体重増加とコンディション管理
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
今、現在も新型コロナウイルス感染予防を最優先に「新しい生活様式」を取り入れた日常生活が推奨されています。部活動についても、今までとは違った形で少しずつ再開しているところが多いのではないでしょうか。全国大会は中止となりましたが、皆さんが今まで積み上げてきた練習、トレーニングの成果を発揮できる舞台を、各都道府県の皆さんが検討・準備されていることと思います。
どのような形であっても野球に対して真摯に向き合えるよう、選手の皆さんも心と体の準備をお願いします。さて今回は自粛期間中に思いがけず体重が増えてしまったときのコンディション管理と食事について考えてみたいと思います。
自粛時間で体重は変化した?
スナック菓子などの間食を控えることから始めよう
地域によって期間の違いはあると思いますが、3月から5月にかけておよそ2〜3ヶ月は学校がお休みとなり、部活動も思うようにできなかったことと思います。各自がそれぞれの課題を持って自主練習をしたり、トレーニングをしたりしていたと思いますが、その間に体重が増えてしまった…という選手もいるでしょう。一般的に体重管理はエネルギーバランスの収支によって考えることができます。
(体重増加)摂取エネルギー > 消費エネルギー
(体重維持)摂取エネルギー = 消費エネルギー
(体重減少)摂取エネルギー < 消費エネルギー
体重増加のケースを考えてみると、運動量(消費エネルギー)は普段と比べて減っているにも関わらず、食べる量(摂取エネルギー)は減っていないことがまず考えられます。動いていないのに食べる量は同じだと体重が増えてしまうのは想像しやすいですよね。ただし体重の増加が単に食事量によるものだけではないこともあります。
トレーニングなどで筋肉量が増えると、それに伴って体重は増加する傾向がみられます。筋肉と脂肪ではその比重が異なり、同じ体積あたりでは筋肉の方が脂肪よりも重いことがその要因として挙げられるからです。この自粛期間中に増えたものが筋肉なのか、それとも脂肪なのかは以前の測定データなどと比較するとわかりやすいと思いますが、現段階での体重・体脂肪率などを測定しておくことも、これからの変化を見る参考となりますので、ぜひ記録に残しておきましょう。
[page_break:極端な体重を落とさないこと]極端な体重を落とさないこと
エネルギー補給と体づくりのための補食はしっかり摂ろう
体重が増えてしまい、その中身が筋肉ではなく脂肪だとしたら、体に余分な重りをつけて動いている状態といえるでしょう。プレーの動きにくさを感じたり、体重が増えたことによって荷重関節(体重のかかる関節)である膝や足首、腰椎などに痛みを感じたり、といったことも考えられます。
「体重が増えたから、減量しないと」と考えるのはごく自然なことですが、減量には慎重に対応する必要があります。自粛期間によって少なからず活動量が減っていたこと、そしてこれからの時期は暑くなるといった環境面などを考慮すると、「食事量を減らす」というよりは、活動量を増やし、トレーニングなどによって筋肉量を増やすことを心がけながら食事をとるようにしましょう。日常で実践しやすい食事の考え方をいくつかご紹介しておきます。
・在宅時についつい食べていたスナック菓子、チョコレートなどの間食を控える
・食事のボリュームは普段と変わらず、食物繊維の多いもの(野菜、きのこ類、海藻類)などを多めにとる
・ゆっくりとよく噛んで食べる(食事は流し込むのではなく、時間をかけて食べよう)
・欠食しないで三食しっかり食べる(特に朝食)
こうしたことを心がけつつ、活動量を少しずつ増やし、食事はいつもと同じようにとりましょう。また筋肉量を増やすために市販のプロテインを飲んでいる選手も中にはいると思いますが、基本は食事から必要な栄養素(この場合はタンパク質)を確保すること。朝・昼・夕の三食にきちんとタンパク質を含むものがあるかどうか、肉や魚、卵、豆腐・納豆などの豆類、乳製品などが含まれているかどうかをチェックし、その上で不足分をプロテインなどで補うようにすることが大切です。
コンディションを崩さないために
自粛期間を経て、部活動を再開している皆さんにとっては、今までできなかったものを取り返すべく練習に取り組んでいることと思います。ただし運動量は段階的に増やす必要があり、急に激しい運動を毎日続けてしまうとコンディション不良による疲労が原因でケガをしたり、体調を崩したりすることが考えられます。これからの時期は特に熱中症への備えも必要となってきます。適宜休憩をとり、水分・塩分補給を行いながら数週間かけて以前のコンディションに近づけていくことが大切です。
【体重増加とコンディション管理】
●体重管理はエネルギーバランスの収支で考える
●何によって体重が増えたのかを把握する
●食事量を減らすことよりも、食べることを工夫しよう
●筋肉量を増やすための食事内容を見直そう
●急激に運動量を増やさないようにしよう
●これからの時期は熱中症への備えも忘れずに
(文=西村 典子)