長引く腰痛を克服しよう
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。
あっという間に夏休みも終わり、いよいよ新学期が始まりますね。新チームが始動し、来春のセンバツ出場につながる秋の地方大会に向けて、できる環境の中でがんばっていることと思います。さて今回は長引く腰痛（慢性腰痛症）のときに確認したいことやできることなどをお話したいと思います。
腰痛の85%が原因を特定できないもの
腰痛の要因には個人の体力（筋力、筋持久力など）によるところも大きい
腰痛症にはさまざまな要因があり、原因が一つではないことも多々あります。痛みを引き起こす原因として骨、関節、筋肉、神経、その他の病気がもたらすものとさまざまな要因が考えられますが、医師の診察および検査で腰痛の原因が特定できるもの（特異的腰痛）は約15%で、残りの約85%は非特異的腰痛といって、はっきりとした原因が特定できないものです（厚生労働省の資料より※）。腰痛が続くときは整形外科を受診し、診察や検査を受けることが先決ですが、そこでも原因がはっきりとしない腰痛がかなり多いと言えるでしょう。言い換えれば、腰痛の原因が腰背部にあるのではなく、その他の部位にあることも少なくないのです。
腰背部以外に目を向けてみよう
その他の部位が原因となり、結果として腰背部に負担をかけているケースはよく目にします。腰痛時に「下半身のストレッチを行いましょう」とアドバイスを受けたことのある選手も多いと思いますが、これは太ももや臀部、腰背部にある筋肉の柔軟性が低下して動きが悪くなってしまうと、骨や関節、筋肉そのものなどに大きな負担がかかって腰背部に痛みが出てしまう可能性が高いからです。腰痛は動作要因（フォームや姿勢、反復動作など）によるもの、環境要因（寒さなど）によるもの、個人的要因（体力や年齢、性別、過去のケガ＝既往歴など）によるものが挙げられます。このような要因を一つ一つ確認しながらセルフコンディショニングを実践していくようにしてみましょう。腰痛が引き起こす腰背部以外の部位をいくつか挙げてみます。皆さんの体はどのような状態か確認してみてください。
・太もも裏側（ハムストリングスなど）が硬い、左右差がある
・お尻が硬く、寝転がったときにつま先が外側に大きく開いてしまう（逆ハの字よりも角度が大きい）
・股関節前面部（腸腰筋など）が硬く、腿があがりにくい
・開脚ストレッチをしようとしても骨盤が立たない、背中が丸まってしまう
・足首が硬く、しゃがみ込んだときに踵が浮いてしまう
このような項目にあてはまる場合は、腰背部のストレッチなどと並行してその他の部位もより良い状態になるようにストレッチやエクササイズなどを行いましょう。
簡単に実践できるエクササイズ動画
膝を抱えたゴロゴロストレッチで腰背部と臀部の柔軟性を改善しよう
股関節内旋・外旋の可動域はそれぞれ45°程度と言われていますが、特に内旋可動域が少ない場合はこの可動域を改善することが必要です。うつ伏せに寝た状態で、膝や太ももの内側がついてしまうような時はまず股関節のポジションを正常に近づけるためのエクササイズを行ってみましょう。
《膝を抱えてゴロゴロストレッチ》
長座の姿勢から両膝を抱えた状態で座り（体育座り）、膝を抱えたまま後方にゴロンと転がってまた元の位置に戻ります。背中をゴロゴロと伸ばしながら10回程度行います。このストレッチを行う時は、行う前後に長座体前屈を行い、下肢の柔軟性を確認してみましょう。背中やお尻部分が硬い人は、ストレッチ前後で顕著に違いが見られると思います。
参考動画）ゴロゴロストレッチ
《梨状筋（お尻）のストレッチ》
梨状筋のストレッチにもいくつか種類がありますが、オススメなのは四つんばいになって行うストレッチです。四つんばいになったところから、手は動かさずに伸ばしたい側のお尻をさらに外側に移動させ（右臀部であればさらに右にお尻をずらす）、そこから反対側の足をクロスさせて体を沈み込ませながらお尻を伸ばしていきます。これを毎日行っているだけでも腰痛が改善する場合があります。
参考動画）梨状筋のストレッチ
長引く腰痛は心理的な要因も考えられる
腰痛の厄介なところとしては、身体的なコンディションだけではなく、心理的な要因が作用することも知られています。特に慢性的な腰痛症（2、3ヶ月以上経過しているもの）については精神的なストレス、緊張による筋の拘縮（こうしゅく：硬くなること）などを考慮し、こうした要因を軽くすることも大切です。対人関係（指導者や先輩・後輩、クラスメートなど）での不安があるときは、保護者の方や信頼できる人に相談したり、話を聞いてもらったりするだけでも良いと思います。ストレスを一人で抱え込まないようにしましょう。
また腰痛が長引いてくるといつも頭の中で「今日は大丈夫かな」「また痛くならないかな」と考えてしまいがち。脳が腰痛に過敏に反応するとより痛みを感じやすくなると言われています。できるだけ腰痛に意識が向かないように、楽しいことや面白いこと、自分の興味があることなどに積極的に触れるようにしましょう。
※厚生労働省：腰痛対策
【長引く腰痛を克服しよう】
●約85%の腰痛症が原因が特定できない非特異的腰痛症
●腰背部以外の部位に腰痛の原因があることも多い
●太ももの前後や臀部、足首などのチェックを行おう
●簡単に実践できるエクササイズを続けてみよう
●長引く腰痛は心理的要因も挙げられる
●腰痛への不安を軽減し、ストレスを抱え込まないようにしよう
（文＝西村 典子）
