第204回 肘の痛みと肘の靱帯手術であるトミー・ジョン手術2018年10月31日

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【目次】
[1]投球過多による肘の痛み
[2]肘の靱帯を再建するトミー・ジョン手術とは


 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 公式戦が一段落しオフシーズンに近づいてくると、シーズン中は少々無理をしながらプレーをしていた選手も、患部の治療やリハビリテーションを優先的に行うことが増えてくると思います。この中でも投球動作の繰り返しによって起こる肘の痛みにはなるべく早く対応することが必要不可欠です。今回は肘の痛みと肘の靱帯手術であるトミー・ジョン手術についてご紹介したいと思います。

投球過多による肘の痛み



踏み込み足が接地し、肩が大きくしなったときに肘には大きな負担がかかりやすい。

 野球選手にとって、肩や肘の痛みを感じたことがないという選手のほうが少ないかもしれません。それほど野球ではよく見られるケガの一つと考えられるでしょう。肘の痛みは投球フォームによるものや、筋力や柔軟性をはじめとする個人の体力レベル、年齢、性別などさまざまな要因が複雑に関係して起こるものですが、かなり大きなウエートを占めるものの一つに投球過多(いわゆる投げすぎ)が挙げられます。

 肘関節は曲げ伸ばし(屈曲・伸展)動作と前腕のひねり(回内・回外)動作を行う部位ですが、他の関節に比べると小さな関節なので、繰り返しかかる物理的ストレスに弱い傾向がみられます。上半身に負担の少ない理想的な投球フォームの場合、通常は肩や肘を傷めることはまれですが、体力レベルを超えて投げ続けると構造的に弱い肘関節はやがて傷んでしまうことになります。痛みがある間はしっかりとケアを行って投球動作を休むようにしたいところですが、この状態で投げ続けるとやがて日常生活にまで支障が及ぶほど肘の痛みに悩まされることにもなります。

肘の靱帯に大きなストレスがかかるとき

 肘の痛みには成長期によくみられる離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)などをはじめとする骨の障害、肘関節周辺部に付着する筋肉や腱の炎症、そして骨と骨をつなぎとめている靱帯を損傷したことによるものなどが挙げられます。靱帯は関節が通常とはかけ離れた方向に動かないよう、つなぎとめる役割があるのですが、肘の内側にある靱帯(内側側副靱帯:ないそくそくふくじんたい)は投球動作によってつねに引き伸ばされる力が加わります。特に投球動作の中で踏み込み足(右投手の左足)が地面について、肩が大きくしなった状態(最大外旋時)に伸張ストレスが加わるため、肘の内側側副靱帯は引っ張られ、投球動作を繰り返すことによっていわゆる「靱帯が伸びた」状態をもたらします。

 靱帯が伸びた状態になってしまうと、骨と骨とをつなぎとめる機能が低下してグラグラと動揺性が増し、さらに投げ続けると部分断裂や、完全断裂などを起こすことがあります。肘の内側側副靱帯を傷めている場合、投げ始めから投げ終わりまで一貫して痛みが継続することや、ボールをリリースする瞬間に痛みを感じることなどがその特徴として挙げられます。

【次のページ】 肘の靱帯を再建するトミー・ジョン手術とは

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プロフィール

西村典子
西村 典子 トレーナー
  • ■ 生年月日:1970年12月5日
  • ■ 出身地:大阪府
  • 奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。野球用品メーカーにて勤務後、トレーナーとして10年以上にわたり高校野球・大学野球の現場にたずさわる。野球現場での活動を通して自分たちで自分の体をマネジメントする「セルフコンディショニング」の重要性を感じ、チーム・選手・指導者にむけてスポーツ傷害予防や応急処置、トレーニング(ストレングス&コンディショニング)に関する教育啓蒙活動を行っている。

    一般雑誌、専門誌、ネットなどでも取材・執筆活動中。また整形外科ドクターと野球の傷害予防に関する共同研究活動なども行っている(現在の研究テーマは手指血行障害について)。

    現在、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナーをはじめ、さまざまな高校野球部を担当中。
  • ・日本体育協会公認アスレティックトレーナー
    ・NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)
    ・NSCA公認パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
    ・日本スポーツ整形外科学会会員 等
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