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2015年の高校野球を占う【茨城編・後編】鈴木 昭汰、大関 友久、綾部 翔、福田海人など好投手揃いの茨城

2015.02.22

 前回茨城秋季県大会を振り返ってきた。今回は各地区の注目選手と春の展望を述べていきたい。

予選免除の4校

樫村 雄大(常総学院)

 茨城では、秋に4強入りした常総学院、明秀学園日立、石岡一土浦湖北は春の地区予選が免除されるため、各地区からの春季県大会出場校は、水戸地区が7、県北地区が8、県南地区が10、県西地区が7の計32チームとなる。

 常総学院は、左右の1年生投手が牽引する。エース左腕・鈴木 昭汰関東大会までの6試合で29・1/3回に登板して自責点3、被安打24、奪三振17、四死球6、防御率0.92と抜群の安定感を誇る。最速139キロのストレートはひと冬越したセンバツで140キロの大台に乗るか注目だ。

 右腕・樫村 雄大は最速135キロながら変化球が多彩。とくに右打者の内側に沈むボールは厄介だ。先発、中継ぎ、抑えと大車輪の活躍で、関東4強入りに大きく貢献した。1番打者の主将・宇草 孔基は、8月の県南選抜大会では、バント失敗やイップスを疑うような悪送球が見られ調子はどん底にあった。しかし秋季大会は関東大会までの8試合をノーエラー、打率.538とチームを牽引しその輝きを取り戻した。

 中軸を担う石井 大貴は、土浦湖北戦(試合レポート)の逆転タイムリー三塁打が強烈に印象に残る。自らがタイムリーエラーをした後、気持ちを切らずに放った一打にチームが救われた。春以降も試合巧者・常総学院が他校をリードする様相を呈している。

1年夏に石井とともに甲子園の打席を経験した荒原祐貴は、昨夏ベンチ漏れの悔しさをバネに秋は全試合に出場し、公式戦打率.423。勝負強い打者へと成長を遂げた。この冬は食トレが功を奏して増量に成功し、さらなる進化が期待できる。

 明秀学園日立はエース右腕・孫大 怜也の気迫を前面に出した力感溢れる投球が魅力だ。最速136キロとやや物足りないが、さらなる進化を遂げて春以降は投球の幅を広げたい。控え投手に甘んじる大型右腕・大友 喬太は、左足を上げると同時にトップの位置に右腕を構える変則的なフォームだ。茨城県大会決勝と関東大会では2番手でマウンドに上がったが、打者としても柵越えを打てる能力があり、4打席見られないのが勿体無い選手だ。

 遊撃手の永濱 晃汰はレギュラーのなかで唯一の地元茨城出身。屈指の守備力と抜群の肩を持ち、霞ヶ浦小川 翔平と並ぶ今季の茨城における遊撃手の双璧だ。右翼手・有住 隆哉は俊足かつ強肩で、機動力野球の屋台骨を支える。

 石岡一はエース左腕・木村 怜央のスクリューボールが冴える。右腕・高崎 大幹準々決勝準決勝で先発の大役を任された。本多 啓直は豪快なスイングで柵越えが期待できる。田中 悠也秋季県大会で18打数8安打1本塁打とチーム一の安打数を誇る。

 土浦湖北で1年秋からエースとなった身長186センチの左腕・大関 友久は最速136キロの直球とカーブやスライダーなどのオーソドックスな球種を持ち球とする。最近は雑誌でプロ注目投手として取り上げられることが多くなった。秋は全4試合を大関友-関口の継投で乗り切り、大関友が9回を完投することは1度もなかったが、春以降はどのような戦略でいくのか、小川監督の起用法も楽しみにしたい。

 関口 海渡は4番を務めながらストッパーの重責をも担う。最速140キロに迫るストレートには威力がある。ショートからコンバートされた捕手の塙 雄輝は強肩はもちろんのこと、フットワークが巧みだ。夏まで捕手としてまだまだ高みを目指せる。

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水戸地区

鈴木 智之(水戸工)

 水戸葵陵は右腕・海野 貴嗣がキレのあるストレートを投げ込む。昨夏サイクルヒットを放った斎藤 匡治の成長具合いも見ておきたいところだ。自信を持って臨んだ昨秋だったが常総学院にコールド負け。この結果が成長材料となっていることに期待したい。

 水城前島 健志郎根本 拓真白瀬 勇樹ら、好打者が多く打線の層は厚い。右腕・小林 奨吾は奪三振率が高いが被安打も多いので配球に工夫が欲しい。

 水戸工はエース右腕・水戸工鈴木 智之がこの冬に球速を伸ばして140キロに迫ってきた。下級生から試合経験豊富な主将・生田目 忍梅田 祐太郎がチームを牽引して秋の地区予選敗退から巻き返したい。

 水戸商西連地 悠貴が思い切りの良い打撃でチームを引っ張る。伝統校らしく地に足の着いた野球を見たい。秋に名前が売れた玉造工の変則左腕・木川 尚紀の勝ち上がりにも期待したい。

 鉾田一小堀 誠太郎羽生 直樹の両投手が安定しているだけに、打線の向上が鍵を握る。常磐大高には新しい風が吹き込みそうだ。

県北地区

 日立一鈴木 彩斗を投打の中心に据える。中学時代からの女房役・関 貴弘は1年生ながらすでに副キャプテンを務める。橋本 聖紀鈴木 綾人はシュアな打撃を心がける。茨城高専の左腕・桧山 航(水戸シニア)は1年夏に先発を経験した。秋は県大会1回戦で石岡一に5失点完投と、試合を作る能力がある。多賀はエース・池ヶ谷のケガからの復帰が待たれる。

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県南地区

福田 海人(つくば国際大高)

 昨夏は8強のうち7校、昨秋は6校が県南地区から勝ち残っているだけあって、有力校がひしめき合っている。霞ヶ浦は最速144キロの本格派右腕・綾部 翔が投手の柱。左腕の安高 颯希浅賀 蒼太も控える。昨春の関東大会を経験した下級生の存在も大きい。根本 薫を中軸に据え秋のリベンジを狙う。

 藤代は本格派右腕・山崎 誠が130キロ台後半のストレートと縦のスライダーで組み立てる。立松 由宇飯塚 幸大柳 沙都史で構成する中軸には昨夏メンバーに引けを取らない迫力がある。

 つくば国際大高はエース右腕・福田 海人がさらにすごみを増し、春には140キロ台が期待できそうだ。1番打者の佐々木優作は巧みなバットコントロールで好機を演出する。土浦日大は右腕・大森 亮輔が130キロ前後のストレートで交わす。宮部 明憲中條 航汰は内外角に対応力がある。

 江戸崎総合は左スリークォーターの宮本 優輝、最速135キロ右腕・横田 侑哉とタイプの異なる2枚を擁する。4番・原村 和輝は長打力と勝負強さをかねそなえる。
取手一島崎 大介が練習試合を含めた通算打率.430と能力の高さを示している。

 取手松陽昨夏4強入りの原動力となった最速143キロの長身右腕・内村 悠斗、主将でショートにコンバートされた宇尾野 広大、高打率を残す川村 文耶らタレント揃いだ。分厚い打線で秋地区予選敗退からの名誉挽回を期す。

県西地区

 つくば秀英昨夏8強入りのメンバーを多数残す。左腕・戸塚 岳は馬力のあるストレートを投げ込む。右サイド・野澤 佑斗はテンポ良くコーナーを突く。金井 洸樹は弾丸ライナーで放り込む力を持つ強打者だ。

 守谷昨秋当たりに当たった1番打者・寺嶋 一也を、後続打者が還せるかが鍵となる。明野は最速143キロ右腕・大木 魁人がフォームを改造して手ごたえを掴んでいる。鬼怒商の左腕・大木 駿昨夏1年生ながら竜ヶ崎一戦で完投。まだ制球で打たせてとるタイプだが、思い切りの良い腕の振りは2年後に大化けする可能性を秘めている。

復活なるか下妻二

 下妻二は昨年8月の岐阜遠征で、プロ注目の最有力である県岐阜商・高橋 純平投手と対戦するなど、県外強豪校との練習試合を豊富にこなしている。だが、県西選抜大会ブロック決勝では守谷に0対1で敗退し、県西地区代表決定戦では2年連続して水海道一に敗れるなど、チームの勢いが低迷している。

 その原因には、エースで中軸を担う中川 光輝の故障もあったようだが、関係者に敗因を聞いたところ、最大の理由は「選手の勝利への執念が欠けており、悪しき伝統を積み重ねている事の重大さ、現状認識ができていない」とのことだ。しかし、「この冬は外部から招聘したコーチが新たな風を吹き込み、思考力を高めてくれて、技術的のみならず精神的にも実りの多い練習ができた。チーム力は確実に向上した」とのことだった。この言葉どおり、春には勝負強い下妻二が見られるか注目したい。

(文:伊達 康)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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