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第64回秋季東北地区高等学校野球大会総括(上)

2011.10.26

第64回秋季東北地区高等学校野球大会総括(上)2011年10月26日


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[目次]

1.昨秋以来の東北大会
2.いよいよ開幕
3.コールド負け寸前からひっくり返した古川学園らがベスト8に名乗り

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昨秋以来の東北大会

第64回秋季東北地区高等学校野球大会総括(上) | 高校野球ドットコム

秋田県・こまちスタジアム

 第64回秋季東北地区高等学校野球大会は、10月8日(土)から12日(水)まで秋田県の[stadium]こまちスタジアム[/stadium]と[stadium]八橋運動公園野球場[/stadium]を会場に行われた。
東北6県の県大会を勝ち抜いた上位3校、計18校が、1試合、1試合でドラマチックな熱戦を展開した。来春のセンバツにつながる大会――だから、そう映ったのは当然のこと。でも、それだけではない気がしてならなかった。

 今年の春、東北大会が行われなかったというのもあるのではないだろうか。3月11日に発生した東日本大震災の影響で、福島と宮城で春季県大会が開催できなかった。当然、東北大会も中止に。つまり、「東北大会」は昨秋以来の大会だったのだ。

 春と秋に、各県の代表校が一同に集い、戦う。きっと、それも3・11までは当然の行事だった。私見になるが、この秋の東北大会で代表校が集い、大会が開催されたことで、本当に東北地方に野球が戻ってきたような気がした。夏の地方大会も、秋の県大会も6県すべてで開催された。それでも、もちろん、野球が選手のところに戻ってきた気がした。けれど、東北地方の各県の代表校としてしのぎを削る。東北地方の各県が1つになって、高校野球がみちのくに帰ってきた感じがした大会だった。その大会を観た限り、記録したいと思う。



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[目次]

1.昨秋以来の東北大会
2.いよいよ開幕
3.コールド負け寸前からひっくり返した古川学園らがベスト8に名乗り

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いよいよ開幕

第64回秋季東北地区高等学校野球大会総括(上) | 高校野球ドットコム

福島商・服部

 7日に開幕予定だったが、6日の晩、秋田の空は荒れていた。夜中には、でっかい雷も鳴った。グラウンド状況が悪く、7日の開会式と1回戦2試合、2回戦2試合は翌日に順延となった。

 ひんやりとした朝だった8日。こまちスタジアムで開会式が行われた。地元・秋田の第1代表・能代商畠山慎平主将(2年)が「自らの栄光と新たな歴史の創造を目指し 甲子園への道を歩み始めたことを自覚し 高校生らしく謙虚な気持ちで最後まで全力でプレーすることを誓います」と宣誓。選手が退場した直後、スコールのようにザッと雨が降ったが、試合には問題なく、開幕試合の秋田中央(秋田第3代表)―福島商(福島第3代表)が行われた。

 野球は、最後まで分からない――。今大会、何度も感じたことである。それは、思い返せば、もうこの開幕試合から始まっていたのかもしれない。
福島商は、ランナー三塁での相手投手の暴投が2回あっての2点と、失策で出たランナーがタイムリーヒットで還ってきた1点で3-0とリードし、9回裏を迎えていた。秋田中央は1番の鷲谷拓朗(2年)から始まる好打順。鷲谷は四球を選ぶとすかさず盗塁。2番・葉山良尚(2年)は三振に倒れたが、一死二塁で3番・齋藤崇徳(2年)がレフトへタイムリー2ベースを放ち、1点を返した。4番の角田祥悟(2年)はライトフライに打ち取られたが、二死二塁で佐藤要(2年)のサードゴロで失策を呼び、齋藤がホームイン。土壇場で1点差に迫った秋田中央。なおも二死一塁。6番・石井幸輝(2年)はピッチャーゴロに打ち取られた。かに思われたが、福島商のエース・服部誠也(2年)が一塁へ悪送球。秋田中央は二死二、三塁とチャンスを広げたが、最後は代打・伊藤晃士(1年)が空振り三振で試合終了となった。

2試合目は花巻東(岩手第3代表)-日大山形(山形第3代表)。花巻東の先発は小原大樹(2年)。今夏の甲子園でも登板した軟投派左腕だ。試合後、「右足が着地するときにブレーキがかかって突っ張ってしまった」と話したが、制球力が生命線の小原のコントロールは初回から定まらなかった。
1回表、一死後に四球、安打、四球で満塁とされ、犠飛で先制を許し、さらに失策で2点目を失った。2回にも1点を失って、二死二、三塁とされたところで小原は降板した。2番手の佐々木毅(2年)は5番・狗飼将吾(2年)に2球目をレフトスタンドに運ばれ、3失点。花巻東は2回裏に佐々木隆貴(2年)のタイムリーで1点を返したが、2回を終わって1-6と5点リードされていた。
反撃は3回に起こった。打線がつながり、一挙、5得点。しかし、5回に押し出し四球で1点、8回にはタイムリーで1点を失った花巻東。6-8と2点リードされて9回裏の攻撃に入った。
この回先頭の大沢永貴(2年)がライト前ヒットで出塁すると、太田知将(2年)が四球を選び、代打・大向優司(2年)がサードへバント。一塁へ執念のヘッドスライディングを見せ、セーフ。あっという間に無死満塁とし、5番・高橋翔飛(2年)がライトオーバーの2点タイムリー2ベースを放ち、同点に追いついた。6番・小原が四球でなおも無死満塁。7番・佐々木隆が粘りに粘って8球目をセンター前にはじき返し、花巻東がサヨナラ勝ちを収めた。

実は8回の攻撃で花巻東は勝負に出ていたが、チャンスを潰していた。無死一、二塁のチャンスで佐々木洋監督は代打に大谷翔平(2年)を送った。大谷は今夏の甲子園後に骨端線損傷であることが分かり、地区大会からスタメンを外れていた。県大会では勝負所での代打として起用され、この日も2点差の8回に「巡りもよかった」(佐々木監督)と登場した。大谷は大きなレフトフライを放った。二塁走者は三塁へ楽々、タッチアップできる当たりだったが、二塁走者・佐々木隆は走らなかった。さらに、1番・岸里も同じようなレフトフライを放ったが、アウトカウントを2死と間違っていた佐々木隆は打球が上がった瞬間に離塁しホームに向かっていた。その佐々木隆に最後は回ってきて、試合を決めたのだ。大谷は「あそこで隆貴に回ってくるのは運命かなって。打ってくれて嬉しかった」と称え、本人も「2回、走塁でミスしてしまって。最終回は絶対に勝つって思っていて、つないでくれと思っていました」と喜んだ。

[stadium]八橋球場[/stadium]では、青森山田(青森第3代表)が盛岡三(岩手第3代表)に10-3の7回コールドで、学法福島(福島第2代表)は秋田工(秋田第2代表)に3-0でそれぞれ勝利した。



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[目次]

1.昨秋以来の東北大会
2.いよいよ開幕
3.コールド負け寸前からひっくり返した古川学園らがベスト8に名乗り

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コールド負け寸前からひっくり返した古川学園らがベスト8に名乗り

第64回秋季東北地区高等学校野球大会総括(上) | 高校野球ドットコム

聖光学院・ホームイン

9日は[stadium]こまちスタジアム[/stadium]、[stadium]八橋球場[/stadium]の両球場で2回戦3試合ずつが行われた。
[stadium]こまちスタジアム[/stadium]の第1試合は聖光学院(福島第1代表)-一関学院(岩手第2代表)。聖光学院は3回に2本のタイムリーヒットで2点を先制し、7回には相手の失策や暴投も絡んだが、3点を加えた。投げては、エースの岡野祐一郎(2年)が7安打完封。三塁を踏ませたのは8回の1度だけと安定した投球を見せた。聖光学院・斎藤智也監督は新チームが始まった時から「秋にしては、うちでは歴代で指折り」と自信を持っていたチームで、この日の試合後も「どっしり野球をやる子たちが多い。去年は個々の力で勝負にいったけど、今年は磨けば光る、いぶし銀とはまだいかないから“いぶし銅”くらいだけど、渋みのあるチーム」と評価した。

第2試合、能代商(秋田第1代表)-古川学園(宮城第3代表)は、球史に残る大どんでん返しの試合だった。
今夏の甲子園で秋田県勢の初戦連敗記録を阻止し、2勝した能代商。新チームも前評判は高く、期待されていたチームで、この日も5回までに9-0とリード。7回表にも1点を加え、その裏を締めれば、7回コールドで勝利するはずだった。

古川学園は、6回まで4番・工藤藏嗣(2年)の2安打のみ。能代商の先発・畠山を捉えきれずにいた。7回裏、古川学園は1番・黄海悠馬(2年)からの攻撃で、黄海は四球を選ぶ。その後、3連打やパスボール、適時打でこの回に5点を返し、8回には、一死二、三塁で、ここまで3安打の工藤がレフトスタンドへ3ラン。9回には、工藤が2死満塁でセンター前に2点タイムリーを放って同点。そのまま延長に入り、11回裏、一死二塁で2番・永浦泰斗(2年)のレフト前ヒットで古川学園はサヨナラ勝ちした。

古川学園小野寺愛彦主将(2年)は「宮城県の代表としてコールド負けはありえないので。それは恥ずかしいので、何が何でも9回までやるぞと言っていました。最後も3イニングしかない、ではなく、3イニングもあると思っていました」。コールド負け寸前の10点ビハインドから、試合をひっくり返した原動力は「宮城の代表校」というプライドと、残りイニングを「しか」ではなく「も」あると考えた思考だった。

第3試合、利府(宮城第1代表)-青森山田(青森第3代表)は、どちらもチャンスでのあと1本が出ずに0-0のまま延長に入った。そして、延長12回裏、四球、安打、四球で無死満塁とした青森山田利府に失策が出てサヨナラ勝ちした。

[stadium]八橋球場[/stadium]では酒田南(山形第1代表)が福島商に10-0の6回コールド、光星学院(青森第1代表)が石巻工(宮城第2代表)に8-1、東海大山形(山形第2代表)が大湊(青森第2代表)に15-1の5回コールドでそれぞれ勝ち、準々決勝に駒を進めた。

第64回秋季東北地区高等学校野球大会総括(下)に続く

(文=高橋昌江

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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