膝を傷めやすいニーイン・トゥアウトを改善する
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。
夏の甲子園大会が始まり、連日熱戦が続いていますね。夏の暑さへの対策は適切な水分・塩分補給を始めとする熱中症予防を行うことが基本です。「あと少しだから」「まだ練習が続くから」と気合いや根性で乗り切るのではなく、事前の準備をしっかり行い実践するようにしましょう。さて今回は膝のケガを起こしやすい「ニーイン・トゥアウト」というポジションとそれを改善するエクササイズなどをご紹介します。
ニーイン・トゥアウトとは
上)股関節外旋肢位でのストレッチ 下)股関節内旋肢位(おねえさん座り)
「ニーイン」とは英語の「膝(Knee)」が「内側に入る(In)」状態のことを指し、膝が曲がるときに正面から見て内側に入ってしまう状態のことを指します(X脚傾向)。このときに膝の曲がる方向と、つま先の方向が一致している(つま先もやや内側に入る)と股関節を内旋させて体を動かすことになりますが、つま先の方向が膝とは違う方向を向いてしまうとケガのリスクが高まります。「トゥアウト」とは「つま先(Toe)」が「外側に向く(Out)」という状態を指すのですが、「ニーイン」と「トゥアウト」が同時に起こってしまうと膝の内側や外側に大きな負担がかかってケガをしやすくなります。典型的なスポーツ外傷に膝の半月板損傷や前十字靱帯損傷、鷲足炎(がそくえん)などが挙げられます。
股関節の動きをチェックしよう
「ニーイン・トゥアウト」になりやすい選手には、その要因の一つとして股関節がうまく機能していない(動かせていない)ことが挙げられます。股関節のストレッチを行う時に片方の膝にもう片方の足をかけて「逆4の字」をつくり、お尻を伸ばす動作を行ってみましょう(股関節外旋)。股関節が十分に働いてしっかりと膝が外側に向いているでしょうか。そして今度は股関節内旋の肢位になる、いわゆる「おねえさん座り」ができるかどうかも確認してみましょう。
このときに「おねえさん座り」(股関節内旋)ができ、「逆4の字」ストレッチ(股関節外旋)が十分に出来ない状態だと、より「ニーイン」になりやすいと言えます。股関節が十分に外旋できない状態は膝が内側に入りやすく、さらに着地動作などでつま先が膝と同じ方向にならない場合にケガにつながりやすいと考えられます。この傾向は一般的には女子選手に多くみられますが、男子選手も同様にチェックしておくようにしましょう。
[page_break:股関節のポジションを改善する]股関節のポジションを改善する
壁を使って股関節のポジションを改善させるエクササイズ
股関節内旋・外旋の可動域はそれぞれ45°程度と言われていますが、特に内旋可動域が少ない場合はこの可動域を改善することが必要です。うつ伏せに寝た状態で、膝や太ももの内側がついてしまうような時はまず股関節のポジションを正常に近づけるためのエクササイズを行ってみましょう。
《腹臥位(うつ伏せ)でのエクササイズ》
うつ伏せになって、平泳ぎのように「カエル足」(膝を外側にして曲げる)をつくります。ここから両方の足裏をあわせて踵がお尻につくように近づけます。近づくにつれてお尻が浮き上がって股関節と床との間にすき間ができるようになりますのでこの感覚、ポジションを覚えておきましょう。そこから足裏をはなし、右の踵で左のお尻をタッチ、左の踵でお尻をタッチという動作をそれぞれ10回程度交互に繰り返して行います。エクササイズ前の肢位をとってお尻の浮き上がり具合が改善されているかどうかをチェックしましょう。
《立位でのエクササイズ》
立位で行う場合は壁を使って行いましょう。体が壁から離れないようにして、踵を揃えた状態から膝を外側に開くようにして屈伸運動を行います。特に股関節が壁から離れないようにしながらできるところまでしゃがみ込み、また元の状態に戻ります。この動作を10回程度繰り返して行いましょう。
「ニーイン・トゥアウト」の傾向が強い場合には、専門家に相談して靴底に装着するインソールなどを作ってもらうこともありますが、まずは自分でエクササイズを実践し、屈伸時に膝とつま先が内側や外側に偏ることのないニュートラルポジションを目指してみましょう。
【膝を傷めやすいニーイン・トゥアウトを改善する】
●「ニーイン」とは体の正面から見て膝が内側に入る状態のことを指す
●「トゥアウト」とは体の正面から見てつま先が外側に向く状態を指す
●「ニーイン・トゥアウト」が同時に起こる場合、膝関節に大きな負担を強いることになる
●股関節内旋の傾向が強い場合には「ニーイン」になりやすい
●股関節内旋は女子選手に多く見られるが、X脚傾向の選手は特に注意しよう
●うつ伏せや立位でのエクササイズで股関節のポジションを改善しよう
(文=西村 典子)