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夏の暑さに負けない集中力とは

2021.07.15

夏の暑さに負けない集中力とは | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 晴れの日だけではなく雨や曇りの日なども湿気が多く、ムシムシした日々が続きますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。甲子園を目指す地方大会が多くの地域で開催され、連日熱戦が繰り広げられていますね。選手の皆さんには自分の持っている力を存分に発揮して、悔いのない戦いをしてほしいと思っています。さて今回は暑さと集中力について考えてみたいと思います。

集中力を高めるとは

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ピンチの時こそ次のプレーに集中していきたい

 普段グランドでの練習や試合の時(特にピンチの時)などに「集中しよう」と声をかけたり、かけられたりした経験があると思います。お互いにここを乗り切ろうと励ましている言葉でもありますが、集中力はどうやって高めるものなのでしょうか。集中力とは「さまざまな物事の中にあっても、一つのことに意識を集中させる能力のこと」のことを言います。野球のグランドで言われる集中力とは「目の前のボール、一つのプレーに意識を集中させること」と言えるでしょう。

集中力を妨げるさまざまな要因

 暑いところで長時間にわたってプレーをしていると、どんどん体力は消耗し、集中力もそがれていくことが想像できますが、集中力を妨げる要因はどこにあるのでしょうか。これは環境的な要因と個人的な要因にわけて考えることができます。

《環境的な要因》…天候、気温(高温)、湿度、強風など自然環境によるもの

《個人的な要因》…暑さによる体力低下、体調不良(熱中症の傾向など)、

         前日からの睡眠不足、栄養不足など体のコンディションに関するものや

         不安、ストレスなどメンタル面でのコンディションに関するもの

 集中力を妨げる要因はいくつか挙げられますが、こうした要因が大きく影響すればするほど、集中力は下がりやすく、プレーのミスや突発的なケガなどの一因となります。

 また集中力の欠如は不必要なケガを誘発しやすいことに加えて、体調不良などの自覚症状の訴えが遅れることも懸念されます。特に暑さが厳しい日は、プレーを続けているうちに熱中症などで倒れてしまうといったことも想定されるため、指導者は選手たちの状態を把握し、しっかりと観察することが求められます。集中力を妨げる要因を一つずつ解決していくことが、集中力を保つキーポイントになります。


環境的な要因への対応

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一つのプレーに対して具体的な指示を付け加えていこう

 環境的な要因の改善としては、その変化に対応出来るよう日頃から準備をしておくことが大切です。冷暖房のついた環境に慣れてしまい、現代人は環境温度の変化にも弱いともいわれています。グランドでの暑さに馴れるために、暑熱馴化(しょねつじゅんか)といって暑い環境に体を馴らしておくこともその一つです(参考ページ「暑さになれる方法とやってはいけないこと」)。また運動後に牛乳(もしくはタンパク質を含んだ食品)を取ることも熱中症の予防効果が期待できます。これは牛乳に含まれるアルブミンというタンパク質が血管内に水分を取り込んで血液量を増やし、血流が促進されて汗をかきやすくなる、皮膚からの熱放散をしやすくなるといった働きにつながります。

 さらに強風も集中力を阻害する大きな要因です。風が強い日などはフライ捕球など守備練習を多めに行い、日頃から強風に対する準備を行っておくようにしたいものです。

個人的な要因への対応

 個人的な要因については、セルフコンディショニング等自分で解決できるものは積極的に取り組むようにしましょう。特に睡眠不足や朝食の欠食は熱中症のリスクを高めるため、十分な睡眠時間を確保することや朝食をきちんととるための時間管理を自分で行うことなどを心がけましょう。体調があまり優れないと感じたらムリをせずに指導者や保護者の方に相談する、練習を休むといったことも大切です。

 栄養不足については、偏った食生活や夏ばてによる食事量の減少などで必要な栄養素が不足し、体力面が低下していると考えられますので、夏でも食欲の出るような食事を工夫して取るようにしましょう。不安やストレスといったメンタル面については、悩ませているものが自分で解決できるものなのか、そうではないのかを把握し、自分で解決できないものであれば誰かに相談するなどして早めに対応しましょう。

より具体的な指示を心がける

 グランドで声をかけるときには、ただ単に「集中しよう」というのではなく、「次の打者を打ち取ることに集中しよう」「この一球のプレーに集中しよう」とより具体的に指示をすることで、集中力は格段に高まりますピンチの時には選手同士が声をかけあい、プレーや想定されるケースをの確認することが、次のプレーへの集中力を高めることにつながります。練習の時であれば、練習の目的が何かをはっきりさせることや「これが出来たらOK」というゴールを設定することが集中力UPにつながります。

 暑い時期は特に環境要因も大きな影響を与えがちです。「集中しよう」という掛け声とともに、明確な目標、ゴール設定、集中できる体力面、環境面のサポートをぜひ実践してみましょう。

【夏の暑さに負けない集中力とは】

●集中力=さまざまな物事の中にあっても、一つのことに意識を集中させる能力のこと

●集中力を妨げる要因は「環境的な要因」「個人的な要因」が挙げられる

●集中力を妨げる要因が大きく影響すると、集中力は下がりやすい

●環境的な要因への対応は夏の暑さに対する準備

●個人的な要因はセルフコンディショニングの実践

●「集中しよう」の声はなるべく具体的な指示を付け加える

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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