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ドーピングの基礎知識を学ぼう

2019.02.15

ドーピングの基礎知識を学ぼう | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。野球に限らずスポーツはすべてフェアプレーを守るために、必要以上に競技力を高める薬や方法(=ドーピング)を禁止しています。ドーピングをしないようにする活動をアンチ(反)・ドーピング活動といいますが、これは検査を受ける、受けないに関わらず、アスリートであれば必ず知っておきたい知識です。今回はドーピングの基礎知識についてお話をしたいと思います。

なぜドーピングをしてはいけないのか

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ドーピングは「仲間を信じ、相手を尊敬する」フェアプレー精神を裏切る行為

 高校生の皆さんはドーピング検査を受ける機会はあまり多くないと思いますが、国際大会に出場する場合をはじめ、大学野球の全国大会やプロ野球においてもドーピング違反をしないよう常にチェックする体勢が整っています。なぜドーピングをしてはいけないのかという理由については大きく3つ挙げられます。

1)フェアなスポーツ精神に反し、スポーツの価値を損ねる
2)選手の健康を害する
3)社会的に悪影響をもたらす

 野球が上手くなるために日々最善を尽くして練習をしてきたことや、チームメイトを信じること、そして対戦する相手チームを尊敬することすべてを否定する行為がドーピングです。同じ舞台に立ったときに薬剤やさまざまな方法を使って不自然に競技力を上げていた選手がいると、公正な競技結果は生まれません。スポーツの価値そのものを損ねることになります。さらにはドーピングによって選手自身の健康に悪影響を及ぼすこと、薬剤への抵抗感が減ることによって、将来的に麻薬や覚醒剤を容認しやすくなることなどが問題として挙げられます。

故意じゃなければ大丈夫?

 ドーピングの世界的なルールを取り決めている世界アンチ・ドーピング機構(通称WADA:わだ)はアンチ・ドーピング規程に関する禁止表を、少なくとも毎年1月1日に更新しています。アスリートとしてはこの禁止表に書かれているものを理解し、ルールを守ってスポーツに参加することが求められます。ドーピングとは知らずに飲んだ薬の中から禁止物質が検出されてしまっても、ドーピング違反として処罰の対象となってしまうため注意が必要です。特に風邪薬や花粉症の薬、漢方薬、サプリメントにも禁止物質が入っていることがあります。日本スポーツ協会では使用可能な薬のリストを公開していますので、ぜひダウンロードしておきましょう。

参考資料)アンチ・ドーピング使用可能薬リスト(2019年版)

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ドーピングのケーススタディ

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ドーピングは禁止物質だけではなく禁止方法もある

 身近な問題として考えたいドーピング違反について。皆さんはこのようなケースに遭遇したことはあるでしょうか? そしてこれが故意ではない「うっかりドーピング」になってしまうかどうかについても考えてみましょう。

Q1)ドラッグストアやネット通販でサプリメントを購入して飲む

A1)ドーピング違反になる場合があります。

 薬は法律で成分表示を行うことが義務づけられていますが、サプリメントは食品に分類されるため主な成分表示のみにとどまり、すべての成分が表示されるわけではありません。特に海外製のものについては中身がわからないものも多く、安易に購入して飲むと禁止物質が入っていた…ということも考えられます。体に必要な栄養素はなるべく食事からとるようにすることや、そのサプリメントが本当に自分に必要なものかを再確認しましょう(ドーピング違反はアスリートの自己責任になります)。

Q2)連戦が続いて疲れたので栄養ドリンクを飲む

A2)ドーピング違反になる場合があります。

 サプリメント同様、栄養ドリンクも食品に分類されるため、すべての成分が記載されているわけではありません。その多くは疲労回復をもたらすビタミンB群などの他に、覚醒作用をうながすカフェインなどが含まれています。カフェインは2019年現在ドーピングの禁止物質ではありませんが、薬物監視リストとしてあげられており、必要以上に摂取すると不眠や頭痛、下痢、不安感やイライラといった心身への影響が懸念されるため注意が必要です。

Q3)疲労回復のためにいわゆる「ニンニク注射」をうつ

A3)ドーピング違反になります。

 ニンニク注射という言葉を聞いたことはあるでしょうか? ニンニクの成分が入っているわけではありませんが、ビタミンB1などを含み、疲労回復をもたらすとされている物質を点滴によって体内に摂取する方法です。この点滴の成分に禁止物質は含まれないのですが、医療行為ではない点滴(疲労回復目的)や静脈注射は禁止方法にあたります。病気などに対する点滴・静脈注射については病院の規模や点滴の量などによってドーピング違反となる場合があります。

 この他にも風邪薬や漢方薬などにも禁止物質を含むものがあります。高校野球においても甲子園大会においてドーピングに対する啓蒙・広報活動が展開されていたり、国体などでもドーピング検査が実施されるようになってきています。選手はもちろんですが、指導者や保護者、スポーツを応援するすべての人がドーピングに関する基礎知識を学び、薬やサプリメントに安易に頼らないということを理解しておきましょう。

【ドーピングの基礎知識を学ぼう】
●ドーピングとは必要以上に競技力を高める薬や方法のこと
●ドーピング違反をしないという活動をアンチ・ドーピング活動という
●ドーピング禁止の理由「スポーツの価値を損ねる」「選手の健康を害する」「社会的に悪影響」
●アンチ・ドーピング使用可能薬リストを確認しておこう
●サプリメントや栄養ドリンクは食品に分類されるため、すべての成分が確認できない
●禁止物質が入っていなくても、医療行為ではない点滴や静脈注射はドーピング行為にあたる

(文=西村 典子

次回コラム公開は2月28日を予定しております。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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