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第94回全国高校野球選手権大会展望 (見どころ編)

2012.08.06

選抜大会特集

第94回高校野球選手権の組み合わせが決まった。強豪校が集中せず上手く散らばっており、大会序盤から準々決勝まで退屈せずに楽しめる組み合わせになっている。

■第94回全国高等学校野球選手権大会 組み合わせ

春夏連覇目指す大阪桐蔭は木更津総合と激突

黄本 創星(木更津総合)

 春夏連覇を目指す大阪桐蔭。第一関門であった夏の大阪大会を勝ち抜いた。打倒・大阪桐蔭を目指す強豪校が大阪桐蔭に挑んだ。特に決勝の履正社戦では10-1とリードしていたものの、10-8まで追い上げられて苦しんだ末の優勝であった。堂々と春夏連覇を目指す立場となったのだ。

 初戦の相手は木更津総合(千葉)。大阪桐蔭にとっては全神経を注がなければ簡単には勝てない相手であろう。大阪桐蔭と同じチーム5本塁打を放ち、例年の千葉県の代表校らしからぬ強打で勝ち上がってきた。エース黄本創星も最速144キロのストレートに加え、両サイドのコントロールも磨かれ、粘り強い投手に成長。木更津総合にとっては失うモノは殆どないだけに、大阪桐蔭の隙を逃さず、お得意の打撃戦に持ち込みたい。

光星学院、遊学館、神村学園、智弁和歌山 最も熾烈なブロック!

北條 史也(光星学院)

 光星学院は2回戦から登場。準々決勝を勝ち上がるには2回勝たなければならないが、息抜けない戦いが続くブロックだ。光星学院北條史也田村龍弘の2人を中心とした強力打線は健在。金沢湧紀城間竜兵の二枚看板に左の技巧派・伊藤裕貴が台頭していくと投手陣はさらに盤石となる。対する遊学館はドラフト候補・森山恵佑を打ち崩し、黒萩幸生平井翔也の二枚看板で、勝ち上がってきた。光星学院にとっては気が抜けない相手だ。

 この2チームを対戦する可能性があるのが智弁和歌山(和歌山)と神村学園(鹿児島)だ。智弁和歌山は決勝戦で延長14回の激戦を制し、8年連続出場。打線はまだ活気づかないが、吉川雄大蔭地野正起土井の三枚看板で粘り強く勝ち上がってきた。神村学園は最速148キロ右腕・柿澤貴裕を擁する。打者としても3本塁打を放ち、まさに投打の柱である。春では準優勝経験のある神村学園も夏は目立った実績がない。夏に強いと言われるためにも智弁和歌山は大きな壁となる。

桐光学園、愛工大名電ブロック

濱田 達郎(愛工大名電)

 神宮大会準優勝、選抜ベスト8の愛工大名電。エース濱田達郎も順調に仕上がってきており、久しぶりに夏に強い戦いが期待できそう。対する浦添商照屋光宮里泰悠の好投手2人を擁しており、巧打者揃いの愛工大名電打線も打ち崩すのは難しそうだ。ロースコアの接戦になりそうだ。

 優勝候補と目された横浜を打ち破り、5年ぶりの出場を果たした桐光学園・エース松井裕樹は46.1回を投げて68奪三振と圧倒的な奪三振率を誇る。気迫溢れる投球スタイルから投じる140キロ超のストレート、分かっていても捉えられない縦のスライダーのコンビネーションは全国レベルの打線でも打ち崩すのは難しい。しかし全力投球のスタイル故に球数が多く、セットに入ってからの安定感も欠ける。今治西は突出した選手はいないが、相手にとって嫌らしい野球を仕掛けていくスタイルで、桐光学園にとっては戦い難い相手だ。

 同じブロックには常総学院が登場。テンポの良い投球で試合を組み立てが出来る菅原拓那、最速147キロ右腕・伊藤侃嗣の二枚看板。打線も杉本智哉内田靖人を中心として打線も強力。熾烈さは光星学院ブロック並みだ。

[page_break:―広島工、仙台育英ブロック]

広島工、仙台育英ブロック

石井 一成(作新学院)

 20年ぶり出場の広島工は激戦区・福岡を勝ち抜いた飯塚と対戦。宇佐美塁大を筆頭とした打撃が売り。飯塚は粘り強く勝ち上がり、堅実な守備で投手を盛りたてる。対照的なチーム同士の対決。投打で総合力が高い仙台育英も登場。

 2日目には昨夏ベスト4の作新学院が登場。エース大谷樹弘石井一成の経験者を中心に総合力を高めてきた。そして花巻東大谷翔平を打ち崩した盛岡大付も登場。攻守で総合力が高いチーム。

 このブロックは話題性という面では光星学院ブロックに欠けるが、実力的には均衡しており、どこが勝ち上がっていてもおかしくない。

浦和学院、日大三ブロック

 選抜ベスト8の浦和学院は同じ関東圏の高崎商と対戦。高崎商は好左腕・関純浦和学院打線に挑む。そして昨年日本一の日大三聖光学院と対戦。両チームとも、昨年のような突出した才能を持った選手はいないが、粘り強い守り・繋ぎを売りとしたチームスタイルで似た者同士の対戦だ。聖光学院は強豪校との対戦が多いが、今年は今までより堂々と自分たちの野球が発揮出来る相手である。

 選抜出場の鳥取城北香川西と対戦。香川西はエース林秀樹を中心とした守りのチーム。鳥取城北は例年の鳥取代表にはない総合力の高さは備えるだけに勝ち進んで上位進出を狙いたい。天理は攻守に高い才能を持つ選手を揃えた。課題となる終盤では粘り強い戦いを見せる事が出来るか。逆に宮崎工は粘り強く後半勝負に持ち込みたいところだ。

 

成立学園、東海大甲府ブロック

神原 友(東海大甲府)

 初出場の成立学園東海大甲府と対戦。成立学園はコールド勝ちが一つもなく、まさに接戦の強さを見せてきたチームで、145キロ右腕・神原友、走攻守三拍子揃った渡辺諒とタレントを揃えた東海大甲府相手にも粘り強い戦いで接戦をものにしたい。

 今大会NO,1のスラッガー高橋大樹を擁する龍谷大平安、圧倒的な打力で勝ち上がっていた富山工、実戦派左腕・菅野を擁する旭川工業、大型右腕・知久将人擁する札幌第一、好左腕・笹永弥則を擁する宇部鴻城、投打で高い才能を見せる木村隆志を擁する佐世保実と実力が均衡した同士の学校が揃った。

―常葉橘ブロックと明徳義塾ブロック

 開幕戦に登場する常葉橘福井工大福井は好投手対決。常葉橘はエース宮崎悟、福井工大は148キロ右腕・菅原秀と興味深い対決だ。勝利すれば、最速143キロ右腕の大型右腕・近藤卓也を擁する秋田商。さらに東海地区屈指の左腕・竹内諒を擁する松阪(三重)と高投手マニア垂涎のブロックになりそうだ。

 そして明徳義塾会田隆一郎下妻貴寛の大型バッテリーを擁する酒田南との対戦。大型右腕・竹石智弥を擁する新潟明訓、地味ながら攻守の完成度が高い県岐阜商も登場。激戦区のブロックを外れた明徳義塾。今年出場する学校の中では一番不気味な存在になりそうだ。

(文・編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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