第225回 熱中症が疑われるときの応急対応はどうすればいい?2019年07月15日

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【目次】
[1]熱中症の病態を知ろう!
[2]熱射病が疑われるときはとにかく体を冷やす!


 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 連日、甲子園出場をかけた熱い戦いが続いていますね。特に3年生にとっては最後の夏。今までやってきたことを自信に変えて、悔いの残らない試合をしてほしいと思います。さて今回は暑い時期に気をつけたい熱中症について、その病態と最新の救急対応を中心にご紹介したいと思います。知っていることは復習を兼ねて、知らなかったことはぜひ覚えておきましょう。

熱中症の病態を知ろう!



熱中症になりやすい時期の試合は特に脱水を起こさないよう注意しよう

 熱中症とは、暑さによって生じる体調不良の総称で「熱失神」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」などの病態があります。人間の体は運動などによって体内に発生した大量の熱を、皮膚血管をひろげて発汗することで体外に発散し、体温のバランスを保つように働きますが、外気温や湿度の高い状態では熱放散の効率が悪くなります。体内に熱がこもった状態が長く続いてしまうと、体温や生理機能の調節がうまく働かなくなって熱中症を引き起こします。外気温だけではなく湿度が高い状態でも熱中症は起こりやすくなることを覚えておきましょう。4つの病態について簡単にまとめておきます。

《熱失神》
 体温が上がると人間の体は皮膚表面の血管をひろげて全身の血流量を増やし、体内の熱を外に逃がそうとします。そこへ激しい運動や急に立ち上がったりすると、脳への血流が一時的に減少し、めまいや一過性の意識消失(失神)などが起きます。重力の影響で下肢には血液がたまりやすいため、足を高くして寝かせるようにすると、脳への血流が回復して症状の改善につながります。

《熱けいれん》
 汗は血液から作られ、その中には水分だけではなく塩分も含まれます。汗をかいて体内の水分・塩分が失われた状態で、塩分が十分に補給されないと、筋肉を収縮させるメカニズムがうまく働かなくなり、手や足が「つる」といった、筋肉のけいれんを引き起こすことがあります。経口補水液など塩分を含んだ飲み物を補給(もしくは点滴)し、けいれんした部位をゆっくりストレッチすることで筋けいれんの症状はやわらぎます。

《熱疲労》
 汗をかくと体内の水分・塩分は奪われますが、これを補うだけの十分な水分・塩分を補給しないと脱水状態におちいります。全身のだるさや、力が入らない、めまい、頭痛、吐き気などによって体調不良を引き起こします。この場合はまず脱水を改善するためにスポーツドリンクなど水分と塩分を含む飲み物をとるようにします。口から飲み物を摂取できない(気持ち悪さや嘔吐などがある)状態では、病院での点滴が必要となります。

《熱射病》
  体温を調節する機能が正常に働かなくなると、急激に体温が上昇(40℃以上)し、脳機能に異常をきたすようになります。応答が鈍い、言動がおかしいといった意識障害がみられ、さらに進行すると意識を失った昏睡状態になります。高体温が続くと脳だけでなく、肝臓、腎臓、肺、心臓など生命活動を維持するための臓器に障害をもたらし、命を落とすことがあります。一刻を争う緊急事態であり救命を左右するのは、迅速な身体冷却です。救急車を要請し、速やかに体温を下げる対応を行いましょう。

 重篤な状態ではない熱疲労と思われても、そのまま運動を続けていると脱水症状や体温調節機能に異常をきたして熱射病へと移行することがあります。応答が鈍い、何となく言動がおかしい、日時や場所がわからないといった意識障害が見られるものはもちろん、判断に迷うような場合は熱射病として対応しましょう。

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プロフィール

西村典子
西村 典子 トレーナー
  • ■ 生年月日:1970年12月5日
  • ■ 出身地:大阪府
  • 奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。野球用品メーカーにて勤務後、トレーナーとして10年以上にわたり高校野球・大学野球の現場にたずさわる。野球現場での活動を通して自分たちで自分の体をマネジメントする「セルフコンディショニング」の重要性を感じ、チーム・選手・指導者にむけてスポーツ傷害予防や応急処置、トレーニング(ストレングス&コンディショニング)に関する教育啓蒙活動を行っている。

    一般雑誌、専門誌、ネットなどでも取材・執筆活動中。また整形外科ドクターと野球の傷害予防に関する共同研究活動なども行っている(現在の研究テーマは手指血行障害について)。

    現在、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナーをはじめ、さまざまな高校野球部を担当中。
  • ・日本体育協会公認アスレティックトレーナー
    ・NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)
    ・NSCA公認パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
    ・日本スポーツ整形外科学会会員 等
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