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【第97回徳島大会展望】史上2度目の「4連覇」目指す鳴門に シード校・ノーシード入り乱れ激戦必至

2015.07.07

 6月29日(月)徳島県徳島市の「徳島県教育会館」で組み合わせ抽選会がおこなわれた「第97回全国高等学校野球選手権徳島大会」。1997~2000年に4連覇を達成した徳島商(今回は第4シード)以来、史上2度目の偉業に挑む第3シード・鳴門をはじめ、昨年と変わらず31校によって争われる激戦の展望と「高校野球ドットコム」ならでは詳細情報を、シード校のブロック別に追っていきたい。

第1シード・城南ブロック

林 大嘉(城南)

 昨秋21世紀枠での甲子園初出場につなげた4年前以来2度目の県大会を制した徳島城南。はエース・林 大嘉(3年・右投右打・170センチ70キロ・小松島市立小松島中出身)の故障が響き準々決勝で鳴門渦潮に大敗したが、の貯金を利して他チームより1試合消化数が少ない第1シードの座を手に。初戦は7月19日。勝てば22日と25日の準決勝・26日の決勝までの日程に余裕があることも有利に働くことだろう。
「けが人が多かったので、試合が後ろにいった方が助かる」と話すのは4月より徳島北より転任・母校を率いる島 一輝監督。復帰後は順調にマウンドを重ね、ストレートも最速139キロまで伸ばしている林や、一塁駆け抜け4秒を切るなど、スピードスターの名にふさわしい溌剌さが持ち味のリードオフマン・森山 翔太(二塁手・右投左打・170センチ68キロ・徳島中央リトルシニア出身)をはじめ、各人がストロングポイントを理解していることは大きな強み。島監督が徳島北監督時代に強みとしていた「走塁」がうまく融合できれば、初の夏甲子園出場への視界が一気に開ける。

 ただ、このブロックには春に徳島城南を破り春の県大会ベスト4、そして誰よりも徳島城南のことを知る森 恭仁監督が4月から赴任した鳴門渦潮がいる。今年2月から講師として赴任。かつて日本ハムファイターズの黄金期を支えた花増 幸二コーチのサポートにより、大型右翼手として覚醒の時を迎えつつある1番・中村 敦哉(3年・右投左打・181センチ80キロ・徳島ホークス<ヤングリーグ>出身)をはじめ、全ての選手、全てのプレーに鋭さが増した。

 その鳴門渦潮と初戦で激突するのは、春の県大会準優勝・最速139キロ右腕・笠井 康平(3年・178センチ80キロ・右投右打・徳島市立川内中出身)をエース・4番に擁する徳島城北。開会式での選手宣誓も決まった松本 朋也(3年主将・一塁手・170センチ68キロ・徳島市立八万中出身)をはじめ、笠井を固める選手たちも確実に芯を捉える打線も強力だ。7月13日(月)14時半から[stadium]オロナミンC球場[/stadium]で始まる戦いは、四国4県を見渡しても屈指の好カードと言っても過言ではない。

 さらに1992年センバツでこの夏で勇退する渡辺 元智監督率いる横浜(神奈川)を大逆転で打ち破った新野には4月より当時の指揮官だった中山 寿人監督が19年ぶりに復帰。6月の総体協賛ブロック大会では最速130キロを超える2年生左腕・任介 澪志(170センチ60キロ・阿南市立阿南中出身)を軸に富岡西阿南高専阿南工を破って優勝を果たすなど、早くも「中山効果」が現れつつある。2年生を中心に着々と力を付けているとの初戦を勝ち抜ければ、徳島城南にとっても侮れない相手となるだろう。

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第4シード・徳島商ゾーン

 昨秋県大会初戦敗退から一転、春季県大会を10年ぶりに制し第4シードに滑り込んだ徳島商であるが、初戦から胸突き八丁の戦いを強いられそうだ。

 徳島商は守備面では右サイドハンドの育田 佑輝(3年・右投右打・176センチ75キロ・鳴門市第二中出身)、新チームから捕手に転向した強肩堅守の河村 祐希(3年・右投右打・170センチ62キロ・徳島ホークス<ヤングリーグ>出身)のバッテリー。打者では広角に安打を放つ4番・齋藤 広夢(2年・右翼手・右投左打・178センチ73キロ・徳島淞南<ヤングリーグ>出身)や、ベースランニング一周14秒02と高校野球界トップクラスのスピードを持つ平野 善常(3年・中堅手・176センチ65キロ・牟岐町立牟岐中出身)などタレントぞろい。
さらにこの夏、森影 浩明監督は正二塁手に一塁駆け抜け4.3秒を切る俊足1年生・武田 翔太(166センチ58キロ・右投右打・阿南市立阿南中出身)を抜擢。選手たちの奮起を力に変えて4年ぶりの甲子園出場を狙う。

 とはいえ、徳島商の初戦は徳島北。昨年からの主戦投手である尾崎 修志(3年・181センチ65キロ・右投右打・徳島市立徳島中出身)、縦の変化球が切れる武岡 恭兵(3年・183センチ75キロ・右投両打・徳島市立城東中出身)の大型右腕2枚が控え、スタメンも9人中5人が180センチ以上という「超大型チーム」の力はシード校と伍しても決してそん色ない。

 同ブロックには最速143キロ、無念の体調不良欠場となった春の県大会以後、最後の夏に100%を出し切るプロセスを踏んできた片山 雅斗(3年・181センチ73キロ・右投右打・阿南市立加茂谷中出身)がエースナンバーを背負う阿南工も。は片山をはじめ主力を欠く状況でも8強に進んだ(試合レポート)粘りを大舞台でも再現したいところだ。

 加えて徳島池田、川島穴吹を下し6月の総体協賛西部ブロック大会を制した阿波や、この数年で急激に力を伸ばしている名西なども、上位進出を狙える存在だ。

第2シード・川島ゾーン

宮本 誠士(川島)

 昨夏は徳島城東との延長13回激闘の末、無念の初戦敗退に終わった第2シードの川島。先輩たちの夏を終わらせてしまった悔恨を少しでも返すべく、エース左腕・宮本 誠士(178センチ78キロ・美馬市立三島中出身)、50メートル走6秒2の3番・大堀 雄平(遊撃手・右投左打・182センチ80キロ・吉野川市立川島中出身)、高校通算10本塁打の4番・郷田 龍樹(一塁手・右投右打・173センチ88キロ・吉野川市立川島中出身)など3年生が中心となってひたむきに取り組んだ結果が、昨秋県大会準優勝・四国大会1勝の原動力となった(試合レポート)。

 それから1年。くしくも徳島城東との再戦となった初戦で、彼らがこれまでの積み上げをいかに表現できるか。一方、走塁のストロングポイントはそのままに「守備を中心に行った冬のテーマトレーニングを経て、力がないなりに戦えるようになった」(鎌田 啓幸監督)
徳島城東がいかに対応できるか注目したい。

 その他にも徳島城北を3年間で県大会準優勝へと押し上げた福井 健太監督の就任後初の公式戦となった6月の総体ブロック大会では生光学園にコールド勝ちした徳島科学技術や、南部地区の雄・富岡西なども上位を狙う。

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第3シード・鳴門ゾーン

河野 竜生(鳴門)

 右本格派の中山 晶量(186センチ75キロ・右投右打・生光学園中<ヤングリーグ>出身)、右変則サイドの尾崎 海晴(175センチ77キロ・右投右打・鳴門市第一中出身)、豪快フォームから右打者インローを突く左腕・矢竹 将弥(176センチ70キロ・生光学園中<ヤングリーグ>出身)、そして制球力とマウンドさばきにはもはや風格すら漂う左腕エース・河野 竜生(172センチ72キロ・鳴門市第二中出身)。四国レベルを凌駕する2年生投手4枚を備え4連覇を目指す鳴門に対し、次々と難敵が立ちはだかる展開が予想される。

 まずは昨秋県大会3位決定戦で鳴門を残り1ストライクまで追い込んだ海部。「もう夏しかない」と並々ならぬ意気込みを示す細腕サイドの上野 大成(3年・右投右打・178センチ61キロ・牟岐町立牟岐中出身)。カットボールに活路を見出し、主将の戎谷 元気(遊撃手・172センチ72キロ・右投右打・海陽町立宍喰中出身)も身体能力を支える体力を備えた。投打に爆発力のある板野との1回戦は激戦必至であるが、ここを勝ち残った場合はリベンジ達成の可能性が大きくなってくる。

 そして生光学園vs穴吹、徳島池田vs小松島の1回戦。勝者同士が当たる2回戦はここで対戦させるのが惜しい組み合わせだ。

 生光学園春季大会でエース格に成長した久堀 耕平(3年・180センチ73キロ・右投右打・奈良ウイング<奈良・ヤングリーグ>出身)が球速を140キロに伸ばし、2年生4番の武岡 大聖(右翼手・右投左打・177センチ86キロ・徳島ホークス<ヤングリーグ>出身)も飛躍的にスピード、キレが向上。生光学園中<ヤングリーグ>出身の俊足遊撃手・森下 天(3年・166センチ64キロ・右投左打)が主将を務める穴吹との対決を抜ければ、初優勝・そして49代表唯一の「過去、私学代表なし」解消も見えてくる。

 徳島池田は「ようやく形になってきた」と岡田 康志監督も認める、スタメン6人を2年生が占める若いチーム。ここは昨年センバツでの唯一のスタメン経験者である主将・喜多 正史(3年・左翼手兼投手・左投左打・175センチ73キロ・美馬市立脇町中出身)の奮起に期待する。

 小松島もスタメンの約半数が一昨年秋の四国大会でのベンチ入り経験者。いい意味で上のステージに立ったことを自信に、鳴門を倒せる可能性のある場所まで駆け上がりたい。

 先日、徳島県内で行われた練習試合で某高校の女子マネジャーと話す機会があった。冬の出来事に触れた時彼女からは出た一言が今も耳に焼き付いている。
「悲しかったです……」
野球というものは決して独りではできない。そして「高校野球」というものはプレーヤーだけのものではない。逆説的に言えば、高校野球を失った時、それらのことに高校球児は、ようやく気づくのかもしれない。
だから、今は「全ての人に感謝の想いを持って」とはあえて言わない。一日でも長く高校野球をしたいのであれば、高校野球を失いたくないのであれば、そして最も身近にいる人を悲しませたくなければ、今なすべきことは導き出せるはずだ。
その想いが最も積み重なったチームが、きっと31校の頂点に立てる。今はそう思う。

(文=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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