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睡眠とパフォーマンスの関係

2021.04.05

睡眠とパフォーマンスの関係 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 春のセンバツ大会が無事に開催され、ようやく甲子園で高校生の皆さんが野球をできるようになりました。出場校の皆さん、ぜひ甲子園でのプレーを楽しんでくださいね。また春休みに入り、公式戦が開催されている地域も多くなってきました。選手の皆さんにはオフシーズンで培った体力や技術を活かして、全力でがんばってほしいと思います。さて今回は睡眠とパフォーマンスについて考えてみたいと思います。十分に睡眠をとることがパフォーマンスアップにもつながると考えられていますが、皆さんはどのくらい睡眠の重要性を理解しているでしょうか。

自分の睡眠状態を把握しよう

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まずは自分の睡眠状態を把握してみよう

 コンディション管理に大切なことは、まず今の現状を知るということです。自分の睡眠状態を確認してみましょう。

1)平日の睡眠時間はどのくらいですか
2)布団に入ってから寝つくまでどのくらい時間がかかりますか
3)目覚めの状態はどのような感じですか
4)日中に眠気を感じることはありますか

1)睡眠時間については個人差がありますが、毎日体を動かすアスリートとしてはなるべく7時間以上は睡眠をとるように心がけたいところです。6時間以下になってしまうと睡眠不足によるパフォーマンスの低下が懸念されます。

2)日中に体を動かして疲れていると、布団に入ってから寝つくまでの時間は短くなると思います。就寝直前までスマホなどを眺めていると、どうしても寝つきが悪くなりやすいので、スマホはなるべく見ないようにしましょう。布団に入ってから15分以内に寝つくことができればよいと思います。

3)目覚めたときに「疲れている」「まだ寝足りない」と感じるようでは、十分な睡眠が取れていないと考えられます。朝、すっきりと起きられるように、逆算して布団に入る時間を設定してみましょう。

4)昼食後はどうしても副交感神経が優位に働くため、眠気を催してしまうことはあります。ただこの他にも午前中から眠気があって授業に集中できない…というようなことがあれば、やはり睡眠不足が考えられます。お昼休みに15分程度の昼寝をすることは、午後からのパフォーマンスを向上させる効果が期待できるので、どうしても眠いようであれば、昼寝を取り入れるようにしてみましょう。

睡眠不足は集中力・判断力・やる気に影響を及ぼす

 人間の体は睡眠中に傷んだ筋肉や軟部組織を修復し、ケガの治癒促進を促すためにも必要不可欠なものですが、睡眠は体のみならず脳に対しても大きな影響を及ぼします。体はたとえ丸一日眠らなかったとしても、ロボットの電池切れのように「動けなくなる」といったことはありませんが、脳に関連すること、たとえば「集中力」「判断力」「やる気」といったことは、睡眠不足によってかなり低下すると考えられます。

 睡眠が6時間未満の状態が2週間続くと、2日間徹夜したのと、同じレベルまでパフォーマンスまで低下するという研究結果※もあり「睡眠不足は酔っているのと同じくらい集中力や判断力を損なう」という指摘もあります。睡眠不足による影響としては、寝不足が続くとパフォーマンスの低下が顕著になること、そしてパフォーマンスの低下はなかなか自分では把握することができないということが挙げられます。自分でも気づかないうちに集中力、判断力が低下してしまい、パフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。

[page_break:脳に休息を与えよう/就寝前にやってはいけないこと]

脳に休息を与えよう

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布団にスマホを持ち込んで眺める習慣をやめよう

 脳に及ぼす睡眠の影響としては、起きている時の記憶や感情の整理・消去などを行うことがあげられます。睡眠には記憶を固定させる働きがあり、日中に練習した内容などを就寝前に思い返してイメージしながら眠ることは、記憶の強化につながることが期待できます。その一方で睡眠には不快な記憶や感情を消去する働きがあり、ぐっすり眠った翌日に気分がスッキリするのは、このメカニズムが関与しているのではないかと考えられます。

 睡眠は脳に休息を与えることができる唯一の行為です。睡眠中はレム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)を繰り返しますが、大脳の活動が休息状態に入るのはノンレム睡眠(深い眠り)の時です。睡眠不足によってこの睡眠リズムが乱れたり、睡眠そのものが短くなってしまうと脳が十分休むことが出来なくなってしまいます。しっかり眠って心身ともによい状態でプレーできるよう心がけましょう。

就寝前にやってはいけないこと

 これは皆さんも気づいていると思いますが、就寝前に交感神経を刺激するような活動をなるべく控えることです。具体的にはスマホやTVなどを就寝直前まで見ないということ。スマホを置いてから寝室でゆっくりストレッチをしてから寝るようにしてみましょう。寝つきの悪い人は意外とスムーズに入眠できるかもしれません。また就寝直前まで食事をすることや熱すぎるお風呂(42℃程度)につかることも、その後の睡眠に影響を及ぼすため、就寝直前ではなく時間に余裕を持たせることが大切です。

 「わかってはいるけど…」ということも多いと思いますが、十分に睡眠をとることが練習やトレーニングの成果をあげると肝に銘じて、毎日しっかり睡眠をとるようにしてくださいね。

※The Cumulative Cost of Additional Wakefulness: Dose-Response Effects on Neurobehavioral Functions and Sleep Physiology From Chronic Sleep Restriction and Total Sleep Deprivation
https://academic.oup.com/sleep/article/26/2/117/2709164

【睡眠とパフォーマンスの関係】
●まずは現状の睡眠状態を把握しよう
●睡眠不足は集中力・判断力・やる気などを低下させる
●パフォーマンスの低下は自分では気づきにくい
●睡眠は脳に休息を与えることができる唯一の行為
●就寝直前までスマホを見ることはなるべく控えよう
●就寝前にストレッチをするとリラックスな入眠につながる

次回は4月15日に配信予定です!

(文=西村 典子

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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