、床に布団を敷いて寝ている場合はホコリが多い空間で寝ていることになります。ホコリを吸いながら寝ていることを考えると、体にもよくありませんし、アレルギーのある人は咳き込みやすくなって睡眠の質低下にもつながります。さらに定期的にシーツを洗ってダニやダニの死骸、自分のフケや汗、老廃物などを取り除いておくことも睡眠の質を向上させる上で大切です。

《入浴習慣》シャワーではなくバスタブにつかろう

 睡眠につながる生活習慣として入浴は大きな影響を及ぼします。季節によって自律神経に乱れが生じることをお話しましたが、自律神経は入浴によってある程度コントロールすることができます。日中は交感神経が優位な状態で活動していますが、眠る前には副交感神経が優位になってリラックスモードへと変わっている必要があります。そこで就寝1~2時間ほど前を目安に、40~41℃程度の湯温(快適かややぬるめ)でバスタブにつかって体全体を温めると、副交感神経が働いてリラックスモードへと変わりやすくなります。一度体温(深部体温)を上げた状態から、下がっていくときに眠気を催しやすくなるため、寝る時間を考慮して入浴時間を決めることが理想的です。ただし熱すぎる湯温では交感神経が刺激されたり、のぼせたりして寝つきが悪くなりやすいので注意しましょう。

 疲労回復という点においても入浴はシャワーのみで済ますのではなく、バスタブにつかって全身を温めることが大切です。もし寮や遠征先などでバスタブにつかることがむずかしいときは、洗面器をつかった足湯、手湯やシャワーを使った温冷交代浴などを活用してみましょう(参考コラム:「シャワーを使った交代浴で疲労回復」)。

 睡眠は生命維持に必要であり、十分な睡眠は野球選手にとってはコンディションを整える上で欠かすことのできないものです。アスレティックトレーナーとしては「練習(トレーニング含む)」「栄養」「休養」のバランスをとり、技術力を高めてケガを予防することを第一に、選手の皆さんが好きな野球に取り組んでもらいたいと思います。

※参考書籍「働くあなたの快眠地図」角谷リョウ著/フォレスト出版

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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