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データから見る選抜2011【投手部門】

2011.03.14

第25回 データから見る選抜2011【投手部門】2011年03月14日

  第83回選抜高校野球大会の開幕が近付いてきた。15日には組み合わせ抽選会が行われ、各校の対戦相手が決まる。19日からは甲子園練習が始まり、春の仕上がり具合の輪郭が見えてくるが、その前に、昨年の秋季大会の成績から各項目ごとに今大会の注目ポイントを見ていきたい。

項目別 今大会注目ポイント

【投球回数】
1 野田昇吾 鹿児島実 105 13試合11完投
2 葛西侑也 大垣日大 102 15試合10完投
3 尾松義生 明徳義塾 91 11試合11完投
4 西野健太郎 京都成章 89回1/3 11試合9完投
5 飯塚孝史 履正社 87 11試合9完投

     

【防御率】※各チーム主戦格投手並びに、投球回数が30イニングを超えるもの
1 水原浩登 関西 0.30
2 吉永健太朗 日大三 0.70
3 堅田裕太 関西 0.85
4 斎藤健汰 横浜 1.07
5 佐藤拓也 浦和学院 1.13

(参考=投球回数30に満たないが登板機会の多かった投手)
川上竜平(光星学院) 0.45 4試合に先発20回
亀田樹(大館鳳鳴) 1.07  6試合に登板25回1/3
波多野陽介(日本文理) 0.82  3試合に先発11回
吉野和也(日本文理) 0.00  2試合に先発12回1/3
望月建吾(静清) 0.94 4試合に先発28回2/3
西嶋健吾(加古川北) 0.00 3試合に先発18回
土肥耕陽(総合技術) 1.08 5試合に登板16回2/3

【被安打率】※登板機会または投球回数が顕著に少ない投手を除く
1 堅田裕太 関西 4.52
2 水原浩登 関西 4.75
3 望月建吾 静清 4.71
4 上野山奨真 智弁和歌山 4.81
5 齊藤浩平 大館鳳鳴 5.09

     

【奪三振率】※登板機会または投球回数が顕著に少ない投手を除く
1 川上竜平 光星学院 12.60
2 田村勇磨 日本文理 11.73
3 青木勇人 智弁和歌山 10.01
4 釜田佳直 石川金沢 9.55
5 堅田裕太 関西 9.19

【与四死球率】
1 野村亮介 静清 0.96
2 葛西侑也 大垣日大 0.97
3 三好匠 九州国際大付 1.48
4 山内達也 横浜 1.48
5 中谷佳太 天理 1.72

 各チーム試合数の差など状況は異なるため、上記の成績はあくまでも参考程度に見てほしいが、やはり中国大会を無失点で優勝した堅田、水原の関西投手陣の数字が目につく。
この2人は1年秋も主戦格として投げているので、その比較もしてみたい。


関西・堅田と水原を比較する

     

     

堅田裕太(関西)
年度 投球内容 投球回数 防御率 被安打率 奪三振率 与四死球率
2009秋 8試合5完投 53回1/3 0.34 4.22 10.97 2.87
2010秋 8試合6完投 63回2/3 0.85 4.52 9.19 3.68

     

水原浩登(関西)
年度 投球内容 投球回数 防御率 被安打率 奪三振率 与四死球率
2009秋 5試合2完投 26回2/3 1.69 7.09 7.42 2.70
2010秋 6試合2完投 30回1/3 0.30 4.75 8.31 2.08
データから見る選抜2011【投手部門】 | 高校野球ドットコム

堅田裕太(関西)

 2009年は中国大会準優勝、2010年は中国で優勝し神宮大会1回戦(2010年11月13日)敗退と最終成績に若干の違いはあるが、2人共通するのはマウンドに上がる機会がほとんど同じパターンだったということ。特に中国大会は1回戦から準決勝まで堅田が先発、決勝は水原が先発というパターンはまるっきり一緒だ。

 堅田が数字面で前年を下回った一番の要因は神宮大会での明徳義塾戦があったため。それを考慮すると、水原が大きく成長し、堅田は変わらずの安定感。江浦監督が投手力に自信を持つのもこの数字面に表れている。

 関西と同じダブル(複数)エースを備えたといえるのは光星学院横浜静清天理智辯和歌山創志学園6校。このうち、天理創志学園は継投が勝ちパターン。特に天理は11試合中10試合が継投だった。
また智弁和歌山は近畿大会1回戦(2010年10月31日)で青木が完投したように、状況次第で継投も完投もできるチームと言える。
複数エースを擁するチームに共通するのは、相手打線と調子の見極め、それに起用判断。
指揮官の采配加減が試合での大きなカギとなる。


今春の絶対的なエースは

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吉永健太朗(日大三)

 今逆に絶対的なエースを持つチームは、まさにエースと心中。昨秋、一人でマウンドを守り抜いたのは、佐渡・鎌田、報徳学園・田村、明徳義塾・尾松の3人。他に秋の日本一投手、日大三・吉永や、準優勝の鹿児島実・野田、さらには大垣日大・葛西、浦和学院・佐藤といった神宮上位のチームがマウンドに太い柱を持つ。

『春は投手力』昔からこの表現は選抜でのカギとなっている。寒さの残る気候と実戦感覚が戻りきらない中で、打者はどうしても仕上がりが遅れるからだ。
その投手力の中で最も重要なのは制球面。特に四死球など余計な走者を出すことは極力少なくしたい。制球面で自信を持つ投手には技巧派タイプが多いが、今年は本格派タイプと言える静清・野村が与四死球率でトップに立ったのは興味深いところ。同じ東海地区の大垣日大・葛西も2番目に良く、打力の高いチームが目立った昨秋の東海大会で、いかに制球が重要だったが見てとれる。

 昨年優勝投手となった興南島袋洋奨(現中央大)秋季大会で防御率0.00、被安打率と奪三振率は出場主力投手の中でトップ、与四死球率は3位だった。一昨年の清峰今村猛(現広島)、3年前の沖縄尚学東浜巨(現亜細亜大)といった近年の優勝投手も秋から安定した数字を残していた。
一方で、一昨年4強の報徳学園宮谷陽介(現筑波大)は出場した主力投手の中で最も悪い防御率だったが、選抜初戦では見事な制球力を見せて完封勝利を飾った。つまり冬場にしっかりとした制球を身につければ、秋とガラッと変わった姿を見せることができると言えよう。

(文=松倉 雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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