ケガを長引かせないようにする
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
野球に限らずスポーツをしているとどうしてもケガをしてしまうことがあります。ケガを長引かせないようにするためには、ケガをしたときに早めに適切な対応をとることが大切となってきます。限られた時間の中で、なるべく早く競技復帰するためにはどのようなことに気をつければ良いでしょうか。
ケガの状態を正しく把握する
ケガをしていない部位を中心に患部外トレーニングを行うようにしよう
アクシデントによってケガをしたときは、応急処置としてのRICE処置を行った上で、病院を受診するか、しばらく経過観察を行うかを判断することになると思いますが、急性期のケガであれば受傷後2~3日をめどとして、状態が改善していくことが多いといわれています。
これ以上痛みや炎症反応が続いたり、どんどんと悪化したりする場合、骨折や脱臼など明らかな外傷が見られる場合はすみやかに病院を受診しましょう。病院では見た目だけでは判断しにくいものも、レントゲン撮影やエコー検査、場合によってはMRIやCT検査などによってケガの状態がわかるようになります。「ケガをした部位がどれほど傷んでいて、修復にはどのくらいの時間がかかるのか」「リハビリテーションはどのように進めていけばいいのか」といったことを専門家と相談しながら早期復帰を目指しましょう。
「やっていいこと」と「避けておくこと」を明確にする
病院で医師と話をするときには必ずメモ帳を持参するようにします。むずかしい医学用語はわからなくても、医師にこのケガの状態で「やっていいこと」と「避けておくこと」を確認することはそれほどむずかしいことではありません。足首を捻挫していても他の部位を鍛えてもいいのか、肘を痛めたときにランニングは行ってもいいのか、といった患部外トレーニングのできる範囲を確認し、できるところから行うようにしていきましょう。
ケガの状態が良くなっていざ競技復帰の段階となっても、ケガの期間中にあまり体を動かしていないと、全身の体力レベルは落ちてしまいます。ケガの部位に対するリハビリテーションとともに患部外トレーニングもしっかりと行うようにしましょう。
ケガの修復に必要な栄養素はとれていますか
欠食せずキチンと朝食をとることもケガを長引かせないコツ
時間の経過とともにケガをした部位も元の状態へと戻ろうとしますが、このときに適切な食事をとっているかどうかでも回復の程度に差が見られるようになります。「骨折をしたときにカルシウムをとる」ということを聞いたことがあるかもしれませんが、たとえば骨折であればカルシウムだけではなく、カルシウムを骨に定着させるために必要なタンパク質や他のミネラル分などをバランス良くとることが大切になってきます。
このようにケガをしたときは組織の修復に必要な栄養素が不足していないかを確認しましょう。まずは栄養バランスのとれた食事を心がけ、必要に応じてタンパク質などを多めにとるようにします。ケガをした状態で朝食を抜いてしまうと、必要なエネルギー源や栄養素も不足しがちになりますので「朝食を欠食しない」ことはケガを長引かせないために必要不可欠な習慣であることを理解しておきましょう。
睡眠不足はコンディション不良の元
もう一つ心がけてもらいたいことが十分な睡眠時間の確保です。睡眠不足におちいってしまうと傷ついた細胞修復に必要な成長ホルモンや、肉体的・精神的なストレスからの回復が遅れ、結果としてケガが長引いてしまうことにもつながります。また睡眠不足のまま生活をすることは集中力の欠如や体のもつ免疫力を下げ、風邪などの感染症にかかりやすくなったり、新たなケガをしてしまうリスクも高まります。夜遅くまでスマホをのぞきこんでいたり、テレビを見ていたりという生活習慣を改め、「寝ることももケガを長引かせないためのリハビリテーションである」と理解し、しっかりと睡眠をとるようにしましょう。
ケガが長引く要因はケガの程度だけではなく、さまざまな生活習慣によっても左右されます。できるだけ早く競技復帰するためにも、トレーニング・栄養・休養の3要素をしっかりとチェックした上で、リハビリテーションなどに取り組むようにしましょう。
【ケガを長引かせないようにする】
●ケガの状態を正しく把握することがまず大切
●「やっていいこと」と「避けておくこと」をしっかりメモしておこう
●患部外トレーニングは早期競技復帰に欠かせないものの一つ
●ケガをした組織を修復するために必要な栄養素をバランス良くとろう
●欠食はもってのほか。三食しっかり食べるようにする。
●睡眠不足もケガを長引かせる要因の一つ。寝ることも競技復帰には欠かせない。
(文=西村 典子)
次回コラム公開は10月31日を予定しております。