第251回 静的ストレッチはパフォーマンスに影響する?2020年08月16日

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【目次】
[1]体と心の準備を担うウォームアップ/静的ストレッチとパフォーマンスの関係
[2]静的ストレッチを取り入れるタイミング

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 ようやく梅雨が明けて夏の暑さを実感するようになってきました。感染症予防対策と変則的な日程の中で、選手の皆さんは日々練習に励んでいることと思います。気温の高い日中を中心に熱中症にはくれぐれも気をつけて過ごしましょう。さて今回はウォームアップの時にストレッチをするとパフォーマンスが落ちる?ということについて考えてみましょう。

体と心の準備を担うウォームアップ



一般的な静的ストレッチがパフォーマンスを低下させることは考えにくい

 チームでの全体練習や、個人で体を動かす時などは、技術練習に入る前に必ずウォームアップを行っていることと思います。ウォームアップを行うことは体の機能を高め、強度の高い激しい動きにも対応できるように準備すること、そしてこれから野球を始めるための心理的な準備を兼ねていると言えるでしょう。ウォームアップを行うことの重要性についてはこちらのコラムを参考にしてください(参考コラム:パフォーマンスアップにつながるウォームアップ )。ウォームアップは季節や気温、場所などの外的(環境)要因と練習頻度や疲労具合、不安部位の有無といった内的(個人的)要因などによって、その内容やウォームアップにかける時間は変わります。

静的ストレッチとパフォーマンスの関係


 ウォームアップを行う時に多くの選手がストレッチを取り入れていると思います。ストレッチは筋肉や軟部組織の柔軟性を高め、関節の動く範囲(関節可動域)を拡げることでより大きく、より力強い動きを引き出すことにつながります。ただし筋肉は急激に伸ばされると筋肉の中にある運動感覚器官がそれを察知して、筋線維がダメージを受けないように、その筋肉を収縮させて守ろうという反射(=伸張反射)が起こります。このため、特にスタティックストレッチ(以下、静的ストレッチ)を行うときは伸張反射が起こらないように、息を吐きながらゆっくりと伸ばすことが推奨されます。

 静的ストレッチを行うと、その後のパフォーマンスが低下する可能性を指摘した研究報告があります※1。ストレッチによって筋肉をゆるませると、その後の筋力発揮(等尺性収縮および等速性収縮)が一時的に落ちるというものです。しかし実際のスポーツ現場において、静的ストレッチをした直後に等尺性収縮(筋の長さが変わらない状態で筋力を発揮すること:スタビリティトレーニングなど)や等速性収縮(運動速度を一定にした状態で筋力を発揮すること:専用のマシンが必要)といった運動をすることはほとんどなく、研究対象とされたストレッチについても一部位につき30秒以上伸ばしたものについて指摘されたものでした。10秒、20秒といった比較的短い時間で行う静的ストレッチについてはパフォーマンス低下との関連は低く、通常の練習や試合前のストレッチについては、パフォーマンスへの悪影響は少ないと考えられます。

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プロフィール

西村典子
西村 典子 トレーナー
  • ■ 生年月日:1970年12月5日
  • ■ 出身地:大阪府
  • 奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。野球用品メーカーにて勤務後、トレーナーとして10年以上にわたり高校野球・大学野球の現場にたずさわる。野球現場での活動を通して自分たちで自分の体をマネジメントする「セルフコンディショニング」の重要性を感じ、チーム・選手・指導者にむけてスポーツ傷害予防や応急処置、トレーニング(ストレングス&コンディショニング)に関する教育啓蒙活動を行っている。

    一般雑誌、専門誌、ネットなどでも取材・執筆活動中。また整形外科ドクターと野球の傷害予防に関する共同研究活動なども行っている(現在の研究テーマは手指血行障害について)。

    現在、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナーをはじめ、さまざまな高校野球部を担当中。
  • ・日本体育協会公認アスレティックトレーナー
    ・NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)
    ・NSCA公認パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
    ・日本スポーツ整形外科学会会員 等
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