第93回全国高校野球選手権大会総括(1/3)
第93回全国高校野球選手権大会総括(1/3)2011年08月22日
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【目次】
強打と粘り強さをみせた日大三と、光星学院の躍進
感動を与えた能代商業と、攻めのチームに転換した作新学院
花巻東・大谷、智弁学園・青山、山梨学院・小林…来年も逸材ぞろい!(近日公開!!)
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強打と粘り強さをみせた日大三と、光星学院の躍進
15日間の戦いを終えた甲子園球場
その言葉を信じて、夏に向けて追い込み続けた日大三ナインはさらに強さを増していた。西東京大会では、準々決勝までの5試合をコールドで勝ち上がるなど、圧倒的な打力をみせつけた。決勝では2対1で早稲田実業を破って甲子園出場を決めたが、甲子園の組み合わせ抽選会で主将の畔上翔は、強豪校が混在する最も厳しいブロックの番号を引いた。それでも、日大三は真紅の優勝旗までの「6つの白星」をエース吉永の力投と、1番から9番までの切れ目のない強打線で、重ねていった。
日大三・吉永健太朗
準々決勝の習志野戦では再三、三塁にランナーを置きながらも、終わってみれば完封勝利。準決勝の関西戦では好リリーフ。さらに光星学院との決勝戦でも、完封で優勝投手に。連投でベストコンディションでの登板ではない中でも、吉永は外を上手く使った投球で、3番川上竜平、4番田村龍弘などの右打者には、追い込んでからスライダーを決め球に、三振を奪う場面が目立った。
準決勝までは、内角中心の配球で打者を打ちとってきた吉永だったが、ここにきて投球スタイルをガラリと変えた。疲れからコントロールが効かず、本調子でない中での外いっぱいで緩急を生かした吉永の投球は見事だった。打線も二桁得点の試合が、6試合のうち4試合。準決勝以降も5番高山俊を中心に4本塁打を記録し、まさに圧倒的な力の差を見せつけた。決勝戦でも、日大三は光星学院のエース秋田教良の唯一の失投を見逃さなかった。
3回、2死から秋田は死球でランナーを出すと、続く4番横尾俊建が打ち上げた打球が風に流されてセカンド後方へのポテンヒットに。この間に一塁ランナーの畔上が三塁へ到達。日大三には、こういった相手の僅かな隙につけ込んで、必ず得点につなげていく強さがあった。この好機の場面で、5番高山俊が、秋田のスライダーをフルスイング。これが先制3ランとなり、日大三はこの一球で完全に流れを掴んだ。7、8回には一挙7得点を奪い、試合を決定づけた。
光星学院・秋田教良
先制のチャンスは3回表にあった。二死から、1番澤辰寿が右前打で出塁するも、2番和田祥馬の打席で、ワンバンドになった吉永の球に澤が反応し飛び出すも、タッチアウトに。足に自信があった澤だったが、判断が鈍り、スタートに迷いが生じた。5回にも一死一、二塁のチャンスから、9番秋田の右前打の間に、二塁ランナーの金山がホームに突っ込むも惜しくもタッチアウト。
「試合前は、口ではみんな緊張はないと言っていたけど、やっぱり固かったですね」と秋田は振り返る。ここまでの日大三と対戦してきたチームの攻撃を振り返っても、チャンスを作るが生かし切れない。気づかぬうちに、日大三を前にすると本来のプレーが出来なくなる。というよりも、相手の武器を封じるだけの強さが日大三にはあったのだろう。
しかし、それでも光星学院の決勝までのプレーは、間違いなく東北地区に勇気を与える戦いぶりだった。
(文=編集部)