井﨑 燦志郎(福岡)

 コロナ禍の影響も残った2021年夏は西日本短大附が11年ぶりの頂点に立った。強力打線が目立ち、激戦の福岡を制した。夏こそ8強に終わったが九州国際大付が春に続いて新チームの秋も福岡を制した。センバツに出場した福岡大大濠とあわせ、順当に強豪私立が勝ち上がった1年だった。しかし、その裏では着実に公立校が存在感を増していた。

 春季大会でベスト4に入ったのは戸畑だった。竹下 和希投手、松山 航士投手、木原 雄真投手と、公立校としては珍しい複数投手を擁して、文武両道を進める野球部らしく、クレバーな戦いもあって、上位進出を決めた。夏は準々決勝で0対1と敗れたが、優勝した西日本短大附を一番苦しめた。着実に頂点を狙える力をつけ始めている。

 また、春はベスト8だった八幡や、秋に8強に進んだ福岡など、進学校ながら勝ち進む力を備えた公立が台頭してきた。福岡は独自大会だった20年夏に優勝。オリックスにドラフト1位指名された山下 舜平大投手擁する福岡大大濠に決勝でサヨナラ勝ちしている。今年の秋も夏に甲子園出場した西日本短大附に3対2で競り勝つなど、実力は証明された。

 春の県大会後に行われた各地区に分かれた大会でも、公立校が上位に入った。北九州地区では戸畑が準優勝、福岡中央地区では嘉穂が優勝した。福岡地区では春日が準優勝し、筑後でも八女工が準優勝した。

 選手個人にスポットを当てると、ドラフトでは九州国際大付の最速152キロ右腕の柳川 大晟投手が日本ハム育成3位で指名されたが、地元ソフトバンクから育成枠で戸畑藤野 恵音内野手が1位、福岡の井﨑 燦志郎投手が3位で指名されるなど、公立校からの指名も目立った。藤野は1年夏からレギュラーを奪うなど走攻守そろった選手で、井崎は最速149キロ右腕。個々のレベルが着実に上がってきていることが分かる。その他では、春夏と2季連続で準優勝に終わった真颯館の左腕、松本 翔投手の好投が光った。

 コロナ禍により、絶対的な練習量が減った環境のなか、各校が工夫しながら練習してきた。素材のいい選手が集まっている私立に勝つために、福岡の公立校もさらなる努力でその力を拮抗させてきた。来年はその差がどうなるかにも注目される。