練習再開について気をつけること
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
新型コロナウイルス感染拡大による影響を懸念し、センバツ高校野球大会が中止になってしまいました。出場が決まっていた選手やチーム関係者の皆さんにとっては想像したこともなかった事態に戸惑い、残念な思いをされていることと思います。
部活動、スポーツができる環境は当たり前ではないということを改めて実感せざるを得ません。この事態が早く収束に向かうことを願いつつ、今できること、これからの取り組みなどについてお伝えできればと思います。さて今回は部活動の練習が再開されるときに気をつけたいことについて考えてみましょう。
体力は少なからず落ちている
ジャグを使って水分補給をする場合は使い捨てコップ、もしくはマイコップにすること
前回のコラムでは運動レベルや頻度が落ちてしまったときに起こる体の変化についてお話をしました。自宅などでそれぞれが個別に自主練習を行ったり、体力維持のためにトレーニングを行ったりといった取り組みをしていることと思います。
そこから全体練習が再開されたときに急激に運動量や運動強度が上がってしまうと、体にとって大きな負担となり、疲労が蓄積されていくことになるでしょう。いくら自宅で体を動かしていたとはいえ、いつも以上に運動できる環境にある人はほとんどいないはずなので、体力は少なからず落ちていると考えるのが妥当です。
トレーニングの原則にも「トレーニングの質と量は少しずつ増加させていくようにする」という漸進性(ぜんしんせい)の法則があります。運動に対する「量」「強度」「頻度」といった変数を理解し、段階的に高めていくようにしましょう。
また全体練習の場合は、一人ひとり体力レベルが違っているということもありますので、特に指導者の方は選手たちのフィジカル面を考慮をしながら練習を行い、必要なところは全体練習後の自主練習などで補うといった配慮も必要となってくるでしょう。
チームで行う感染症対策
風邪やインフルエンザなどの感染症と同様に対応することが必要です。3月24日に文部科学省が発表した「新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」では、集団感染の要因となりやすい3つの条件(換気の悪い密閉空間、多数の人が集まる密集空間、間近で会話や発声をする密接空間)が重ならないように配慮し、手洗いの徹底、咳エチケットを徹底することが求められています。
《心がけたいこと》
・共同で使う物品については消毒をする、もしくはそれがむずかしい場合は使用後に各自が手洗いを行うことを徹底する
・運動中の水分補給については、必ずマイコップを持参するか、個人で水筒などを持参するようにし、コップの使い回しを避ける
・食事を伴う場合についてはビュッフェ形式を避け、他人とシェアしないお弁当などで対応する
・部室を利用する際は大人数が一度に利用するのではなく、少人数のグループごととしたり、時間を決めて長時間その場にとどまることのないようにする
・体調が優れないと感じたらすぐに指導者に伝える(部活動参加を見合わせて自宅で休養すること。マスクがあればマスクを着用する)
部活動を行っているときは感染経路を遮断することが大切です。手洗いやうがいには病原体が感染経路から体内に入ることを予防する効果があることを理解し、必ず行うようにしましょう。
参考資料)文部科学省:令和2年度における小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開等について(通知)
[page_break:運動後はしっかりと疲労回復・よく寝ること]運動後はしっかりと疲労回復・よく寝ること
練習後は免疫力を低下させない生活習慣を心がけよう
運動を再開することで懸念されることの一つに疲労の蓄積による免疫力の低下が挙げられます。免疫とは外から侵入する細菌やウイルス、体内で発生する悪性細胞などへの自己防衛システムが機能しているかどうかを指し、そうしたものから体を守る抵抗力のことを免疫力と呼んでいます。免疫力が低下してしまうとこうした自己防衛システムが破綻して体調を崩すことになります。
「アスリートは風邪をひきやすい」ということを聞いたことがあるかもしれません。激しい運動と疲労回復のバランスが崩れてしまうと免疫力が低下して、感染症にかかりやすくなることが指摘されています。
運動再開によって疲労がたまり、それが十分に回復しないまま練習を続けていると免疫力の低下につながることが懸念されます。練習後は自宅でしっかりと食事をとり、入浴は湯船につかって体全体を温め、十分な睡眠をとることを心がけましょう。
休み期間を経て、体を動かすことにはさまざまな配慮が必要ですが、心身のリフレッシュとともに野球ができる喜びを改めて感じる選手も多いと思います。気持ちの面でも前向きになりやすく、仲間とともに新たな目標に向かってそれぞれががんばってほしいと思います。
【練習再開について気をつけること】
●練習は運動の「量」「強度」「頻度」を段階的に上げるようにすること
●一人ひとりの体力レベルは違うので、全体練習後の自主練習なども活用しよう
●チームで感染症対策を徹底しよう
●免疫力が低下すると感染症のリスクが高くなる
●十分な食事と休養、睡眠を心がける
●野球ができる喜びを感じながら前向きにがんばろう
(文=西村 典子)
次回コラム公開は4月中を予定しております。