永田イズムで甲子園にたどり着いた日大三島 聖隷クリストファーなどの台頭も目立った静岡大会
日大三島・松永陽登君
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昨年の秋季県大会と東海大会でも優勝してセンバツ甲子園出場を果たした日大三島が、夏の静岡大会も制して、春夏連続出場を果たした。大会前から、そのチーム力は高く評価されていたが、春の優勝校の浜松開誠館や静岡、常葉大菊川、静清など追随する勢力も力があり、混戦が予想されていた。
混戦を順調に勝ち上がっていった日大三島は、エースで4番の松永陽登投手(3年)を軸として、チームはしっかりとまとまっていた。それに、報徳学園(兵庫)で選手としても監督としても全国制覇を経験している永田裕治監督が就任して3年目。「何かにつけて、大人しい静岡東部の生徒たちに、勝負への執念を植え付けた」と、しっかり永田イズムも浸透させた。背番号10の加藤大登主将がよくチームをまとめた。初戦(2回戦)が浜松商、3回戦が藤枝明誠と、大会序盤から決して組み合わせに恵まれていたわけでもなかった。それでも、そこをスイスイと勝ち上がっていったのは、センバツ出場を果たしている自信の裏付けもあったであろう。
静清の選手たち
決勝の相手となった静清は、第1シード校としてある程度順調に勝ち上がってきたが、6回に四球を挟んでの7連打などの4得点もあり、日大三島が11安打8得点を挙げて快勝した。日大三島としては33年ぶり2回目の甲子園出場となった。リードオフマンの京井聖奈内野手(3年)、3番の池口奏内野手(2年)らのセンスの良さも光った。
静清は中盤まで食い下がったものの及ばなかった。昨秋は地区予選前にコロナが発生して出場を辞退。新チームの初公式戦は今春の中部地区予選が最初という苦しい状況から、春季大会でも結果を出してシードを奪い、夏もここまでの進出だった。
優勝した日大三島が最も苦戦した相手が準決勝の掛川西だった。掛川西は、今年はノーシードで挑む戦いとなったが、3回戦で浜松工に1対0と競り勝ち、4回戦では昨夏に敗れた東海大静岡翔洋に9対2と快勝して勢いづいた。
注目のカードとなった静岡との準々決勝の名門校対決で、0対1でリードされていた9回に3点を奪い逆転勝ちした。そして、準決勝では、日大三島と延長13回タイブレークとなり、先攻の掛川西は2点をリードしたものの、その裏に3点を奪う日大三島の勝負強さに屈した。それでも昨年に続くベスト4進出で、西部地区の名門校健在ぶりを示したのは立派だった。
藤枝明誠応援席
昨秋の東海地区大会で準優勝しながら、センバツ甲子園に選出されなかった聖隷クリストファーの戦いぶりも注目された。センバツの選考漏れは、全国的にも話題となって、好むと好まざるにかかわらず、今大会は注目され続けた中で、1回戦で静岡市立を下し2回戦では春季県大会優勝校の浜松開誠館を下して波に乗った。
「自分たちは、力はなくても頭とハートを使って勝つ野球」を実践していったのは見事だった。初の甲子園には届かなかったものの、ベスト4進出は評価されていい成績だった。
静岡と静岡商の伝統校は、ともにベスト8で姿を消した。2連覇に挑んだ静岡は、注目の吉田優飛投手(3年)が必ずしも万全ではないという状況ながら、個々の高い能力で勝ち上がっていったのはさすがだった。試合としては4回戦の加藤学園との試合は見ごたえがあった。加藤学園がリードし、静岡が追い上げるという展開になったが、8回に2点差を追いついた静岡が9回に袴田航旭内野手(3年)のサヨナラ安打で勝利。その勝負強さは、やはり伝統の力でもあろう。
試合前、挨拶に向かう加藤学園
近年躍進著しい加藤学園も、「勝てなかったということは、残念で反省するところはある。しかし、昨秋から今春はどこか自信なさげにやっていたところがあったけれども、戦っていくうちに、堂々とプレーしていかれるようになった」と、米山学監督は、大会を通じての選手たちの成長を評価していた。
コロナが完全に収束していない中で、気の毒なこともあった。常葉大菊川は3回戦を勝ち上がった後、コロナ感染者が爆発的に増え、4回戦は急遽、メンバー変更を余儀なくされ、わずか11人での登録ということになってしまった。それでも、臆することなく静清に挑んだ。スコアとしては4対11ということになってしまったけれども、9回までしっかりと戦えたのはよかった。大会前の評価も高かっただけに、無念の思いもあったであろう。それでも、こうして最後まで戦えたことを糧として、次なるチームにつなげていってほしいと思う。
県全体としては、日大三島が台頭してきたことで、西部地区、中部地区、東部地区の3地区の勢力構図もバランスが整ってきたようでもある。
(文=手束 仁)