第95回記念選抜高校野球大会は山梨学院の優勝で幕が閉じた。

 今センバツを盛り上げた高校野球的なベストナインと、ドラフト候補として取り上げるベストナインを取り上げたい。

 このベストナインではルールを設けた。

・1校1人
・高校野球的、ドラフト的な選手は被らせない

 躍進した学校になると2人以上を選びたいと思わせるほど選手の質が高いが、そこは多くの選手を選ぶ方法を選択した。

 ドラフト的なベストナインは将来的にNPBを目指せる選手たちを厳選した。高校野球的なベストナインとの違いは、結果に関わらず、内容を見てポテンシャルの高さを感じさせた選手を選出した。初戦敗退でも選ばれた選手もいる。

ドラフト的なベストナイン



ベストナインの顔ぶれ

投手 前田 悠伍大阪桐蔭
 初戦の敦賀気比(福井)戦、準々決勝の東海大菅生(東京)戦はいずれも2ケタ奪三振だけではなく、完投勝利を挙げた。最速147キロの直球には凄みがあり、チェンジアップ、スライダー、カーブも精度が高く、ここ一番の投球は見事だったが、準決勝の報徳学園(兵庫)戦では、悔しい敗戦となった。それでも前田の評価は揺るがない。注文をつけるところはまだあるが、今大会のベストナインには相応しい。

捕手 堀 柊那報徳学園
 今年の世代屈指の強肩捕手として注目され、健大高崎(群馬)、東邦(愛知)、仙台育英(宮城)、大阪桐蔭(大阪)を破っての決勝進出は堀の捕手力の高さの結果でもあった。キャッチング、各投手への適切な声かけなど、捕手に必要な細やかな部分が見られた。打者としても、シャープな打撃で次々と安打を量産。そして大阪桐蔭戦では自慢のスローイングを見せつけ、アピールに成功し、一気に知名度を高めた。

一塁手 真鍋 慧広陵
 今年の世代を代表するスラッガーとして注目され、初戦の二松学舎大附(東京)戦、準々決勝の専大松戸(千葉)戦と猛打賞を記録した一方で、厳しく攻められた海星(長崎)戦、山梨学院(山梨)戦では1本が出なかった。体格、打球速度、飛距離ではドラフト的には文句なしだろう。

 ただ、厳しい攻めをされても、それをものともしない強打は見せてほしかった。真鍋自身、打ち損じをしてしまったことと、どのコースでも打てる打者になりたいと語っていた。甲子園を見て、広島の各校はこれから厳しい攻めをすることが予想されるが、それを乗り越えて、真のスラッガーになってほしい。

二塁手 米津 煌太大垣日大
 初戦で敗れてしまったが、二塁手でこれほどスケールがあり、技術も高く、スピーディーな二塁守備をこなせる選手がいるのかと驚かされた。もともとは遊撃手だが、二塁手の守備を見ても動きの良さが光る。打撃面でも、無駄がなくシャープな打撃で安打を量産する。夏までの進化が楽しみだ。

三塁手 森田 大翔履正社
 今年の三塁手の中で最もパワーを感じられた強打者。初戦で敗れたが、中前安打など捉える打球を見るとインパクトの強さが感じられる。技術的にも高度で、ポテンシャルも高い選手として選出した。

遊撃手 進藤 天山梨学院
 好遊撃手が多い中で、躍動感のある動きを見せ、何よりパワーがあることが選出の決め手となった。

 NPBの菊池 涼介内野手(広島)、田中 幹也内野手(中日)のように守備型で、それほど体が大きくなくてもコンタクト力の高さは人並み以上に飛ばす選手がいるが、進藤はそういう選手になっていくのではと期待している。

外野手 髙森 風我作新学院
 準々決勝まで苦しい打撃が続いていたが、準々決勝でついに本塁打を放った。打った瞬間、本塁打と分かる打撃だった。ワンテンポ遅れる打撃フォームとなっているのが気になっていたが、本人はそれを自覚して、修正を重ねながら本塁打にできた。走塁、守備でも身体能力の高さが伺える。ポテンシャルの高さを春の大会、夏の大会で思う存分発揮してほしい。

外野手 岡本 昇磨東邦
 甲子園でも本塁打を放ち、強靭なフィジカルをしっかりと生かす技術の高さを持った左の強打者だ。投手としても140キロを超える強肩もあり、見ていて頼もしさがある。投打ともに伸びてきたが、やはり打者として大きな可能性を感じさせる。

外野手 寿賀 弘都英明
 強打の左打者。投手としても左腕から140キロを超える速球にキレ味鋭いスライダーを低めに集めることができ、能力の高さを実感させる。打者としてはパワフルな打球で、広角に長打できる技術の高さもあり、将来有望な逸材として選出した。

(文=河嶋 宗一