ケガ予防のためにできること
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
いよいよ新年度が始まりますね。多くのチームでは新入部員を迎え、チームにも活気があふれていることと思います。人数が増えてもやることは変わらず、感染予防対策を徹底しながら野球の練習に取り組んで欲しいと思います。さて今回は選手や指導者の皆さんに改めて考えてもらいたい「ケガ予防」についてお話をしてみたいと思います。すべてのケガを防ぐことはむずかしくても、心がけ次第で予防できるものも多くあります。自分たちでできることにはどのようなものがあるでしょうか。
ケガは大きく2つに分けられる
毎日行うストレッチで自分の体をチェックする習慣をつけよう
ケガはアクシデントによって起こる予測できないケガ(スポーツ外傷)と、練習の積み重ねや疲労の蓄積など時間の経過とともに傷めてしまうケガ(スポーツ障害)の大きく2つに分けることができます。専門的な用語を覚える必要はありませんが、予防できるものとできないものがあるということは理解しておきましょう。
《スポーツ外傷》
アクシデントによって起こる突発的なケガのことを指します。野球の場面ではデッドボールによる打撲やランナーと交錯してスパイクされたことによる出血、ボールや人、フェンスなどにぶつかった衝撃で打撲したり、転倒してしまったりといったケガの原因が明確であるものです。
《スポーツ障害》
一回の動作で痛みが起こるスポーツ外傷とは違い、同じ動作の繰り返しなど練習を続けているうちにだんだん痛くなってきたものを指します。疲労によるもの、投げすぎなどの体の一部に大きな負担のかかるオーバーワークによるもの、投球フォームそのものに原因が考えられるものなどがあります。
このうちケガ予防として取り組みやすいものは、疲労の蓄積や投げすぎなどが原因となりやすいスポーツ障害への対応です。捻挫を繰り返さないために足首周辺部の筋力を強化する、肉離れの原因となりやすい筋肉の硬さや筋力低下を改善する、肩や肘に大きな負担がかからないような投球フォームを身につけるなどなど、ケガの要因となりやすいものを改善することで、皆さん自身でもケガを予防することができます。そのためにはまず「自分の体を知ること」「自分の体に興味を持つこと」が大切です。
クールダウンの重要性を再確認しよう
練習量が多くなったり、練習強度が高くなったりすると、毎日100%カンペキなコンディションで練習に臨むことはむずかしいことでしょう。特に新入生は練習環境も変わり、心身ともに緊張状態の中で練習に参加しているため、毎日練習が終わる頃にはグッタリしていることが容易に想像できます。また体力面でも先輩たちと大きな差があることも考えられます。一方、上級生でも以前ケガした部位がある選手などは、気持ちの面でも不安があるかもしれません。このような中で練習を行う場合は、練習後に体のコンディションを整えるためのクールダウンを十分に取ることが大切です。練習後にジョギングやストレッチをしてみて痛みがないか、違和感がないかといったことをチェックし、「おかしいな」と感じるところがあればアイシングやストレッチを行いながら、場合によっては早めに医療機関を受診するようにしましょう。
毎日やることを決めて習慣にする
肘当て、すね当ては予測できるケガを防ぐマストアイテムと心得よう
練習後や入浴後にストレッチを行っている選手はどのぐらいいるでしょうか。ストレッチそのものがすべてのケガ予防に直結するわけではありませんが、血流を促して疲労回復をはかったり、ストレッチによっていつもとは違った状態を発見する手助けとなったりします。野球は投げる動作を繰り返すため、肩や肘など上半身のケガが多いスポーツですが、肩や肘を傷める原因は下半身にあることも少なくありません。特に下半身の柔軟性が低下していると、上半身に負担のかかりやすいフォームで投げ続けてしまい、ケガをしてしまうリスクが高くなります。「毎日この時間にストレッチを行う」というように習慣づけ、日々自分の状態を把握することはケガ予防という点からもぜひ実践して欲しい習慣の一つです。ストレッチは特定の部位だけではなく、体全体を把握することができるという点でもオススメです。
ストレッチの他には「肩のエクササイズを実践する」「足裏のマッサージを行う」「足首の動きを良くするために足首を動かす」など、自分のコンディションと照らし合わせながら特定の部位を重点的に行うこともよいでしょう。
スポーツ外傷を予防する?
アクシデント的に起こるスポーツ外傷は予測がむずかしく、防ぐことはむずかしいと言われていますが、可能であればデッドボール対策として肘当て(エルボーガード)やすね当て(シンガード)などの予防用の装具をしておきましょう。中には装着すると動きにくさを感じる選手もいると思いますが、硬球が直接当たったときの衝撃とケガのリスクを考えると、「予測できる」ものに対しては事前に準備をしておきたいものです。これもケガ予防のためにできることの一つです。
高校野球を経験できる時間はおよそ2年3ヶ月ほど。限られた時間の中でケガによって「練習ができない」「野球ができない」時期をなるべく少なくするためにも、ケガ予防のためにできることを実践し、充実した高校野球生活を送ってほしいと思います。
【ケガ予防のためにできること】
●ケガには予防がむずかしいケガ(スポーツ外傷)と予防できるケガ(スポーツ障害)がある
●疲労の蓄積やオーバーワークなどによるケガ予防は対策しやすい
●「自分の体を知ること」「自分の体に興味を持つこと」が大切
●クールダウンで疲労回復、日常のコンディションを把握しよう
●毎日ストレッチなどを習慣づけることで小さな変化をキャッチしよう
●デッドボール対策の肘当て、すね当てを装着し、予測できるケガを防ごう
(文=西村 典子)