暑い時期の練習計画とコンディショニング
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
甲子園をかけた熱戦続く地方大会が終わると多くのチームでは、新チームが始動していることと思います。勝ち上がったチーム、選手の皆さん、おめでとうございます。全国の舞台では地方大会で敗戦したチームの分まで野球を存分に楽しみ、躍動してもらいたいと思います。さて今回は夏休み期間に入ったこの時期の練習計画や心がけたいコンディショニングなどについてお話をしたいと思います。
平日とは違って学校が休み期間に入ると、野球を行う時間も増える傾向にあるため、運動量と体力レベルを考慮しながら練習計画を立て、秋の公式戦に向けて準備していくことが大切です。練習やトレーニングについても期分け(移行期、準備期、試合期など)を行い、目的にあったトレーニングを選択するようにしましょう。新チームに入った段階でまず自分のコンディションを振り返ってみましょう。
ケガや不安部位などを残したままプレーをしていないか!
高温下での練習や試合は体力消耗が激しいので、疲労を考慮して運動量を調整しよう
夏の大会では連戦が続くこともあり、疲労と回復のバランスが追いつかずにさまざまな部位に不安要素を抱えてしまうことがあると思います。それをそのままにしておくと、練習量の多い夏場ではさらに悪化させてしまうことにもなりかねません。疲労が原因となるような投げすぎによる肩・肘の痛みであったり、筋疲労が主な原因となる筋緊張性の腰痛などの場合は、まず疲労の回復に努め、食事や休養のバランスをとりながらコンディションの回復をはかるようにします。その上で不安部位に大きなストレス、痛みを伴う動作はなるべく避け、できる範囲で練習に参加することがケガを悪化させないためにも重要です。
●高温下の環境を考慮する
夏の暑い時期になり、高温の中で長時間運動をしていると、通常よりもより大きな負担が体にかかりやすくなることを覚えておきましょう。汗をかくために脱水症状を起こしやすいことはもちろんですが、脳が暑さを感じ続けると疲弊しやすく、集中力の低下なども起こりやすくなります。練習前後に体重を測定し、体重の減少が2%を越えないように水分・塩分補給のタイミングを考慮することや、練習と練習のインターバルを少し長めにとり、脈拍数などをチェックして、体への負担が大きくなっていないかどうかを把握しましょう。普段よりも脈拍数が多い場合は休息時間を多めにとったり、練習量や内容などを変更するなど臨機応変な対応が求められます。
急激に運動量を増やさない(足し算ではなく引き算で)
コンディションチェックに欠かせない体重測定。遠征時などは毎朝測って記録しておこう
練習に多くの時間を費やせるようになると、基本練習だけではなく実践練習であったり、試合形式の練習であったりと、さまざまな練習が組み込まれると思います。もちろんそれは計画的に行われているのであれば問題ありませんが、ついあれも、これもと当初の計画から追加されていくようなパターンはなるべく避けるようにしましょう。特にこの時期は体力の消耗が激しく、疲労回復に時間を要する気候です。急激な運動量の増加はコンディションを悪化させるリスクが高くなるため、気温や風、湿度といった環境と選手の体力レベルを考慮し、疲労が見られるようであれば当初の予定から練習を削減する「引き算方式」で運動量をコントロールするようにしましょう。
全体練習の時間は短く、自主練習や個人練習など個々の体力レベルにあったものを自ら選択できるものであれば各自でコンディションを調整することも可能です。休養日に関しても、選手の体重の減少などが著しい場合には、決められた日程以外にも適切に休養を取ることが大切です。
●遠征時は必ずコンディションチェックを行おう
特に遠征や合宿など長期間にわたる宿泊を伴うようなときは、チームで体調管理を行い、疲労がたまっていないかどうかを確認するようにしましょう。手軽にできる3つの項目を挙げておきます。
1)体重
毎朝起床時や練習前など同じタイミングで測定を行います。体重計と記録用紙さえ準備しておけば忘れずにチェックすることができます。
2)起床時の脈拍
疲労がたまってくると起床時の心拍数が増える傾向にあります。スマホアプリなどを使って毎朝起床時の脈拍数を測定し、把握ておきましょう。
3)主観的疲労度
主観的疲労度というのは自分自身が感じる疲労具合のことです。5段階評価もしくは10段階評価で一番疲れている時を10、疲れを感じない時を0として、今日の自分はどのくらいの疲労を感じているかを記録しておきます。
暑い環境下では体力の消耗が激しく、疲労が積み重なると思わぬケガにつながります。練習中の水分・塩分補給はもちろんのことですが、体調面を考慮しながらムリのない範囲でプレーすることが、結果的にパフォーマンスアップにもつながります。まずは自分の体調をしっかり把握できるようにしましょう。
【暑い時期の練習計画とコンディショニング】
・ケガや不安部位を抱えたままムリにプレーを続けないこと
・高温下での練習や試合はいつも以上に大きな負担が体にかかりやすくなることを理解しよう
・練習後に体重の減少が2%を越えないように水分・塩分補給を行うようにしよう
・練習やトレーニングの予定はあらかじめ設定しておき、体力レベルにあわせて「引き算」で運動量を調整しよう
・体重、運動時の脈拍、主観的疲労度の3つをセルフチェックしておこう
(文=西村 典子)
次回コラム公開は8月15日を予定しております。
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