Column

野球に必要なバランス能力を考える

2016.09.29

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 秋季大会を終えたチームにとっては対外試合が出来なくなる12月まで、さまざまな実践練習や試合などを繰り返しながら技術のレベルアップに努めていることと思います。またこれと並行して体力強化も行い、ケガの予防やパフォーマンスの向上をフィジカル面から支えていくことが大切です。さて今回は体力要素の一つであるバランス能力についてお話をしたいと思います。

野球に必要なバランス能力

 野球を行う上でバランス能力が大切であることはよく知られていますが、なぜ必要なのでしょうか。体力要素の一つとして他の要素と並行して強化することはもちろんですが、投球動作やスイング動作においてバランスが崩れてしまうと、投球動作であればボールリリースがばらついてコントロールが悪くなってしまう、スイング動作であれば、バットに当てる(ミートする)ことを念頭に置いてスイングしたつもりが、ボールをとらえきれずに凡打する、といったことが考えられます。

 野球の動作は地面に足をついた状態から始まりますので(空中に足が浮いているのはジャンピングスロー、ジャンピングキャッチ等)、地に足をつけた状態でいかに安定した状態を保てるか、特に投手であれば軸足に体重を乗せてバランスよく立った状態を保てるかといったことが、バランス能力の指標になると思います。またマウンドでは傾斜があり、球場によってその傾斜は微妙に違ってきます。

 よくマウンドと自分の投球動作が合わずに苦労する投手を見かけますが、これもバランス能力を高めることで改善することが期待できます(もちろん筋力や筋持久力など他の体力要素も影響する)。安定した地面の上で身体を保つだけではなく、不安定なサーフェス(表面)においてもぶれないバランス能力が求められます。

バランス能力を確認する方法

その場足踏みを50回行ったところ、最初の位置からは前方へ移動してしまった

 自分のバランス能力を簡単にチェックする方法としては、その場で足踏み運動を行うことなどが挙げられます。まず自分の立ち位置を把握し(印をつける、ライン上に立つ等)、そこから目を閉じてその場で30秒、もしくは50回程度足踏みを行います。その後、目を開けて自分の現在立っている位置を確認してみましょう。思ったよりも移動しているケースが多く、その移動距離が多ければ多いほどバランス感覚を修正する必要があるといえるでしょう。

 特に頭の位置が前側に傾いていると前方へ移動しやすくなります。スマホやパソコンなどの使用が日常的な人は、頭の位置が前側に傾いていることが多く、重心が前方へと移動しやすい傾向にありますのでチェックしてみましょう。

 また起床時に壁際で片足閉眼立ちを行うことも一つの方法です。寝起きですので転倒に注意しながら、目を閉じて片足で何秒間キープできるかをチェックします。これを毎日記録していると、フィジカル面での調子の善し悪しや、バランス能力の状態などを把握することができ、パフォーマンスとの関連性を確認するよい指標となるでしょう。

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[page_break:足裏の機能を良くする / トレーニングで姿勢をチェックする]

足裏の機能を良くする

砂浜トレーニングはバランス能力を高めるために有効的。表面の安全が確認出来れば、素足が望ましい。

 バランス能力を高めるためには、足裏のどこに体重をかけるとバランスよく立てるのかということを身体で覚える必要があります。たとえば投手が軸足のみで身体を支えるときに、足裏全体に体重がかからず外側にかかってしまうと投球フォームを崩す原因ともなるからです。足裏の面積は非常に小さいものですので、なるべく大きな面積で身体を支えられるように足裏全体で立ち、その体重支持ポイントを探してみましょう。

 足裏の感覚をよくするために日頃から足指を意識して使えるように5本指ソックスを使用したり、素足で歩いたりすることなどもよいでしょう(ただし素足で歩く場合は表面の安全を確認してから行います)。100円ショップなどで手に入る青竹踏みを利用したり、砂浜でのトレーニングを行ったりすることも足裏全体の感覚を刺激し、バランス能力向上につながります。

トレーニングで姿勢をチェックする

 また日頃から行っているトレーニングでも姿勢をチェックし、バランスを修正する能力を高めることが可能です。鏡などがあれば全身を確認出来る状態でフロントランジやスクワットなどを行ってみましょう。特にバーベルを使用すると、傾きが目に見えてわかりやすいため、バランスを崩した状態を確認しやすくなります。トレーニングで筋力を鍛えるのと並行してバランス能力を確認し、修正していくようにすると身体の使い方も変わってくることが期待できます。

●野球は地面に足をつけた状態でプレーすることが多いため、両足・片足のバランス能力は必要不可欠
●安定した地面だけではなく傾斜のある場所でもバランスを保つようにしたい
●その場での足踏みや片足閉眼立ちなどはバランス能力の評価に役立つ
●足裏の面積は身体全体に比べて非常に小さいため、足裏全体を使うことが重要
●足指をよく使う、裸足で歩くなど足裏の感覚を刺激しよう
●トレーニングでは鏡や他の選手のアドバイスを受けながら身体の傾きを修正しよう

(文=西村 典子

次回コラム公開は10月15日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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