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【第97回選手権大会】激闘あり、快進撃あり、スーパープレーありの第97回大会を振り返る

2015.08.21

 激闘となった甲子園決勝は東海大相模が10対6で仙台育英を破り、45年ぶり2度目の優勝を決めた。ベストゲーム、スーパープレーが多かった今大会を振り返る。

昨秋の県大会準決勝敗退から始まった東海大相模の粘り強さ


45年ぶりの優勝を決めた東海大相模

 優勝を決めた東海大相模は最後までアグレッシブベースボールを実践。2011年選抜大会優勝した時のチームよりも投手、野手のレベルが格段に高まり、まさに最強と呼べるチームであった。何よりも小笠原 慎之介吉田 凌の2枚看板が大きかった。真夏の甲子園、全て1人で投げ切るのは容易なことではない。2人をうまくリレーしながら投げたからこそ、決勝戦で小笠原が完投できたのだろう。

 絶対的な二枚看板だが、これまでの戦いを振り返ると、完封勝ちが1勝もない。吉田も、小笠原も先発した試合ではいずれも失点をしている。
彼らは伸び悩んでいるわけではなく、春季大会に比べれば間違いなくレベルアップをした投球を見せている。

 しかし各校もこの2人を打ち崩すために速球対策をしている様子が見てとれ、打撃レベルが高まっていた。それでも余計な失点をせず、最少失点にとどめたのは2人の投球術が上回っていたからといえるだろう。そして打線も、2人に頼らずしっかりと盛り立てる攻撃を見せた。甲子園の5試合はすべて先制しており、1番千野 啓二郎、3番杉崎 成輝、4番豊田 寛、5番磯網 栄登、6番長倉 蓮など勝負強い打者が揃った。

 また、速攻劇で各校を圧倒した攻撃、また果敢に次の塁を奪う積極的な走塁姿勢も見せ、相手の戦意を喪失させるものがあった。守備も内外野ともに隙がない。試合展開を見ると、準々決勝花咲徳栄戦では、終盤までリードを許し、決勝戦も一度は同点に追いついかれるという試合展開であった。そういった苦しい状況の中でも力を出せる彼らの戦いぶりを見ると、昨秋の神奈川県大会準決勝平塚学園戦のサヨナラ負けが一つのターニングポイントになったのかもしれない。選抜選考に大きく関わる関東大会。県大会決勝まで進出すれば、その関東大会への出場が決まるという試合を落とし、選抜出場も逃した。

 その悔しさがさらに「勝負強い選手になりたい」と決心させたのではないだろうか。今夏は激戦の神奈川大会を勝ち抜き、大会前から優勝候補に挙げられていたが、勝って当然というプレッシャーの中、掴んだ優勝は見事だった。さらに注目が集まる秋の戦いぶりも注目していきたい。


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[page_break:ハイレベルなチームとなった仙台育英 / 関東勢の活躍が目立った今大会]

ハイレベルなチームとなった仙台育英

決勝に導いた佐藤 世那(仙台育英)

 敗れた仙台育英1回戦明豊戦では12得点をあげて大勝したように、活発な打線で勝ち上がった。また2回戦滝川第二戦ではいきなり盗塁阻止、続く3回戦花巻東戦でも盗塁を阻止した。準決勝早稲田実業戦では二塁牽制で走者を刺し、3併殺と堅い守備が際立った。また2番の青木 玲磨が今大会4盗塁を決めるなど機動力を絡めた攻撃も展開。走攻守でハイレベルなチームであった。

 仙台育英だけではなく、今大会東北勢は2チームが8強、さらに2チームがベスト16入りと強さが際立った大会であった。思えば春季東北大会を振り返れば、仙台育英は初戦で盛岡大附に5対8で敗れた。甲子園出場はできなかったものの、優勝した青森山田、準優勝の八戸学院光星ベスト4一関学院など今年の東北勢はレベルが高かった。今のような高いレベルでひしめきあう状況が続けば、東北勢優勝は近い将来叶うはずだ。

関東勢の活躍が目立った今大会

甲子園を沸かせたオコエ 瑠偉(関東一)

 今年の関東勢の勝ち上がりが目立った。関東一早稲田実業花咲徳栄東海大相模の4校がベスト8以上。さらには健大高崎東海大甲府作新学院もベスト16以上と関東勢が健闘を見せた。それでも、他の地区のレベルが下回ったわけではない。東北勢も、準優勝の仙台育英をはじめベスト8に多く勝ち残るなど、活躍を残した。
ちなみに、2014年覇者大阪桐蔭で、昨年の選抜決勝龍谷大平安vs履正社と近畿勢同士の対決となったことから、年によって地区ごとの勝率の変化は見られるが、近年の優勝校の地域を見るとある傾向が分かる。

 2013年覇者前橋育英2012年覇者大阪桐蔭2011年覇者日大三と、奇数年は関東勢が強く、偶数年は近畿勢が強い。

 もちろん、そうはさせまいと他地区も黙っていないだろう。近年勢いがある北海道、東北、北信越、九州。そして4校すべて初戦敗退に終わった四国勢や5県で2勝しか挙げられなかった中国勢の躍進にも期待したい。


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[page_break:甲子園100周年にゆかりある早稲田実業、鳥羽の躍進]

甲子園100周年にゆかりある早稲田実業、鳥羽の躍進

中心打者としてチームを牽引した清宮 幸太郎(早稲田実業)

 今年は甲子園100周年ということで、それにちなんだ学校が大いに注目されたシーズンであった。第1回大会出場校の早稲田実業、京都鳥羽が甲子園に出場したが、この2チームは一戦一戦勝ち進むごとに成長を見せた。早稲田実業西東京大会序盤は厳しい戦いが多く、勝ち進むのは厳しいとの見方をする方が多かった。だが準々決勝八王子を破り、準決勝日大三を完封。そして決勝戦でも東海大菅生に大逆転勝利を収めたところから、チームとして変わってきた。甲子園でも、投打の総合力の高さならば全国クラスの東海大甲府を破り(試合レポート)、さらに準々決勝九州国際大付も一発攻勢で圧倒する。改めて、高校生の成長に無限の可能性を感じさせられたチームであった。

 京都鳥羽は京都大会ではノーシードからのスタート。それでも強豪を次々と破って甲子園出場を決めた。1回戦岡山学芸館2回戦では津商を破り、3回戦興南戦でも接戦を演じた。今年は個性あふれる選手が目立ったが、京都鳥羽は個人技で勝負するチームではなく、チームとしてのまとまりで勝負。京都鳥羽は「無理に背伸びすることなく、身の丈に合った野球をする」ということを常々語っていた。

 全国的に見ると、京都鳥羽のようなまとまりで勝負するチームが多数だ。そのようなチームが全国の舞台で勝ち進むというのは魅力があり、多くの学校の励みになる。常に自分の野球スタイルを貫いて積み重ねていったことが、今回の躍進につながったといえよう。
 

 今年の甲子園大会は、ベストゲームあり、スーパープレーあり、スター選手の登場ありと甲子園100周年に相応しい大会であった。地方大会で見てきた選手が、良い意味で予測以上のパフォーマンスを見せ、改めて甲子園の舞台が選手の潜在能力を引き出しているのかもしれないと感じた。
そして来春の選抜、来夏の選手権へ向けて1、2年生は動き出し、すでに秋季大会も行われている。来年もぜひ見応えある大会となることを期待したい。 

(文・河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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