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手術療法か保存療法か

2021.09.15

手術療法か保存療法か | 高校野球ドットコム

 夏の暑さがいくぶん和らぎ、過ごしやすい日が増えてきましたね。秋季大会を行っている地区も多いのですが、一部の地域では新型コロナウイルス感染拡大の影響で、練習に制限があったり、全体練習そのものができなくなったりしているところもあります。収束がなかなか見えない中ではありますが、今の環境下でできることをコツコツと積み上げていくようにしましょう。さて今回はケガをした時に手術を勧められるケースについて、どのようなことを考慮していけばいいかについてお話をしたいと思います。

基本的には保存療法から

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投球障害による慢性的なケガは保存療法が第一選択肢となりやすい

 ケガをした際は整形外科を受診し、医師の診察や画像診断などから競技復帰に向けてのプランを立てていくのですが、まれに手術を勧められることがあります。投球障害として代表的なものに肘の内側側副靱帯損傷が挙げられますが、これは一度の外力で損傷し、損傷程度が重篤であるもの以外は、基本的に保存療法が勧められます。これは肘の靱帯損傷が繰り返しの投球動作によって起こるものであり、投球動作を制限したり、周囲の筋肉を強化したりすることで改善する傾向があるからです。ただしある一定期間(2〜3ヶ月程度)を過ぎても患部の状態が思わしくない場合、まったく変わらず痛みなどが続く場合は手術適応となることがあります。自分の持てる力をすべてを出し切るパフォーマンスを100%とした場合、現状で50%を切るほどプレーに支障があったり、そもそもプレーができない状態が続いているのであれば、手術をしたほうがより早く競技復帰につながると考えられるからです。

急性外傷によるものは手術適応が多い

 これに対してアクシデント的に起こった急性外傷の場合、特に骨折などは第一選択肢が手術となることも少なくありません。保存療法で患部を安静に保っていても、骨折で変位(正常な位置から骨がずれていること)などが見られる場合、そのままにしておくと正しい位置に整復できず、運動機能に支障が残ることが考えられるからです。これと同様に顔面にある骨が折れた場合も、変位があれば手術をして元の位置に整復します。鼻骨骨折の場合は、医師によって整復をした後、変位するリスクがなければそのまま保存療法を選択することが多いです。この他にも靱帯が完全に断裂したもの、脱臼などによって周辺部位が激しく損傷し、保存療法によってもプレーに不安が残ったり、支障が出たりするような場合も手術適応となるケースがあります。

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時間とリハビリ期間を考慮する

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セカンドオピニオンを仰ぎ、医師の判断を聞いてみよう

 ここで考えなければならないのは高校野球をプレーする期間は2年3ヶ月という時間的な制限です。手術をすると数ヶ月〜年単位に渡って競技から離れる可能性があります。手術をして患部がよくなったら競技復帰できるというものではないことは皆さんもよく知っていることと思います。運動が制限されている間も競技復帰に向けて患部外のトレーニングを行う必要がありますし、日常生活に支障がない状態からプレーができる状態にまでコンディションを上げていくことにも時間がかかります。手術を勧められた医師に競技復帰までの目安を聞くことはもちろんですが、学年や今後の競技キャリアを考慮して慎重に判断することが求められます。公式戦や目標とする大会から逆算して競技復帰することができるかどうか、高校野球を終えた後にも競技を続けるのか、保存療法を選択した場合の競技復帰の可能性など、さまざまな要因を踏まえた上で最終的には医師の判断と選手の選択ということになります。

セカンドオピニオンを活用しよう

 手術を勧められた場合、時間的な余裕がある場合はセカンドオピニオン(主治医以外の医師に診察し、その判断を仰ぐこと)として別の医師に相談することも選択肢の一つです。多くの場合、セカンドオピニオンを受診したい旨を伝えると画像や紹介状などを有料で提供してくださると思います。その情報を持って、例えばよりそのケガに詳しい専門医を受診することも可能です。病院の選択についてもさまざまな考え方がありますが、有名な医師だからそこを受診するという考えもある一方で、リハビリなど今後の通院を考えて通いやすいところを受診するというのも一つです。セカンドオピニオンについては通院のことを考慮しなくてもさほど問題ではありませんが、セカンドオピニオンとして訪れた病院で手術を受けたいという場合は、今後長く通院しながらリハビリを続けられるかということも念頭におく必要があります。

 手術が勧められるケガの多くは競技復帰までに長期間を要するものです。手術療法がいいか保存療法がいいかについては受診した医師をはじめ、指導者や保護者の方と十分に話をした上で選択するようにしましょう。

【手術療法か保存療法か】
●投球障害など慢性的なスポーツ障害はまず保存療法から様子をみる
●急性外傷や骨折に変位が見られる場合は手術適応となることが多い
●高校野球ができる期間は限られていることを考慮しよう
●学年や競技キャリアなどの要因から選択するケースもある
●時間的な余裕がある場合はセカンドオピニオンを仰ぐこともよい
●病院の選択は長期間通院できるかどうかも考えること

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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