Column

夏に向けたスタミナ対策

2017.06.15

夏に向けたスタミナ対策 | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 春の公式戦が一段落したところで、これからは夏の大会に向けてどのチームも練習に励んでいることと思います。技術面はもちろんですが、体力面においては暑さに負けない体力づくりを行うことでスタミナ強化をはかり、試合時の体力消耗をなるべく少なくしてよりよいパフォーマンスが発揮できるようにしていきたいですね。今回は蒸し暑さが気になる梅雨時期と、これから夏に向けたスタミナ強化についてチームや個人で取り組めるものを紹介したいと思います。

暑さに身体を馴れさせる

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長袖のアンダーシャツを活用して発熱と体温調節のバランスをとろう

 これからは暑さによる熱中症に気をつけながら練習を行っていく必要があります。今から夏の暑さを想定して身体をなるべく暑さに馴れさせる工夫(=暑熱馴化:しょねつじゅんか)を実践していきましょう。運動を行うと体温は上昇しますが、身体は体温を下げようと発汗して熱を下げようとします。このシステムがより働きやすくするように、汗をかきやすくすることを心がけてみましょう。

 練習のときには長袖のアンダーシャツをうまく活用し、汗をかいたらこまめに着替えるようにすると発熱と体温調節のバランスを上手にとることができます。暑熱馴化のためにわざとウインドブレーカーを羽織って練習するチームもあるようですが、ウインドブレーカーという特性上、熱がこもりやすくなり、脱水症状や熱中症のリスクが高まることが想定されます。気温・天候などの外部環境や個人の基礎体力、睡眠不足や体調不良といったコンディションによっても適応能力が違ってきますので、こうしたことを理解した上で無理のないレベルにとどめておきましょう。

冷たいものを飲むとバテる?

「冷たいものを飲むとバテる」と言われたことがある選手もいるかもしれません。これは暑さに慣れるという意味でやたらと冷たいものを飲みすぎると身体が冷えてしまい、胃腸の働きも弱くなって結果的に食事が取れなくなり、体力ベースが落ちてしまったり、スタミナが落ちてしまったりしますよ、という意味であると考えられます。

 特に暑熱馴化対策としては、食事のときに飲む水を冷たいものではなく常温でとるようにするとか、冷たいものを一度にたくさん食べたり飲んだりすることは避ける(アイスクリームや氷を入れたジュースなど)といったことを意識して日常生活を送るようにすると暑さへの耐性が強化されます。水分補給は適宜行う必要がありますので、水分の温度にも気を配ってみましょう。

[page_break:インターバル走でスタミナ強化]

インターバル走でスタミナ強化

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中距離のランニングで夏の暑さに負けないスタミナをつけよう

 トレーニングには公式戦に体力的なピークをもってこれるように、時期的なものを考慮してトレーニングプログラムを組むことが理想的ですが、ランニングでもこうした「期分け」の原理を用いることでスタミナを強化することが出来ます。特にミドル走と呼ばれる中距離のランニングを、ランニングの強度とインターバル時間(休憩)を考慮しながらプログラムを組むようにするとよいでしょう。

 距離の目安としては筋肉内に乳酸がたまってくるポイントといわれる300m〜400m程度の距離を走り、走った時間に対して2倍を休息にあて(ラン:休息=1:2)、また走るといったインターバルトレーニングがオススメです。体力レベルの高い選手については休息時間を軽いジョギングに変更し、常に身体を動かしておくようにすると、身体を動かしながら心拍数を整えることになり、より心肺持久力の強化、スタミナ強化につながります。

 ランニングを行う場所としてはグランドや校舎周辺のコースなどが挙げられると思いますが、日陰のない場所で長時間走り続けると直射日光による体力的な消耗が激しいため、ときには木陰のあるロングコースやアップダウンのあるカントリーコースを選んで走ってみるようにしましょう。

 特にアップダウンのあるコースでは、上り坂では心拍数が上がって体温が上昇し、下り坂ではスピードを出し風を受けることで体温を下げることができるので、自然にスタミナ強化をはかることが出来ます。時には坂道ダッシュなどを行い、距離ではなくパワーを意識したランニングにすることで大会に向けたパワー養成も行うことができます。

暑さに負けない体づくりに欠かせないタンパク質

 熱中症対策といえば水分補給・塩分補給はよく指摘されているところですが、あわせて摂りたい栄養素としてはタンパク質が挙げられます。アスリートの皆さんは普段から体づくりのためにタンパク質を意識した食事をとっていると思いますが、熱中症対策としてもタンパク質は重要な働きがあると言われています。

 身体に必要量のタンパク質があるときは、体内の水分量も適切に保たれて必要なときにキチンと発汗し、皮膚からの熱放散がうまく働く一方で、タンパク質が不足してしまうとこうした機能が低下して身体に熱がこもりやすくなってしまうことが指摘されています。またタンパク質とともに身体の調整機能をうまく働かせるためのビタミン・ミネラル分もあわせてとる必要があります。タンパク質を多く含む食材(肉・魚・卵・大豆類・乳製品など)をおさらいし、食事の中にタンパク質が含まれているかどうか、バランスのよい食事がとれているかどうかを常に意識するようにしましょう。

 これからの時期は暑さに馴れることとスタミナ強化のためのコンディショニングに最適なシーズンです。チームや個人でも取り入れられるものが多いと思いますので、ぜひ出来ることから実践してみてくださいね。

【夏に向けたスタミナ対策】
●暑さに馴れさせるためのコンディショニングを暑熱馴化(しょねつじゅんか)と呼ぶ
●長袖のアンダーシャツを活用して発汗をうながし、体温調節機能を高めよう
●冷たいものの食べすぎ、飲みすぎには注意して常温のものや温かいものなども選んでみよう
●中距離(ミドル)走と休息のバランスを組み合わせて、ランニングでスタミナ強化をはかろう
●熱中症対策としてタンパク質の摂取も忘れずに行おう

(文=西村 典子

次回コラム公開は7月1日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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