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試合中のアクシデント対応

2021.04.15

試合中のアクシデント対応 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 新学期となり、新入部員を含めてチームが賑やかになったところも多いと思います。皆さんはこれから練習を積み重ねて、春のシーズンや夏に向けて試合に臨むことになると思いますが、試合ができることに感謝し、楽しんでプレーをしてもらえればと思います。さて今回はトレーナーも頭を悩ませる試合中のアクシデント対応です。さまざまなことが想定されますが、比較的よく見られるものを中心にお話をしていきたいと思います。

アクシデント(スポーツ外傷)

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クロスプレーでは接触によるアクシデントも起こることがある

 野球のプレー中に発生するアクシデントはさまざま考えられますが、よく見られるのが突発的に起こるスポーツ外傷と、試合中の体調不良です。野球はノンコンタクト(非接触)スポーツと呼ばれ、相手と接触したり、ぶつかったりすることの少ない競技とされていますが、頻度は低いもののスポーツ外傷は発生します。その代表的なものがボールが体に当たるケース(デッドボールなど)です。

 ボールが体のどこに当たったのか、どのくらいの速さで当たったのか、ボールをよけながら当たったのか、それとも不意に当たったのかといったさまざまなことを確認し、打撲としての応急対応を行うようにします。基本的には患部を氷などで冷やすアイシングを行い、安静にするところですが、試合中であればそのままプレーを続行することも十分に考えられます。プレーを続行する場合は痛みや違和感などがプレーに大きな支障がない場合に限り、たとえば歩いたり走ったりする状態でいつものような動きができない場合はプレーを中断し、交代を検討するようにしましょう。試合でよく使われるコールドスプレーは一時的に痛みの感覚を和らげるものであり、持続性は期待できないものであるということも覚えておきましょう。

 目安としては自分のパフォーマンスが「100%発揮できる」というコンディションから考えて、アクシデント後の状態がどの程度なのかを判断します。90%、80%レベルであれば、ある程度プレーが継続できると判断できますが、60%、50%と下がっていくにつれ、プレーよりも患部の安静や医療機関の受診などを優先させる必要があります。トレーナーなどの専門家がその場にいるようであれば、しっかりと判断してもらいましょう。また多くの選手はアクシデント後も「大丈夫です」とプレー継続を希望する傾向が見られますが、大丈夫と言われてもその言葉だけではなく、動きなどもしっかり把握した上で判断することが大切です。

[page_break:打撲で気をつけたい部位(頭・頸部、顔面、胸部など)]

打撲で気をつけたい部位(頭・頸部、顔面、胸部など)

試合中のアクシデント対応 | 高校野球ドットコム
野球でよく見られるアクシデントの一つ、デッドボール

 ボールが体に当たったケースで特に注意が必要なのは頭・頸部や顔面、胸部への打撲です。こちらは原則としてプレーを中断し、適切な対応をとる必要があります。頭・頸部では脳振盪をはじめ、さまざまな脳へのダメージが考えられるため、当たった場所や速度、選手の状態などを慎重に確認していくことが最優先されます。顔面は鼻骨や頬骨など小さな骨が衝撃によって骨折しやすいことに加えて、脳へのダメージも考慮する必要があります。また眼の周辺部に当たったときは視力の低下や視野が狭くなってしまうことも考えられます。顔面への打撲では基本的な応急対応を行いながら、形成外科・眼科・脳神経外科等をもつ総合病院を受診することが望ましいでしょう。胸部への打撲はデッドボールよりも守備側の野手に直接打球が当たることが多く、当たった場所やタイミング、強度などによっては心臓震盪を引き起こすことがあります。心臓震盪が疑われる場合は直ちにAEDを準備し、CPR等の救急対応を行いながら救急車を手配する必要があります。球場や試合会場のどこにAEDが設置されているかは必ず事前に確認をしておきましょう。

アクシデント(体調不良・熱中症)

 試合中で考えられるアクシデントには突然の体調不良も想定されます。もともと体調が良くない状態でプレーをしていたものの、試合が経過するにつれて体力的な消耗などが原因となってプレーに支障が出る場合があります。特に前日の睡眠不足や朝食を食べずに参加していたといったケースは、熱中症を引き起こすこともあるので注意が必要です。

 熱中症は暑い時期に発症すると思われがちですが、急に気温が上昇したり、湿気が多い環境下で激しい運動を続けたりすると夏以外の時期であっても起こることがあります。体が暑さに馴れていないと体温と外気温の差によって、自律神経の働きが鈍り、体内に熱がこもりがちになってしまう・・・といったことも考えられます。基本的な対策として水分・塩分補給は試合中であってもしっかりと行うようにしましょう。特に試合中はゲームに夢中になるあまり、十分な水分・塩分補給ができていない場合もありますので、選手同士声を掛けあうなどチーム全体で意識するようにしましょう。

 試合前のウォームアップでは体の調子をしっかりと確認することも大切です。体調不良を引き起こす原因は生活習慣に基づくものも多いため、できる限り良いコンディションで試合に臨めるように生活リズムを整えることも大切です。

【試合中のアクシデント対応】
●野球での接触プレーは少ないもののアクシデントは起こるものとして準備する
●突発的に起こるスポーツ外傷はまず基本的な応急対応を行おう
●ボールが体に当たった場合はまず打撲への対応を行う
●頭・頸部、顔面、胸部などへの打撲はプレーを中断して応急対応を優先する
●胸部打撲は心臓震盪を引き起こすことがある
●生活習慣を見直すことが体調不良や熱中症予防にもつながる

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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