遠征や合宿時のセルフコンディショニング
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
いよいよ本格的な野球シーズンが近づいてきました。春になると遠征や合宿など環境を変えて練習を行うこともあると思いますが、皆さんはいつもどのように過ごしているでしょうか。今回は遠征や合宿を想定し、自分でできるセルフコンディショニングについて考えてみたいと思います。
移動、部屋、食事でのセルフコンディショニング
左のような足を投げ出す姿勢では腰が痛くなりやすい。足置きなどをうまく活用してみよう
長い移動時間への対応
バスなどを使って長距離移動をしていると同じ姿勢を強いられて、腰や背中などが痛くなった経験があると思います。移動時はこまめに休憩をとって体勢を変えたり、立ったりできるような時間を設けることが大切です(1時間半〜2時間に一度は休憩)。またあらかじめクッションなどを用意しておき、気になるところに置いておくことも腰痛対策の一つです。また足元に何か足置きになるような台を準備し、膝の位置を少し高くするだけでも腰への負担が軽くなることがあります。
部屋での過ごし方
ホテルや旅館の部屋は空気が乾燥しやすく喉を痛めやすいため、濡れたタオルや洗濯物などを干して部屋の湿度を上げるように心がけましょう。喉の痛みをが続くと、そこから発熱へとつながるケースも多いため、乾燥には十分に気をつけること。屋外から部屋に戻ったら、手洗い・うがいを必ず行うようにしましょう。これは喉を潤すだけではなく、感染症の予防にもなります。喉の痛みを感じるときは、渇いたタオルをのど元に巻き、保温すると改善することがあります。また一人部屋ではなく数名で部屋を使っている場合は、自分自身の体調が優れないと感じたら早めに指導者に伝えることも大切です(他の人にうつさないようにするため)。普段以上に疲労も蓄積しやすいので、十分な睡眠時間を確保することも心がけましょう。
食事について
普段の食事とは異なり、バイキング形式の食事になることも多いと思います。さまざまな種類の食べものを見るとついついお皿に盛ってしまいますが、食べ過ぎもまたコンディションを崩してしまう一因となるので注意しましょう。どうしても不足しがちな野菜・果物類をはじめ、体を動かすエネルギー源となるご飯・パン・麺類などの炭水化物を十分にとり、肉・魚・卵・大豆といったタンパク質も意識してとるようにすると良いでしょう。試合前日は翌日のコンディションを考えて、お寿司や刺身といった生ものや天ぷらなど油が多く使われているものはなるべく避け、消化にいいものを取るように心がけましょう。
チームで取り組みたいコンディショニング・チェック
遠征や合宿では生活リズムが変わりやすいので、食事や睡眠など意識できるところから整えよう
遠征や合宿では体調面の管理を毎朝行い、疲労の蓄積具合を確認するようにしましょう。短い時間でサッと確認できる項目として3つ挙げます。
1 体重
起床時、朝食前、もしくは入浴時など同じタイミングで測定を行うようにします。体重計を準備しておき、各自が確認して記録をとっておくと良いでしょう。体重の増減によって体力的な消耗の程度と、食事などでえられるエネルギーとのバランスを確認することができます。また練習前後に体重を測定すると、発汗量によって体がどのくらい脱水しているかの指標となります。全員が集まりやすい食堂付近やお風呂場、トレーニングルームなどに体重計を準備しておくようにすると取り組みやすいと思います。
2 起床時の脈拍
疲労がたまってくると起床時の心拍数がいつもよりも多くなるということが指摘されています。遠征や合宿前にいつもの脈拍をチェックしておき、合宿中は毎朝脈拍を測定するようにしましょう。スマホアプリなどを使うと比較的簡単に測定することができます。「十分寝たはずなのに疲労がとれない」「しっかり食べているのに体重が減る」「筋肉痛がいつまでたっても残っている」という場合は、オーバートレーニングの可能性があります。練習量を減らしたり、練習内容を変更するなど適切な対策が必要となります。
3 主観的疲労度
主観的疲労度というのは自分自身が感じる疲労具合のことです。5段階評価でも10段階評価でも構わないのですが、一番疲れている時を10、疲れを感じない時を0として、今日の自分はどのくらいの疲労を感じているかを記録しておきます。一番疲れた状態(たとえば10)が続く場合は、練習内容とともに生活習慣も見直す必要があります。睡眠不足が続いていないか、食事はキチンと食べているか、入浴は湯船につかっているか、ストレッチなどのクールダウンを行っているか、リラックスした自由時間があるかといったことを見直し、合宿や遠征が実りあるものになるよう、体調管理を心がけましょう。
【遠征や合宿時のセルフコンディショニング】
●移動時の腰痛を防ぐためにクッションや足置きなどを準備してみよう
●部屋の感想はコンディショニング不良につながる。湿度を保つ工夫をしよう
●バイキング形式の食事では普段不足しがちな野菜・果物類をたっぷりと
●毎日チェックしてほしい項目は「体重」「脈拍」「主観的疲労度」
●主観的疲労度の高い状態が続くとオーバートレーニング症候群におちいることがある
●遠征・合宿を実りあるものにするためにも日々の体調管理に気を配ろう
(文=西村 典子)
次回コラム公開は3月15日を予定しております。