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【第97回香川大会展望】強豪ブロックに立ち向かう秋春四国王者・英明 ノーシード勢にもチャンスあり

2015.07.10

 6月30日(火)に昨年と同じく40校が参加し、香川県高松市の朝日新聞社高松総局で組み合わせ抽選会がおこなわれた「第97回全国高等学校野球選手権香川大会」。連続四国大会優勝の第1シード・英明が強豪ブロックに入ったことにより、風雲急を告げる展開となりつつある[stadium]レクザムスタジアム[/stadium](香川県高松市)での熱き戦いの展望と「高校野球ドットコム」ならではの他にはない直前情報を、シード校ブロック別に追っていきたい。

第1シード・英明ブロック

田中 寛大(英明)

 10校中、甲子園出場経験校が5校。加えて昨年準優勝の大手前高松や、定年退職に伴い今年「最後の夏」を迎える知将・搆口 秀敏監督率いる坂出もこのブロック。連続四国大会優勝の圧倒的な実績から抽選会前は大本命視されていた第1シード・英明だが、4年ぶり夏の甲子園への道のりは非常に厳しくなった。

 それでも英明のタレントは他を圧倒している。投手陣は制球力を高める田中 寛大(176センチ78キロ・高松市立古高松中出身)(インタビュー【前編】【後編】春季四国大会で存在感を示した中西 幸汰(168センチ64キロ・高松市立香川第一中出身)の3年生左腕2枚看板が健在。1番・酒井 勇志(3年・中堅手・171センチ68キロ・多度津町立多度津中出身)から始まり、春季四国大会7打数7安打の橋本 駿輔(3年・二塁手・167センチ64キロ・右投右打・浜寺ボーイズ<大阪>出身)、森山 海暉(3年・遊撃手・167センチ64キロ・三木町立三木中出身)、上原 慧(3年・右翼手・172センチ68キロ・高松市立古高松中出身)と続く上位打線も強力である。

 ただ「12人目以降」の戦力強化は果たせていない現状に、最近の練習試合では首を傾げるシーンも多い香川 智彦監督。最大の敵「満足感」をセンバツ直後のような「飢餓感」に変えられるかが、彼らが名実共に「無敵艦隊」の称号を得るポイントとなりそうだ。

 一方、打倒英明を掲げるチームたちも準備に余念はない。初戦で対戦する高松西は投打の大黒柱・岡 遼世(3年・投手・174センチ75キロ・右投右打・高松市立紫雲中出身)を中心としたバランスのよいチーム。「奪・進塁」を掲げる大手前高松は練習試合を通じ、最速146キロ右腕・香川 瑞貴(3年・181センチ76キロ・右投右打・高松市立紫雲中出身)を含めた継投策など、想定しうる全てのケースを試している。

 ここには好カードも2つ。大会初日に組まれた坂出vs尽誠学園と、7日目に組まれた香川西vs丸亀である。

 坂出vs尽誠学園は、独創的なフォームから最速140キロのストレートを中心に威力あるボールで押す左腕・鍋島 巧(3年・174センチ71キロ・宇多津町立宇多津中出身)と、1番としても中田 翔2009年インタビュー2014年インタビューばりのノーステップ打法から強いスイングを見せる香川 大典(3年・捕手・179センチ78キロ・右投右打・丸亀市立南中出身)が組む坂出バッテリーに対し、昨年10月より14年ぶりに監督へ復帰した松井 義輝監督の下、1年春四国大会優勝投手のエース・新納 豊(3年・181センチ68キロ・右投右打・生駒ボーイズ<奈良>出身)の回復急な尽誠学園が8年ぶりの栄冠への意思をいかに出せるかが焦点。

 そして6月29日に来年4月1日から「四国学院大香川西」への校名変更が発表された香川西は現校名で挑む最後の夏。辻林 滉稀(3年主将・中堅手・右投右打・172センチ66キロ・大阪狭山ボーイズ<大阪府>出身)や西井 一貴(3年・右翼手・右投左打・168センチ62キロ・交野シニア<大阪府>出身)などの俊足選手を軸に、まずは軟投派サイド・小早川 翔(3年・投手・175センチ69キロ・高松市立国分寺中出身)などを擁し、攻守に粘り強く戦う一昨年王者・丸亀を下して3年ぶりの甲子園へ近づきたい。

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[page_break:シード校・三本松ブロック / 第2シード・丸亀城西ゾーン]

シード校・三本松ブロック

三好 大倫(三本松)

 組み合わせ抽選会冒頭に行われた春季県大会準優勝・高松南とのゾーン抽選の結果、英明ブロックの側に入った春季県大会3位の三本松。最速144キロ・高校通算26本塁打(6月末現在)と投打に高い能力を発揮するNPB注目左腕・三好 大倫(3年・投手・左投左打・178センチ78キロ・東かがわ市立白鳥中出身)の4番、三好の前を打つ横井 智史(3年・遊撃手・右投右打・175センチ72キロ・東かがわ市立大川中出身)を周囲がいかに援護できるかが、センバツを含めれば10年ぶりの甲子園・22年ぶりの香川大会制覇への扉を開くかぎとなる。

 しかし、このブロックも強者たちがそろっている。香川中央は主将・4番の強肩・居石 耕二郎(3年・178センチ68キロ・右投右打・高松市立太田中出身) を扇の要に据えた好チーム。高松中央は最速140キロ右腕・森崎 友星(3年・右投右打・173センチ64キロ・綾川町立綾南中出身)、自在のバットコントロールで魅せる3番・横畠 拓斗(3年・中堅手・172センチ62キロ・左投左打・高松市立玉藻中出身)などが飛躍の可能性を大いに秘め、津田も練習試合では最速143キロ右腕・片山 雅斗(3年)擁する阿南工(徳島)に勝利するなど、例年とは一味もふた味も違う集団に仕上がっている。

 そしてここにきて優勝候補の一角を占める勢いなのが、6年ぶり2度目の甲子園を狙う藤井学園寒川である。181センチ81キロの左腕・高田 篤志(3年・北播リトルシニア<兵庫県>出身)が最速136キロに到達すれば、191センチ90キロの超大型右腕・杉本 大樹(3年・右投右打・香川ベースボールアカデミー<硬式>出身)は春季大会後の練習試合で最速140キロをマーク。下級生時から潜在能力の高さは折り紙つきだった両名がいよいよ覚醒の時を迎えたことで、このブロックの行方は一気に混沌としたものとなってきた。

第2シード・丸亀城西ゾーン

山上 代貴(丸亀城西)

 春の県大会は変則サイド・山上 代貴(3年・右投右打・172センチ65キロ・丸亀市立南中出身)の力投で9年ぶり6度目の優勝を果たした丸亀城西

 英明との四国大会順位決定戦と新田(愛媛)と対戦した四国大会ではやや精彩を欠いたが、6月14日(日)に履正社(大阪)と対戦した県高野連招待試合では2対3の9回表、打のムードメーカーである3番・森 涼矢(3年・遊撃手・174センチ67キロ・右投左打・三豊市立仁尾中出身)が昨年のセンバツ準優勝に大きく貢献した溝田 悠人から逆転打を放ち、5対3で鮮やかな逆転勝ち。大きな自信を持って10年ぶり5度目の夏・甲子園出場へ踏み出すことになる。

 ただ、丸亀城西の初戦は超難関。昨秋県大会準優勝の観音寺中央である。最速138キロ右腕・藤井 亮(3年・180センチ77キロ・右投右打・丸亀市立綾歌中出身)をけがで欠いたこそ初戦敗退に終わっているが、藤井もすでに復帰。試合当日までに完調に近い状態まで戻せたならば、丸亀城西打線も相当手を焼きそうだ。

 加えて、ディフェンディングチャンピオンの坂出商観音寺中央同様、はけがで登板なし。チームも初戦敗退に終わったエース・桒嶋 流星(3年・179センチ71キロ・右投右打・東かがわ市立白鳥中出身)が復活急な志度もこのブロックには控える。志度は主将の1番・冨田 将孝(3年・左翼手・173センチ60キロ・右投左打・東かがわ市立大川中出身)が引き当てた「開会式選手宣誓」の栄誉を「30年ぶり古豪復活」の栄誉に結び付けたい。

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[page_break:シード・高松南ブロック]

シード・高松南ブロック

後藤 聡太(高松南)

 春季県大会以降、力を伸ばしているチームが軒並みこのブロックに入った。県大会準優勝の勢いをそのままに、県高野連招待野球で履正社(大阪)に12対1と圧勝した高松南を筆頭に、日に日に投打がかみ合っている高松商、ポテンシャルの高さが光る高松東や藤井学園藤井。チーム一丸の戦いに定評がある一昨年秋四国大会出場の高松一昨夏ベスト4の高松桜井。さらに「ボトムアップ方式」で個と組織の引き出しを同時に広げる小豆島。「高校野球100年」の今年」、第1回四国代表の座を射止めた高松もこのブロックだ。

 高松南後藤 聡太(3年・170センチ62キロ・右投右打・高松市立香川第一中出身)の魔球カットボールと強肩・湊谷 玲和(3年・178センチ79キロ・右投右打・高松市立香東中出身)のバッテリーから、攻撃につなげるパターンが確立していることが強み。

 一方、19年ぶりの甲子園出場へ燃える高松商は、4番・山本 一輝(3年・一塁手・右投左打・173センチ76キロ・綾川町立綾南中出身)が俊足ランナーたちを確実に還し、最速138キロ前後を出せる右投手2枚、鵜川 直哉(3年・右投左打・176センチ66キロ・高松市立香東中出身)・浦 大輝(2年・右投右打・179センチ78キロ・香川県立高松北中出身)も力を持つ。関係者からは「優勝本命」の声も聞こえるほどである。

 藤井学園藤井の注目選手は、3番起用が予想される森池 大地(3年・三塁手・右投左打・丸亀市立東中出身)だ。166センチ81キロの豆タンク体型から、7月までにはなった高校通算本塁打は実に26本。インパクトまでのスイングスピードの速さは一見の価値ありである。

 他にも最速140キロ右腕・岸下 楓雅(3年・右投右打・186センチ88キロ・高松市立一宮中出身)ら、スケールの大きな選手たちがグラウンド上を駆ける高松東も面白い存在。4番・エースの大野 夏都(3年・右投右打・183センチ83キロ・高松市立木太中出身)など、スタメン3人が四国大会経験者である高松一との1回戦は最後まで目が離せない展開となるだろう。

 と、ここまで香川大会の展望を記してきたが、実はもう1つ展望の要素であり、最も全国に誇れることがある。それは応援席の生徒たちとグラウンドとの「一体感」。

 香川県内では尽誠学園丸亀坂出商小豆島高松北高松工芸高松高松西香川中央藤井学園寒川の10校で応援団・応援部が常設で活動。「香川県高等学校応援連盟」という統括団体も昨年4月に発足し、一昨年からは「応援フェスティバル」が毎年2月に開催されている。

 また、他校も数多くが夏に向けて運動部や生徒会を中心に応援団を結成。[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]の内野席はさながら甲子園アルプススタンドや[stadium]神宮球場[/stadium]学生応援席のような盛り上がりで、仲間たちを後押しする。そこにグラウンドの選手たちが呼応することで、好プレーや接戦が自然と生まれる。香川大会では現在、5年連続でノーシード校が甲子園出場を果たしているが、その一因に「一体感」があることはもはや否定できない現象だ。

 では、今年も始まる「一体感」の集いで生まれるものとは?[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]だけが、その結末を知っている。

(文・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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