時短のウォームアップを考える
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。
早いものでもうすぐ新学期が始まりますね。今までの在校生は学年が一つ上がり、新入生は新しい環境での高校野球生活のスタートです。休み期間中は日中に練習を行うことが出来ましたが、新学期が始まると夕方に全体練習を行うところがほとんどではないでしょうか。さてこのような限られた時間を有効的に使うためのウォームアップの工夫について考えてみたいと思います。
ウォームアップの時間がもったいない?
全体でのウォーミングアップ時間はなるべく短く?
夕方からの練習では暗くなるまで屋外での練習、その後は室内等で練習というスケジュールを組むところが多いのではないでしょうか。明るい時間帯は3時間程度になることが多く、「練習時間が短いと、ウォームアップにかける時間がもったいない」と嘆く指導者の声を聞くこともしばしば。しかしウォームアップをおざなりにしてしまうと、当然ケガをするリスクは高まってしまいます。アスレティックトレーナーの立場としては、やはり短時間でもいいので練習前のウォームアップは取り入れたいところです。そこでチーム全体でのウォームアップ時間をなるべく短縮するための工夫について考えてみました。
練習開始までに個人で出来ること
チームでのウォームアップ時間が短くなるということは、個人でのウォームアップを十分に行わなければならないということ。体を温めて筋肉をほぐし、野球を行うための準備を行います。練習前に軽く補食をとることはエネルギー源を確保するという意味でも非常に大切ですが、実は何かを食べるという行為そのものが体を温めることにもつながります。特に体を温める性質のある食べ物を選んで食べるようにすると、よりウォームアップ効果が期待できるでしょう。また飲み物も練習前は温かいものを選んで飲むようにします。中でも紅茶は体を温める作用があり、自動販売機などで手軽に購入できるのでオススメ。同じく体を温める作用を持つしょうがの入ったしょうが紅茶は、短いウォームアップ時間の中でも体をしっかりと中から温めることができるでしょう。
ジャンプ動作は心拍数を上げる
軽いジャンプ動作を繰り返すだけでも心拍数は高くなります。この状態が続くと体が温まり汗ばんでくるようになります。この状態を手軽に行えるものとしては縄跳びがあげられます。縄跳びジャンプを行う前には軽く足首を回しておくようにしましょう。体の末端をしっかりと動かすようにすると血流がよくなり、ウォームアップ効果が見込めます。最近ではエア縄跳びといって、縄なしで縄跳びのようにジャンプを繰り返すだけでも同じような運動効果が得られるといわれています。時間も数分間でかなり汗ばむほどになりますので、ウォームアップの時短に役立つのではないでしょうか。
このほかにもミニハードルなどを使ってジャンプを繰り返すことでも心拍数を上げることができます。ただし足首の捻挫などケガをしないためには、足首周りのストレッチ、柔軟性などを確保した状態で行うようにしましょう。
ペアで行うミラードリル
全体練習前に各自がコンディショニングの意識を持とう
私がよく行うウォームアップドリルとしては、二人でペアになって行うミラードリルがあげられます。文字通り鏡(ミラー)のように相手と同じ動作を行うという単純なドリルですが、いろいろな動きが入るため楽しく、かつ、よいウォームアップになります。まず先攻・後攻を決め、先攻の選手は自分が思うように左右や上下、前後などの動きを行います。後攻の選手は、相手の動きを見てすぐに同じ動作を行います。左右への動きでは切り返しが必要とされますし、ジャンプや地面にタッチするといった上下運動は体の位置が変わるため、意外と運動量が多くなります。
時間は30秒で攻守交代をし、相手を変えながら数セット行うと、かなり息が上がって体も温まってきます。敏捷性を高めるドリルとしてもオススメです。ただし足首や膝などに負担をかけやすいため、あらかじめ足首を入念に回したり、下肢を中心としたストレッチを十分行った上で取り組むようにしましょう。
ウォームアップの大切さはわかっているものの、練習時間が短いためなるべく短時間ですませたいという事情も理解できるところです。なるべく短時間でウォームアップ効果が期待できるものをいくつかご紹介しましたので、個人で出来るもの、チームで出来るものなどそれぞれの現場に応じて取り入れてみてくださいね。
【時短のウォームアップを考える】
●授業が始まると夕方から全体練習を行うことが多く、練習時間が短い
●ウォームアップにかける時間はなるべく短く、技術練習は長く行いたいという本音
●練習前の補食はエネルギー源を確保するだけではなく、体の中から温める効果もあり
●しょうが紅茶は時短ウォームアップの救世主
●心拍数を上げるジャンプ(縄跳びやミニハードルなど)を取り入れる
●ペアで行うミラードリルは敏捷性を養い、かつウォームアップ効果も高い
(文=西村 典子)
次回コラム公開は4月15日を予定しております。
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