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パフォーマンスアップにつながるウォームアップ

2020.02.29

パフォーマンスアップにつながるウォームアップ | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 いよいよ待ちに待ったシーズンも近づいてきました。グランドが使える環境では、ボールを使った練習を行い始めているチームもあるでしょうか。さて今回は練習や試合前に必ず行うウォームアップについてお話をしたいと思います。

 寒い時期と暖かい時期ではウォームアップの内容も変わってきますし、オフシーズンとシーズン中でもおのずとその内容には違いがあると思います。いろんな要因を考えつつ、パフォーマンスアップにつながるウォームアップについて考えてみましょう。

ウォームアップをやる意味とは?

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全体でのウォームアップの前に個人で自分の体をチェックする時間を持とう

【ウォームアップの目的】
改めてウォームアップの目的をおさらいしておきましょう。

1)体温・筋温を上昇させ、軟部組織の柔軟性を高め、関節可動域(関節の動く範囲)を広げる
2)血流を良くして運動に適した体を準備する
3)神経の働きを良くして、感覚器からの情報をうまく動作につなげられるようにする
4)心拍数と呼吸数を徐々に増加させて、循環器系への急激な負担を避ける
5)メンタル面の準備として精神的なゆとりを持たせる

 ウォームアップは、メインの練習や試合のときに最大のパフォーマンスが発揮できるように、そしてプレーによってケガをしないよう事前に体を動かして準備しておくことと言えます。

 放課後の練習前にウォームアップをする時間がなくて、何もしないままキャッチボールやノックに参加してしまい、肩や肘が痛くなったという経験はありませんか。夕方の練習は限られた時間内で行うチームがほとんどですので、少しでも早く実践練習に参加したいという気持ちはわかりますが、ここでウォームアップを省いてしまうと結果的にケガをしてしまったりすることも考えられます。あわてて全体練習に参加することは避け、しっかりとウォームアップをしてから合流することは基本中の基本です。

【ウォームアップの中で体をチェックする】

 ウォームアップの流れとしてはまず軽く体を温めるためにジョギングなどを行い、そこからストレッチで筋・腱などの軟部組織を伸ばしつつ、関節の可動域を広げるようにしていきます。できれば全体練習の前に、個人で気になる部位などはあらかじめストレッチを行ったり、ストレッチポールやフォームローラー、テニスボールなどを使って軽くほぐしたりしておきましょう。

 硬い部分をそのまま残した状態でストレッチを行っても、柔らかい部分から先に伸びてしまうので、一番気になるところがなかなか伸びないということにもなります。また毎日同じようなルーティンで行うと、昨日との比較もしやすいと思います。いつもは何も感じないところが今日は気になるといった小さな変化も見逃さないようになり、ケガを未然に防ぐことにもつながります。

[page_break:どんなウォームアップをすればいい?]

どんなウォームアップをすればいい?

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刺激への反応を早くするためにも感覚器との連動を考慮しよう

【脳と体との反応をよくするために】
 ジョギングとストレッチで部分的(筋肉や関節など)、全体的(心肺機能など)な準備が整ってきたところで、今度は脳からの指令によってより力強い動作ができるようにドリルやダッシュなどを行います。運動は目や耳、皮膚など感覚器と呼ばれるところから情報を得て、それを脳に伝え、脳からの指令によって運動器が反応するという一連の流れがあります。

 スポーツでは最も多く情報をえられる目を始め、耳や皮膚への刺激を通してすぐに反応できるように準備していきます。視覚による反応を高めるためのビジョントレーニングなどもこの段階で導入するとよいでしょう。目からの合図によって素早くスタートを切る動作や、短い距離を瞬時に駆け抜けるダッシュなどを繰り返し、脳の中枢神経を刺激して運動時の反応を高めるようにします。また体温・筋温が上がると神経の伝達スピードが高まるため、脳からの運動命令を素早く筋肉へ伝えて動かすことができるようになります。

【姿勢を安定させるためのバランス養成】
 また体を支えるためのバランス能力もチェックしておきましょう。片足閉眼立ちでは30秒以上ふらつかないでその状態を維持できるか、また足を左右に開くのではなく、前後にして足を揃え、そのまま閉眼で30秒以上できるかといったことなどは手軽にできるバランストレーニングです。

 片足スクワットなどもふらつかずにできるようにやってみましょう。足底の感覚がよくないようであれば、足指をしっかりと開いて閉じるグーパー運動や手指と足指を握手した状態で足首を回すエクササイズなども行うようにすると、安定感が改善されることがあります。

 ウォームアップではいろんな体力要素について、メインの練習や試合に一番良い状態になるように準備していきます。時間的な制約もあり、すべてを行うことはむずかしい面もありますが、各自でできるところはあらかじめ行っておいたり、日によって行う種目を変えたりしながら、その日にできるよい準備を行って練習や試合に臨むことが大切です。パフォーマンスアップだけではなく、予期せぬケガを防ぐためにもウォームアップの重要性をしっかりと理解してくださいね。

【パフォーマンスアップにつながるウォームアップ】
●ウォームアップの目的はフィジカル面、メンタル面での準備
●ウォームアップをしないまま練習や試合に参加するのはケガのもと
●「いつもとは違う」という小さな変化を見逃さないようにする
●脳と体との反応をよくするために感覚器を刺激しよう
●バランス能力とともに足裏の感覚もチェックしよう
●時間的な制約を考慮しつつ、日ごとに種目を変えながら行おう

(文=西村 典子

次回コラム公開は2月29日を予定しております。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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