第85回選抜の選考を振り返る【21世紀枠 編】
21世紀枠 出場枠4・候補校9
選抜選出に沸く土佐ナイン
21世紀枠は今年で13年目。85回記念大会のため、例年より1校多い4校が選出された。
午前の21世紀枠推薦理由説明会では、各地区理事が熱いトークでプレゼンテーションを行い、21世紀枠特別選考委員に長所をアピールした。
選出方法は例年どおり東日本(北海道、東北、関東、東海、北信越)と、西日本(近畿、中国、四国、九州)から各1校ずつを選び、3校目と4校目は地域を限定せずに選考した。
また選考にあたって、特別選考委員14名に、東日本・西日本に分けて候補校に相応しいと思う順位をつけていただき、個々に審議をした。
【東日本】
東日本の選考は、候補5校からまず3校に絞って審議に入った。21世紀枠の選考にあたって、東日本大震災の被災・復興をどう位置付けるかについての意見が交わされた。その後、『困難状況の克服』『地域との関わり』『学業と部活動との両立』といった21世紀枠の選考基準についても様々な意見が出て、3校からの選出にあたって40分近い激論が続いた。論議を受けて多数決をとった結果、選出されたのがいわき海星(福島)。
水産・海洋系の同校は、東日本大震災で津波に襲われ壊滅的な被害を受けた。福島第一原子力発電所事故の影響も大きく、県内外に避難した生徒も多い。
校舎の復旧工事はまだ始まったばかりで、グラウンドにはまだ大量の海砂が堆積しており、満足な状態に戻るまではまだまだ時間がかかるのが実情。そのような中で、選手たちは希望を捨てず、あきらめない気持ちで練習に打ち込み、逆境が成長を生む選手たちの姿が復興に取り組む被災者への大きな励ましになっている点などが評価された。
【西日本】
西日本の選考は2校を軸に議論が進んだ。両校とも甲乙つけがたいとの声があがったが、特待生制度がなく学業と野球を見事に両立させている点や、全国に知られている『全力疾走』などが評価され、紙一重の差で土佐(高知)が選出された。
同校は創部60年以上の歴史を持ち、甲子園の出場歴(春6回夏4回)を持っているものの、最近では県内の強豪校に阻まれ今一歩のところで出場を逃している。創部以来の理念である『全力疾走』は、「野球だけではなく学業を含めて一生懸命やる」という意識が徹底している。県内でトップの進学校だが部員は全員一般入試で入学しており、『右文尚武(文武両道)』の理念も徹底。20年以上離れている甲子園で2つの理念を体現したいとしている点が評価された。
【3校目と4校目】
残った7校から2校を決めるにあたり、東日本と西日本での議論で俎上にあがったものの選出に至らなかった4校で審議した。その中で、過疎化の中で地域に密着した活動を続けている益田翔陽(島根)と、厳しい自然の中で強豪校と互角に戦いながら今一歩で甲子園を逃し続けている遠軽(北海道)を全員一致で推すこととなった。
益田翔陽は高齢化率が30%を超える地域で過疎化と少子化の影響が大きい。部員不足と全員そろっての練習時間確保が難しい中で地道に活動を続けてきた。学校は4学科の複合型専門学校で、地域の高齢世帯への電気修理ボランティアや消防本部と連携して住宅用火災報知機の設置、農産物の『市』開催など、専門技術を生かした地域に根ざす活動を続けている点が高い評価を受けた。
遠軽は、ここ3年間がまさしく“今一歩”のところで甲子園出場を逃し続けてきたことから、「何が何でも甲子園」をスローガンに練習を重ねてきた。冬には氷点下25度になる厳しい自然環境に中、ビニールハウスの練習場でさえ氷点下10度まで下がるため、筋力トレーニングなどを取り入れポジション別に効率の良い練習を積んで実力を蓄えてきたことが評価された。
(一部、主催者発表文より引用)