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小関順二の甲子園総括コラム(野手編)

2013.08.27

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小関順二の甲子園総括コラム(野手編) | 高校野球ドットコム

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攻守に光った2人の強肩捕手!

今大会に出場したドラフト候補一覧【野手編】はこちらから!

 前橋育英の優勝で幕を閉じた選手権大会、個人で目立ったのは誰か、改めて振り返ってみよう。捕手では強肩の目安になる二塁送球タイム2秒未満の選手が16人いた。その中で攻守のバランスが取れていたのが森 友哉大阪桐蔭)と内田 靖人常総学院)の2人だ。彼らの主な二塁送球タイムを見ていこう(*印は実戦、無印はイニング間)。

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森友哉選手(大阪桐蔭)

名前 二塁送球タイム
森 友哉 *1.86秒(8/8 日本文理戦)
*1.96秒(8/14 日川戦)
1.98秒(8/17 明徳義塾戦)
内田 靖人 1.90秒(8/15 仙台育英戦)
*1.96秒(8/15 仙台育英戦)

 この中で強く魅かれたのは森だ。二塁へのスローイングは選抜のときからイニング間で手を抜くようになり、その物足りなさは今大会もあったが、いざというときに見せる肩の強さは高校ナンバーワン捕手の評判に違わず抜群。日本文理戦の1.86秒は二塁へのけん制、日川戦の1.96秒は二盗こそ許したが実戦で計測したものだ。イニング間で手を抜いても実戦での強さは他を圧していた。

 内田は仙台育英戦でこんなことがあった。4回表に入る前のイニング間で座ったまま二塁へ送球し、そのときのタイムが1.99秒を計測したのだ。2秒を切れば強肩と言われるが、なおかつ低めに糸を引くような球筋で、コントロールも定まっていた。5回表の二死一、二塁の場面ではやはり座ったまま二塁けん制を試み、補殺こそできなかったが私のストップウォッチは1.96秒を表示した。森に匹敵する強肩と言っていい。

 

 2人を比較してそれでも森を上位にしたのは、野村 克也氏(前楽天監督)がよく言うように、捕手は“縁の下の力持ち”的なキャラクターのほうが成功するケースが多いからだ。プロでもやらない“座ったままのスローイング”は、投手を縁の下で支えようという精神とは真逆。その部分を見て、森のほうが捕手として上位の資質と考えた。

 内野手全般では遊撃手に好選手が多かった。表では内野手22人中、半分の11人が遊撃手である。「日本では好素材は投手に、アメリカでは遊撃手に集中する」というが、近年日本でも遊撃に好素材の選手が集中している。この11人の中ではとくに熊谷 敬宥仙台育英)、奥村 敬宥日大山形)、土谷 恵介前橋育英)、水谷 友生也大阪桐蔭)、今田 典志樟南)の5人がよかった。

 熊谷と奥村はフィールディングが高校生というより、東京の大学生を思わせる華やかさがあった。奥村などは普通にステップを踏んで投げてもアウトにできる打球をランニングスロー(さらにスナップ)で処理し、それが安心して見ていられた。

 水谷は春から“守備名人”の称号があり、「守りだけなら大学野球では即レギュラー」というくらいのうまさを見せていた。「守りだけなら」と注釈がつくところに打撃の非力さがうかがえるが、今大会の2回戦・日川戦では第2打席で右方向の二塁打、第4打席でセンター方向の安打を放ち、引っ張りしかできないという批判を少しだけくつがえした。

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小関順二が選ぶ甲子園ベストナイン

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園部聡選手(聖光学院)

 今田で驚いたのは深い守備位置。2回戦の前橋育英戦を見ていたら、3、4番打者が打席に立つと芝生の中まで下がって守っているのだ。これはもちろん、肩の強さに自信があるからできること。かつて、「プロ野球史上最も守備のうまいショート」と言われた大橋穣(元阪急)がやはり深い守備位置に定評があったが、高校野球でこれほど深い守備位置は記憶にない。

 遊撃手以外の内野手では一塁手で園部 聡聖光学院)、近田 拓矢大阪桐蔭)、その他のポジションでは桒原 樹(二塁手・常葉菊川・2年)、滝野 要(三塁手・大垣日大・2年)に注目した。園部と近田はプロが待望する右のスラッガーで大会前から注目度が高く、園部は愛工大名電戦福井商戦で2本の長打と安打を放ち、近田は1回戦の日本文理戦で森友哉に続いて2者連続本塁打を放ち、プロの評価を上げた。

 外野手は下馬評の高かった上林 誠知仙台育英)が不調で、さらに山根 佑太浦和学院)、吉田 雄人北照)という超高校級の強打者も1回戦で姿を消し、拍子抜けした。そんな中で目立ったのが、小林 勇介作新学院)、幸山 一大富山第一・2年)、岩重 章仁(延岡学院)の3人だ。

 小林は打席内での動きがゆったりと小さく、バットの上下動や過剰な引きもない。投手のタイミングに合わせやすい動きと言ってよく、それが結果にきちんと出ている(15打数7安打3打点1本塁打)。いまいちネームバリューがないのは、いつまでも昔の名前にこだわる保守的なマスコミの責任と言ってよく、今大会のバッティングを見れば小林の名前を上林以上に出してその存在を知らしめる報道をしなければいけなかった。

 選抜大会に続いてランニングホームランを放った峯本匠大阪桐蔭)も見事だった。2つのベース1周タイムは選抜時が15秒を切る14.99秒、今大会が15.15秒と上々だった。ランニングホームラン自体が野球界に少なく、私もあまり遭遇していないが、試合の中でのベース1周14秒台はプロでもそう多くないと思う。以上のことから私なりのベストナイン(投手はここでは除く)を次のように選定してみた。

打順 守備位置 名前 投打 高校名 学年
1番 捕手 森 友哉 右左 大阪桐蔭 3年
2番 遊撃手 熊谷 敬宥 右右 仙台育英 3年
3番 中堅手 山根 佑太 右右 浦和学院 3年
4番 一塁手 園部 聡 右右 聖光学院 3年
5番 右翼手 上林 誠知 右左 仙台育英 3年
6番 左翼手 小林 勇介 右右 作新学院 3年
7番 二塁手 桒原 樹 右左 常葉菊川 2年
8番 三塁手 滝野 要 右左 大垣日大 2年

 不調だった上林をメンバーに入れているのでアレ?と思った人がいるかもしれないが、不調でもその存在感は半端でなかったのかと思っていただきたい。

[page_break:今大会に登場したドラフト候補一覧【野手編】]

今大会に登場したドラフト候補一覧【捕手編】

名前 投打 身長/体重 高校名 学年
内田 靖人 右右 185/88 常総学院 3年
西川 元気 右右 180/77 浦和学院 3年
小野 航大 右右 176/69 愛工大名電 2年
森 友哉 右左 170/80 大阪桐蔭 3年
具志堅秀樹 右右 168/73 沖縄尚学 3年

今大会に登場したドラフト候補一覧【内野手編】

名前 投打 身長/体重 高校名 学年
角 雄平 右右 174/85 帯広大谷 3年
一戸 将 左左 174/83 弘前学院聖愛 3年
茂木 和大 右右 178/75 花巻東 2年
熊谷 敬宥 右右 175/70 仙台育英 3年
奥村 展征 右左 177/72 日大山形 3年
園部 聡 右右 184/87 聖光学院 3年
土谷 恵介 右左 174/72 前橋育英 3年
木暮 騎士 右右 175/80 浦和学院 3年
竹村 春樹 右左 175/72 浦和学院 3年
高田 涼太 右右 180/80 浦和学院 3年
高濱 祐仁 右右 182/82 横浜 2年
桒原 樹 右左 182/73 常葉菊川 2年
滝野 要 右左 183/70 大垣日大 2年
北村 拓己 右右 178/78 星稜 3年
関 了摩 右左 176/75 福井商 3年
近田 拓矢 右右 180/88 大阪桐蔭 3年
水谷友生也 右右 176/75 大阪桐蔭 3年
笠松 悠哉 右右 180/80 大阪桐蔭 3年
香月 一也 右左 173/80 大阪桐蔭 2年
河野 祐斗 右右 171/72 鳴門 3年
松元 聖也 右左 177/70 延岡学園 3年
今田 典志 右左 177/68 樟南 3年

今大会に登場したドラフト候補一覧【外野手編】

名前 投打 身長/体重 高校名 学年
吉田 雄人 右左 178/73 北照 3年
岸里 亮佑 右左 181/75 花巻東 3年
上林 誠知 右左 184/77 仙台育英 3年
峯田隼之介 右左 175/76 日大山形 3年
小林 勇介 右右 182/79 作新学院 3年
山根 佑太 右右 178/75 浦和学院 3年
浅間 大基 右左 182/72 横浜 2年
幸山 一大 右右 191/88 富山第一 2年
山本 琢真 右左 180/74 福井商 3年
峯本 匠 右左 172/70 大阪桐蔭 2年
酒井 堅也 右左 176/75 佐世保実 3年
岩重 章仁 右右 183/83 延岡学園 3年

(文・小関 順二

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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