Column

自重トレーニングの強度を変える

2020.01.15

自重トレーニングの強度を変える | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 いよいよオリンピックイヤーの幕開けですね。改めまして2020年もどうぞよろしくお願いいたします。さて今回は野球の技術練習、ウエイトトレーニングだけではなく、ちょっとした時間にも取り入れやすい自重トレーニングについて考えてみたいと思います。

 自分の体重を使って行う自重トレーニングは場所や天候などに左右されることが少なく、どこでも実施することができるトレーニングといえます。その一方で自体重のみの負荷では、馴れてしまうと「過負荷の法則」(負荷は段階的に少しずつ上げていくことで筋力アップにつながる)から外れてしまうため、ウエイトトレーニングとともに補助的な役割を担うことが多くなりますが、工夫次第ではトレーニング強度を変化させることが可能です。自重トレーニングのバリエーションを考えてみましょう。

まずは姿勢やフォームを確認しながら基本的な動作を繰り返し行う

自重トレーニングの強度を変える | 高校野球ドットコム
パワーは「力」×「スピード」。トレーニングスピードを上げるとパワーも大きくなる

●まずは正しいフォームを習得する
 自重トレーニングを正しいフォームで行っているでしょうか。まずは姿勢やフォームを確認しながら基本的な動作を繰り返し行うことが必要です。いつ実施しても同じ動作で意図したとおりの筋肉にアプローチしているか、動作の「再現性」を意識して行います。できれば専門家や指導者にフォームチェックをしてもらうたいところですが、スマホなどで動画を撮影して自分自身でチェックすることもよいでしょう。基本的な動作を習得したら、段階的に応用編へとうつるようにします。

●スピードに変化をつける
 自重トレーニングの動作スピードに変化をつけると運動強度に変化をもたらすことができます。最近は動作スピードを遅くしてゆっくりとトレーニングを行う「スロートレーニング(スロトレ)」なども行われています。筋肉への刺激がより長い時間かかることで、力を発揮する時間が増えて負荷が高まります。スクワットでスロトレを行う場合は3〜5秒程度かけてしゃがみ込み、3〜5秒かけて元に戻るように行いましょう。動作スピードを速くしてトレーニングを行うと、瞬発力を意識したパワー養成のトレーニングになります。パワーは「力」×「スピード」によってもたらされるため、同じ力発揮であればスピードが速くなればなるほど大きなパワーが発揮されます。

[page_break:自重トレーニングにほんの少し変化をつける]

自重トレーニングにほんの少し変化をつける

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自重トレーニングは片足でのバランスや踏ん張って力を出す動きなどにも応用できる

●体を支える足幅、手幅などを変える
 体を支える部分の安定性を変化させてみましょう。わかりやすいのが足幅や手幅の変化です。スクワットであれば足幅を広くして行う「ワイドスクワット」は通常の足幅に比べて、太ももの内側にある内転筋群や、お尻の筋肉がより多く動員されます。反対に足幅を狭くして行う「ナロウスクワット」では太ももの前側にある大腿四頭筋により負荷がかかります。膝が内側に入らないように注意しながら行いましょう。プッシュアップ(腕立て伏せ)であれば手幅を広げることでより大胸筋に刺激が加わりますし、手幅を狭くした状態で行うと腕の裏側にある上腕三頭筋がより使われるようになります。また両足ではなく片足で体を支えるようにすると不安定さと強度が増します。

●バランス要素をプラスする
 スクワットであれば両足で行っているものを片足で行うようにすると、両足で行う時に比べて負荷は高くなります。加えて体のバランスを維持しながら行う必要があるので、体幹を安定させなければうまく行うことができなくなります。浮いている足を前で保持するか、後ろで保持するかでも重心位置が変わりますし、バランスボードなど不安定なサーフェス上で行うと、両足であってもかなりむずかしいエクササイズに変化させることができます。体を支える支持基盤(足や手など)を変化させるとバランス能力を高めることにもつながります。

●動く範囲を変える
 エクササイズで動く関節可動域(関節の動く範囲)を変えることも運動強度に変化をもたらします。トレーニング動作の基本は関節可動域をフルに使うことですが、スクワットの場合などは膝(特に半月板)への負担を考慮してフルスクワット(一番下までしゃがみ込む動作)はあまり行いません。太ももが床と並行になるくらいまでしゃがみ込んだら、一度膝や股関節を伸ばして立ち上がるようにしますが、ここで関節を伸ばしきってしまうと下肢の力を使わなくても姿勢を維持できるため、負荷が軽くなります。立ち上がるときに、膝を完全に伸ばしきらずに少し曲げた状態で止め、そこから次の動作へ移るようにすると体力要素の一つである筋持久力の強化につながります。

 いつも行っている自重トレーニングにほんの少し変化をつけるだけで、鍛えられる体力要素や筋肉への刺激が変わってきます。補助的な役割の大きい自重トレーニングですが、工夫次第でさまざまな効果が期待できます。チーム全体での取り組みや自主練習の一つとしてぜひいろいろと試してみてくださいね。

【自重トレーニングの強度を変える】
●自重トレーニングは行いやすい反面、馴れると「過負荷の法則」から外れやすい
●正しいフォームで同じ動作をキチンと反復できる「再現性」を意識しよう
●同じ動作でもスピードを上げることでパワーを高めることができる
●足幅、手幅などに変化をもたらし、違った筋肉を動員する
●両足を片足にといった体を支える支持基盤を変化させるとバランス養成にもつながる
●完全に伸びきらない状態で次の動作につなげると、筋持久力が高まる

(文=西村 典子

次回コラム公開は1月31日を予定しております。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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