Column

【センバツ総括】ドットコムでもお馴染みの松倉氏に訊く!今年の選抜! Vol.2

2015.04.09

 前回はベスト4入りのチームについての印象を語ってもらったが、今回はベスト8以下で印象に残ったチーム。また高校球児へ大切にしてほしいことも語ってもらった。

先輩に投げさせてあげてくださいと直言した常総学院のエース・鈴木 昭汰

常総学院のエース・鈴木 昭汰

 前回は4強入りのチームについて話を進めてきたが、今度はベスト8以下で印象に残ったチームについて挙げてもらった。その中でも最も評価が高かったのが常総学院だ。
「甲子園練習から本当にチーム状態が良いように感じました。特に和田 慎吾君は練習ながら本塁打を連発。その調子のまま米子北戦(試合レポート)から本塁打を打っていて、投打ともに良かったチームですね」

 さらに感心したのがエース鈴木 昭汰の言動だという。1回戦~2回戦は大差がつく試合展開となった。終盤になって、佐々木監督に続投するかと聞かれたとき、
「本人は監督に、先輩たちに投げさせてくださいと直言したようです」

 その言葉を受け、佐々木監督は躊躇なく、交代を決断した。今大会、常総学院は、樫村 雄大(2年)、菅原 一泰(3年)、井上 真幸(3年)の3投手を投げさせることができた。3人にとって甲子園で投げた経験は、夏になって生きてくるだろう。それにしても鈴木の視野の広さが分かるエピソードである。投手は1人で投げ切りたい、完投したい欲求を持った投手が強い。大差になっても1人で投げきることがある。

松倉氏は、
「投手の起用は試合の状況、相手との力関係も考えていかなければならないので難しいところですが、ただ一人で投げ切りたいという考えだけではなく、チームのためにここはチームメイトに投げさせた方が良いという考えもあってもいいと思います」

 常総学院は伝統的に継投が多いチームだが、特に必要性を感じて実施するようになったのは、2013年夏の甲子園のある試合が一つにあるようだ。この年のエース・飯田 晴海(現・東洋大)は準々決勝まで快投を演じた。また打線、守備も内田 靖人(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)を中心に完成度が高いチームだった。

 しかしここまで真夏の暑さの中、1人で投げ切った飯田は準々決勝前橋育英戦の9回裏、激戦の疲労が出たのか、熱中症により降板。そのまま同点に追いつかれて、逆転サヨナラ負けした苦い思い出がある。同じ轍を踏まないようにと、この大会の後から投手起用はかなり気を付けていた。

 また今年の常総学院も、初戦で12盗塁と新記録を打ち立て、3試合で4本塁打と、打力、機動力、投手力とハイレベルであることを証明した。夏の全国制覇へ向けて動き出している。

下記記事もあわせてチェック!
【インタビュー】常総学院高等学校 内田 靖人 選手(2013年10月21日公開)

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[page_break:ランナーコーチを固定しない健大高崎 / 髙橋純平のクレバーさを示すエピソード]

ランナーコーチを固定しない健大高崎

 準々決勝で敗れた健大高崎。このチームの持ち味は「機動破壊」と評するほどの破壊力だ。そんな健大高崎は、ランナーコーチを1回戦では固定していなかった。今の野球界、ランナーコーチはかなり重要なポジションといわれる。ランナーコーチ専門の選手がベンチ入りすることが多い。そこについて松倉氏が健大高崎の選手たちに聞くとこんな声が返ってきたという。

「ランナーコーチを固定せず色々な選手がすることで、様々な情報を拾えると選手自身で考えたようです。それを走塁に生かしているようでした」

 走塁を磨かないと勝てないとう思いから走塁強化に取り組んだ健大高崎だが、勝つためにそこまで貪欲に取り組んでいるのかと驚かされる。ランナーコーチは判断力が求められるポジション。ランナーコーチからの視点で見れば得られるものは確かに大きいだろう。走塁を強化したいチームは健大高崎の手法から何か学べるものがあるかもしれない。

髙橋 純平のクレバーさを示すエピソード

髙橋 純平(右)と加藤 惇也のバッテリー

 そして大会注目度ナンバーワンピッチャー・高橋 純平投手(県立岐阜商)について聞いてみた。取材して感じたのは「クレバーさ」だという。
「投球についての考えを聞くと、まさに『投手』と表現できる選手でした。初戦で110球、2回戦は112球で完投しましたが、本人は100 球以内に収めることを目標に置いているようで、悔しいと話していました。三振も特にこだわりがなくて、狙いたい場面では狙いますが、球数を少なく収めることを意識しているようでした」

 また自慢の速球の最速は152キロ。本人はあまりスピード表示を意識していないと話していたが、スピードを意識する場面も垣間見えた。
「意識する場面、意識しない場面があって、今大会でいえば松商学園戦(試合レポート)の初回は力で押して、速いストレートを投げることを意識していたようです。その後、中盤からは変化球主体になりました」。

 事実、松商学園戦で150キロを見せた後、140キロ前半のストレート、カーブを織り交ぜ、1失点完投勝利。近江戦(試合レポート)では3安打完封と、前評判にふさわしい投球を披露した。
 そして髙橋のクレバーさを示すもう一つのエピソードも教えてくれた。

「相手の作戦を見抜こうとするのは、捕手が多いじゃないですか。でも髙橋君も相手監督のサインを見ているんですよね。それを見て、バントあるぞ!など内野手に指示を送っているんです。実際にそれがはまったシーンがありますし、視野が広い選手だと感じました」

 髙橋は準々決勝で敗れたが、その試合後、悔しさを表す様子はなかったようだ。
「彼は『甲子園は楽しかった』と語っていました。悔しい素振りは見せることはなかったですね。球児、それぞれの目標が違うんだなと感じました」

 選抜だけではなく、夏まで注目されるに違いない。

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[page_break:試合の中で先を読んで勝負ができるか?]

試合の中で先を読んで勝負ができるか?

常総学院の投手陣を支える高瀬将太朗選手

 最後に松倉氏に今年の選抜で強く思ったことを伺うと、試合の中で先を見ながらゲームを進めていく重要性だという。
「一例をあげると、準々決勝大阪桐蔭vs常総学院。この試合を見ていて感じたのは、目の前の打者との勝負に集中しすぎている印象を受けました。

 試合が終わった後に敗れた常総学院の選手に話を聞くと、後から振り返ると違う攻め方があったかもしれない語っていたんです。次の打者の結果や、味方投手の相性を考えて、勝負するか、否か。勝負が厳しいと感じれば、あえて次の打者やその先の打者と勝負をするという選択肢もある」

 象徴的だったのが、7回裏二死一塁の場面で8番・吉澤 一翔(2年)が同点適時打を放った場面。吉澤の次打者は投手の田中 誠也(3年)。吉澤と勝負をするか、逆転の走者を背負うことを覚悟で次の田中との勝負をするのかを考える中で、バッテリーは最終的にこの日2安打を浴びていた吉澤との勝負を選択。結果的に吉澤に同点打を浴びた。この場面について捕手出身の大阪桐蔭・西谷浩一監督は自らが捕手だったと仮定して、
 「その時の状況にもよりますが、相手が(投手に)代打という作戦をとってくるチームなのか、その辺りも(探りながら)考えると思います」とまだ選択肢はあるとの考えを話している。

 攻め方にはこれが正解!というものはない。その場面ごとで、最善となる攻め方、配球は変わってくるのだ。また勝負すべき打者、避けなければならない打者も時と場合によって変わってくる。だから必ずしも答えは一つとは限らない。
 ここで大事なのは、試合後にもう一度最初から振り返ってみること。例えば、常総学院のバッテリーは試合中、自分たちが行った攻めが最善と思っていたが、試合の振り返りをしながら、他にも別の選択肢があったのではないかと感じていた。松倉氏は「それこそが大事」だと語る。

 簡単なことではないかもしれないが、試合の先を読む能力、様々な状況を整理する、判断を下すことが勝負では大事になってくる。たとえ失敗を繰り返しても、振り返り、次の試合へ生かす取り組みが後の勝利へと繋がる。今回はバッテリーを中心に話を進めていったが、内野手、外野手であればポジショニング。打撃になれば、配球の読みなど野球はその都度その都度、状況判断が求められる。そこで振り返りながら前進をしていくことが大事なのだ。

 まとめると、現場で見た上位校の取り組みは非常に参考になるものばかりであった。甲子園を目指す球児たちは、ぜひそういう学校の取り組みを参考にしながら自分たちのオリジナリティを築き上げ、チームとして、選手として大きくレベルアップを目指してほしい。

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【野球部訪問】敦賀気比高等学校(2014年12月13日公開)
【野球部訪問】大阪桐蔭高等学校(2011年05月27日公開)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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