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第93回全国高校野球選手権徳島大会展望

2011.07.09

第93回全国高校野球選手権徳島大会展望2011年07月08日

 6月18日に開幕した沖縄大会を皮切りに各地で球音が響く「第93回全国高等学校野球選手権・地方大会」。四国4県でも7月9日開幕の徳島大会をスタートに、11日開幕の香川大会、14日開幕の愛媛大会、そして16日開幕の高知大会の計4大会において160試合の熱戦が繰り広げられることになっている。

 そこで、「高校野球情報.com」では今回4県ごとの直前展望を紹介。このサイトでしか見られないマル秘チーム、選手情報も交えつつ、組み合わせ抽選によってはっきり見えてきた勢力図を提示していきたい

徳島県 成績データ

徳島県
参加32校 7月9日(土)~7月25日(月) オロナミンC球場

成績データ
<昨年大会優勝校>
鳴門(15年ぶり6度目)甲子園1回戦敗退
<センバツ出場校>
城南(21世紀枠・初出場)甲子園2回戦敗退
<昨夏新人ブロック大会優勝校>
南部:小松島
中央A:徳島商
中央B:徳島城南
西部:川島
<昨秋県大会>
優勝:徳島城南(初優勝)
準優勝:徳島商
3位:小松島
<昨秋四国大会成績>
徳島城南(初出場):2回戦(初戦)敗退
徳島商(2年ぶり28回目):2回戦敗退
小松島(2年連続7回目):1回戦敗退
<今春県大会>
優勝:城東(初優勝)
準優勝:鳴門
ベスト4:生光学園徳島商
<今春四国大会成績>
徳島城南(4年ぶり3回目):1回戦敗退
城東(4年ぶり2回目):1回戦敗退

<総体協賛ブロック大会優勝校>
南部:海部
中央A:徳島城南
中央B:鳴門工
西部:池田


ブロック別展望

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竹内勇太(城南)

第1シード:城南ブロック

 21世紀枠で初出場を果たしたセンバツではアジアAAA選手権 全日本高校選抜候補・竹内勇太(3年)をはじめとするお得意の打棒で、報徳学園(兵庫)の好投手・田村伊知郎(2年)を見事打ち崩した徳島城南。だが、ブロック内の各校を見渡せば春夏連続甲子園への道が平坦ではないことは明白である。

 たとえ城西との初戦を勝ち上がったとしても、次なる対戦相手は「ミスターフルスイング」林侑樹(3年)を4番に擁する強打の鳴門第一と、旧チームでは強打線を仕上げてきた馬場潤一郎監督率いる阿波が激突する開幕戦の勝者。

 6月までは脇腹痛を抱えて公式戦登板がなかった140キロ右腕・竹内、その間に松原直之(3年)のリードに支えられてマウンドを守った左腕・奥浦康平(3年)、井上拓也(3年)が大量失点を招くようだと、一気に甲子園行きへの黄信号が灯りそうだ。

 センバツまでの練習で見せた謙虚な姿勢を忘れず、センター多田康貴(3年)が見せた細やかな守備位置修正に代表される「スモールベースボール」も駆使すること。そこが城南が再び栄冠をつかむに最大のポイントとなるだろう。

 また、このブロックには興味深い対決もそろった。阿南工は強打のライト髙野聖也(3年)を中心に、勢いにのると手のつけられない豪快野球が特長。生光学園中では出本優太郎生光学園2年)との2本柱でヤングリーグ春季大会全国制覇を果たした井上宝(2年)をエースながら、「相手の穴を針で突いていく」(福岡秀佑監督)チームプレーに徹する城ノ内との「真逆対決」は、玄人好みの好カードである。

 さらに最速141キロ右腕・大藤謙吾(3年)がエース、小笠哲矢(3年)、岡本直弥(3年)のスイングが鋭い選手が中軸を組む池田と、総体協賛ブロック大会では城南を9回まで1失点に押さえ込んだ軟投派左腕・沖垣泰史(3年)、右オーバーハンドからの豪腕で今春大会ベスト4の立役者となった木下雄介(3年)の2本柱を擁する生光学園が激突する7月11日の第3試合は、1回戦にするには勿体無い一戦。オロナミンC球場へ足を運ぶ皆さんは、県内トップレベルの攻防をぜひ堪能してもらいたい。


ブロック別展望

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大幡秀志(鳴門)

第4シード:鳴門ブロック

 昨秋県大会はまさかの2回戦敗退も今春県大会では準優勝と見事に修正。平成18・19年の徳島商以来の夏連覇に挑む鳴門が中心だが、ここも曲者がそろったブロック。ベスト4までに一波乱、二波乱が生じる可能性を大いにはらんでいる。

 鳴門のエースは右横手投げの大幡秀志(3年)。コースに決まった場合は球速以上の威力を有するが、森脇稔監督も「気負ってボールを引っ掛ける癖がある」と指摘するように、安定感をやや欠くのが難点。

 安定感では大端に勝る小林直人(2年)との継投と、三塁手に1年生の河野祐斗(鳴門第二中出身)を抜擢した内野守備のサポートが連覇への必須条件となる。

 その鳴門と初戦で対決する脇町。今年は昨年エースを張った國岡佑樹(愛知工業大)、4番の橋本侑磨(創価大)といった大型チームから一転、小柄な選手がスタメンを占めるが、162センチながら「ベンチプレスは100キロを上げる」(住吉圭吾監督)朝倉健斗(3年)をはじめ、「山椒は小粒でもぴりりと辛い」チームを作ってきている。鳴門にとっては要警戒の初戦となるだろう。

 さらにこのブロックには187センチ90キロ・最速138キロの超大型右腕・戸田啓太(3年)率いる板野も健在。「冬に覚えたシュートが有効に使えるようになった」彼が本領を発揮できれば、強振が持ち味の奥村稔(3年)を4番に爆発力ある打線を有する徳島科学技術との初戦、さらに鳴門脇町の勝者と対戦する2回戦を超えた飛躍も十二分に望める。

 また、小松島西新野の1回戦では、小松島西左腕・住田利喜(3年)、新野右腕・比松湧希(3年)による豊富な経験と制球力を競い合う両エースに注目。徳島城北対名西は右ひじ痛で総体ブロック大会での登板がなかった183センチ右腕・山下渓登(徳島城北2年)の回復具合と、部員10人の名西がどれだけ相手に食い下がれるかがみどころだ。


ブロック別展望

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幸浦公平(城東)

第3シード:城東ブロック

 右サイドハンドの幸浦公平(3年)、その彼を巧みなリードと強肩で牽引する石田三四郎(3年)のバッテリーを軸に、粘り強い戦いで今春県大会を初制覇した城東。だが、初戦の相手は2年連続で鳴門工に。その組み合わせが決まった瞬間、抽選会場には一番のどよめきが起こった。

 その鳴門工は6月の総体ブロック大会を制するなど、夏へ向けての準備は着々と進んでいる印象である。

 まず投手陣では右腕の田中沢篤、左腕の光田周斗という3年生2本柱の故障により、総体ブロック大会ではエースナンバーを背負うようになった右腕・美間優槻(2年)が、最速139キロの重い直球と鋭いスライダーを武器に急成長。これまでは試合毎の波が大きかった制球力も、「波も小さくなってきたし、最近では続いて抑えられるようになった」と高橋広監督を安心させるレベルにまで達してきた。

 また、美間は4番としても鋭いスイングスピードで外野の頭を超える長打を連発。俊足強肩のショートストップ・山下遼(3年)、春季大会における右手首骨折から復帰したリードオフマン・中山拓哉(2年)らが前後を固める打線の核となっている。

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田中沢篤(鳴門工)

 さらに7月頭の練習試合では復帰後調子の上がらなかった田中沢篤も好投を見せるなど、ここにきて戦力も完全に整ってきた鳴門工。もちろん、不確定要素の多い夏で力を100%発揮することは難しいものの、チームの現時点における彼らの力は四国内でも1・2を争うものである。

 昨秋・今県大会の不振によりノーシードで迎える夏。どの試合も激戦となるのは必至だが、トップバッター橘慎平(3年)が仕掛ける小技を押さえ込み、昨夏苦杯を舐めた城東へのリベンジを果たすことができれば、3年ぶり6度目となる夏の晴れ舞台出場。そして来年4月からは県立鳴門第一と統合し「県立鳴門渦潮高」となるため、市立鳴門工としては最後となる夏を最高のフィナーレで飾る可能性も大きくなってくるだろう。

 ただし、このブロックには両校の他にも強豪が居並ぶ。まずは「スタメン9人中6~7人が走れる」(北谷雄一監督)スピードと、ボールの伸びには見るべきものがある左腕・佐藤大誠(2年)を全面に押したてる川島。そして「長友優一郎(3年)などバッティングもいいし、逆方向を意識させたら、ここに来て4番の山本史典(3年)も調子が上がってきました。投手も沼江亨(3年)を軸に、増田大輝(3年)や松本秀一(3年)もいるので、甲子園を狙っています!」と豊富尚博監督もチームの仕上がりに自信を示す小松島。

 さらに総体ブロック大会ではその川島に対し、夏を見据えた「明日なき戦い」で見事逆転勝ちを果たした穴吹などもおり、ことこのブロックについてはベスト4進出チームを完璧に予測するのは極めて困難な状況である。


ブロック別展望

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龍田祐樹(徳島商)

第2シード:徳島商ブロック

 「大会2日前には50メートルダッシュ200本、3日前には5キロ走2本。龍田祐樹(3年)は追い込んでマウンドに上がっていた」(森影浩章監督)総体ブロック大会では鳴門工の前に龍田が9失点し初戦敗退に終わったとはいえ、このブロックが徳島商を中心に動くのは間違いない。

 投手陣では最速142キロの直球とスライダー、ツーシームなどの多彩な変化球を携えて最後の夏に臨む龍田に加え、右の坂本温基(羽ノ浦中出身)、左の前川紀洋(瀬戸中出身)といった1年生コンビが台頭。

「春に投げた(右アンダスローの)元木克聡(2年)よりゲームを作ってくれる」と指揮官も驚かせる練習試合での活躍で、今大会登板をも視野に入れるようになってきた。

 一方、彼らのストロングポイントであるバッティングも、幸田健斗(3年)をトップに、3番に何でもできる増富太鳳(3年)、4番に長打力にますます磨きがかかった佐藤健人(3年)が定着したことで、どこからでも点を奪える切れ目ない打線が完成しようとしている。

 「目標は1つしかない」と増富主将もきっぱり述べたように、彼らの目指すのは4年ぶり23度目の甲子園。まずは那賀との初戦で勢いに乗り、制球力優れる左腕・川人祐太(鴨島商2年)、開会式では選手宣誓を任された、野球センス溢れる坂東辰哉(3年・海部)のいずれかと対戦する2回戦でその勢いを倍加させて、頂点への階段を駆け上りたい。

 一方、組み合わせの反対側に目を転じると、阿波西は四国屈指のアンダーハンド・武田直也(3年)が君臨する阿南高専と対戦。「全て先発は武田でいくが、そこからの継投をしっかり考えていきたい」と高専勢初の甲子園を見据えた継投策を明言した小松実監督が巡らす策略に対し、正規部員8人で春季県大会ベスト8に輝いた要因ともなった「懸命さ」を出し切れるか勝利へのかぎとなる。

 さらにこのブロックには一昨年代表の徳島北も。右サイド気味からの重い直球に見るべきものはあるものの、遊びのなさから痛打を浴びることも多いエース・坂東拓哉(3年)を2年生4番の木野直樹がいかにリードできるかが、富岡西との初戦を勝ち抜くポイントになりそうだ。

(文=寺下 友徳 )

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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