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仙台育英が王者に返り咲いた宮城大会を総括!公立校や新鋭校も大健闘

2022.08.04

仙台育英が王者に返り咲いた宮城大会を総括!公立校や新鋭校も大健闘 | 高校野球ドットコムトーナメント表
宮城大会の勝ち上がり

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夏の甲子園の組み合わせ
第104回大会 全国47都道府県地方大会の日程一覧
甲子園注目選手

 仙台育英が3年ぶり29度目の甲子園出場を決め幕を閉じた、第104回全国高校野球選手権宮城大会。今春の東北大会で準優勝した東北が準々決勝、昨夏県大会優勝の東北学院が2回戦、同準優勝の仙台三が3回戦で敗退するなど波乱も起こる中、優勝候補筆頭の 仙台育英が盤石な戦いぶりで頂点に立った。70校64チームによる14日間の熱戦を振り返る。

昨夏の雪辱を果たした仙台育英と、立ちはだかったライバルたち

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仙台育英・古川 翼

<p 1年前の夏、 仙台育英[ team]は屈辱を味わった。4回戦で[team]仙台商[="" team]に敗戦。春のセンバツではベスト8入りし、県内44連勝中と”無敵“だった絶対王者が、早々に姿を消した。それでもすぐにチームを立て直し、昨秋、今春は県大会を制覇。そしてこの夏、王座奪還を目指す負けられない戦いに臨んだ。

 自慢の投手陣は、5試合で5失点、2回戦以降はわずか1失点と安定感が光った。秋、春は[player]古川 翼[/player]投手(3年)、[player]斎藤 蓉[/player]投手(3年)、[player]仁田 陽翔[/player]投手(2年)ら左投手の活躍が目立ったが、今大会は[player]高橋 煌稀[/player]投手(2年)、[player]湯田 統真[/player]投手(2年)と、いずれも公式戦経験の少ない2年生右腕を先発で起用。高橋は16.1回を3失点、湯田は6.2回を無失点と、速球派コンビが期待に応えた。

 左投手では、エースナンバーを背負う古川が3試合で中継ぎ登板し14.2回を2失点と好投。甲子園では背番号10の斎藤ら、県大会で投げなかった好投手の起用法に注目したい。

 野手陣は本塁打0と爆発力には欠けたものの、計24盗塁を記録した機動力と堅い守りが際立った。チームトップ7盗塁をマークした「走れる4番」・[player]齋藤 陽[/player]外野手(2年)、勝負強さが光った「5番・捕手」の[player]尾形 樹人[/player](2年)、15打数10安打と打ちまくった「恐怖の9番」・[player]橋本 航河[/player]外野手(2年)ら、2年生が打線をけん引しているのも今年のチームの特徴だ。甲子園の舞台でも総合力の高さを見せつけ、悲願の初優勝を狙う。

 その [team]仙台育英を最も苦しめたのが、1回戦で対戦した柴田。昨年のセンバツに出場した実力校同士がぶつかる初戦は、今大会随一の好カードとなった。4回に小野 珀兎内野手(2年)が同点の2点適時二塁打を放ち、高橋をマウンドから降ろすと、4点を追う9回には古川から2点を奪う猛追。結果的には敗れたが、終始スタンドが沸く熱戦だった。

 決勝で敗れた聖和学園も、1対3と善戦した。エース阿部 航大投手(3年)は6試合中5試合で完投(うち2試合は完封)し、44.2回、計623球を投げ8失点。24打数13安打と大暴れした1年生リードオフマン・三浦 広大外野手が引っ張る打線も、東北伊藤 千浩投手(3年)、古川学園三浦 龍政投手(3年)ら県内屈指の好投手を打ち崩し、ノーシードから創部初の決勝進出という快挙を成し遂げた。

[page_break:仙台南が創部初の4強入り、今夏も目立った公立校の躍進]

仙台南が創部初の4強入り、今夏も目立った公立校の躍進

 仙台三が昨夏準優勝、今春ベスト4と健闘するなど、公立校の躍進も注目を集める宮城の高校野球。この夏も例外ではなかった。特筆すべきは仙台南の快進撃だ。1回戦では、春ベスト8のシード校で同じ公立校の仙台一と対戦。2点ビハインドの7回に打者一巡の猛攻で7得点を奪い、12対4で逆転勝利を収めた。これで勢いに乗ると、2回戦、3回戦、準々決勝は、いずれも1点差のゲームを制し、1977年の創部以来、初のベスト4入りを果たした。

 2回戦の利府戦は、10回に4番・佐藤 蒼空外野手(3年)の適時二塁打で勝ち越し辛勝。3回戦の仙台城南戦は9回にまたしても佐藤蒼が逆転サヨナラ打を放ち、試合を決めた。その佐藤蒼を欠いた準々決勝の名取北戦は、打線が毎回走者を出す積極的な攻撃を見せた一方、アンダースローの佐藤 和音投手(2年)、左腕の中川 陽市郎投手(3年)ら、タイプの異なる4投手の継投も光り、シーソーゲームをものにした。準決勝は新型コロナ感染者が複数出たことから出場辞退を余儀なくされたが、宮城の高校野球史に名を刻む見事な戦いぶりだった。

 仙台南に敗れた名取北も公立校。初の4強入りはならなかったが、8強入りは実に36年ぶりだった。快挙に大きく貢献したのが渋谷 悠翔投手(3年)、佐藤 暖久投手(3年)の二枚看板。4試合中、3試合は渋谷が先発し、佐藤暖が継投した。渋谷は仙台三打線を7回無失点に封じるなど、16.2回を4失点、佐藤暖は登米戦での11奪三振完封を含む17.1回、5失点と、実力通りの安定した投球を披露した。渋谷は1番打者、佐藤暖は4番打者として打線もけん引した。偉大なOB・岸 孝之投手(楽天)でも届かなかったベスト8は勲章だ。

 ベスト16に入った学校の内訳は、私立が8校、県立が6校、高専(仙台高専名取)と市立(仙台)が1校ずつ。県立校では仙台南名取北のほか、古川仙台三仙台東富谷が名を連ねた。チーム力の高さが目立つ一方、富谷の正捕手・藤田 京(3年)が2回戦で[stadium]仙台市民球場[/stadium]の左翼防球ネットに突き刺さる特大本塁打を放つなど、個々の力も育ってきている。

[page_break:新鋭校や連合チームも奮闘、「打倒・仙台育英」に名乗りを上げるのは?]

新鋭校や連合チームも奮闘、「打倒・仙台育英」に名乗りを上げるのは?

 強豪私立校や公立校のみならず、創部から間もない学校や連合チームの奮闘も大会を盛り上げた。2020年創部の日本ウェルネス宮城は、夏の大会では初めての8強入り。部の1期生で、3年間投打の柱を担ってきた早坂 海思投手(3年)は、1回戦の黒川戦で完封勝利を挙げると、準々決勝の 仙台育英戦でも7回3失点と粘投するなどし、その役割を果たした。本職は外野手ながら3回戦の古川戦で6回無失点と好投した菅井 惇平外野手(3年)をはじめ、早坂以外の投手も持ち味を発揮した。ベスト8に入った昨春、今春、そして今夏は、いずれも準々決勝で 仙台育英に敗戦。強敵を倒すため、チームを支えてきた1期生の卒業後も強いチームを作り上げる。

 今大会の出場校のうち日本ウェルネス宮城の次に歴史が浅いのは、2015年創部の登米総合産業。1回戦の仙台西戦を5対2で勝ちきると、2回戦でもエース志田 蒼太投手(3年)が仙台・齋藤 哲兵投手(3年)との手に汗握る投手戦を演じた。1点ビハインドの9回に大量失点を喫し2対10で敗れたが、初の「夏2勝」は確かに手の届くところにあった。ベンチ入りメンバー20人全員が出場する文字通りの「全員野球」も、強い印象を残した。

 連合チームは3チームあったが、このうち亘理伊具大河原商の3校連合が爪痕を残した。1回戦の築館戦はクリーンアップを中心に得点を重ね、先発・小島 大輝大河原商3年)が7回1失点と好投。コールド勝ちを収め、2016年の本吉響気仙沼西以来、6年ぶりとなる連合チームでの「夏1勝」を手にした。2回戦の東北生文大戦はサヨナラ負けに終わったが、1対2と食らいつき、小島は最後まで投げきる意地を見せた。

 春の地区大会は志津川との連合チームで臨んだ登米は、この夏は単独で出場。1回戦の仙台工戦は、エース左腕・守屋 匠投手(2年)が9回1失点と力投し2対1で勝利した。部員14人(記録員2人含む)は、1回戦を突破した単独チームの中では最少の人数だった。2回戦の名取北戦は0対2で敗れたが、守屋は2失点完投。守屋が3年生になる来年はさらなる飛躍が期待される。

 新型コロナの影響を受け、実力を出し切れなかったチームもあった。仙台育英の最大のライバルと目されていた東北は、ベンチメンバー12人を入れ替え準々決勝に臨んだが、聖和学園相手にコールド負け。仙台南東北生文大高は出場辞退を決断した。いずれも実力校だっただけに、悔やまれる結末となった。

 仙台育英の壁は厚いが、春、夏と続けてベスト4に入った古川学園や、近年安定した戦いぶりを見せている東北学院榴ケ岡東陵など、ほかにも対抗馬を挙げればキリがない。宮城の勢力図が今後どう変わっていくのか、秋以降の戦いからも目が離せない。

(取材=川浪 康太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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