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本命不在の混戦模様 2年ぶり夏の甲子園の切符を勝ち取るのは?【鹿児島大会展望】

2021.06.30

 第103回全国高校野球選手権鹿児島県大会の組み合わせ抽選会が6月19日、鹿児島市の武岡台高校体育館で行われた。昨年は新型コロナの影響で中止となり、2年ぶりに開催される予定の夏の甲子園を目指す県大会の組み合わせが決まった。

 今大会の出場校は4つの連合チームを含む63チーム71校。7月3日に開幕し、鹿児島市の[stadium]平和リース[/stadium]、[stadium]鴨池市民[/stadium]の両球場で3回戦までは連日開催。準々決勝以降は[stadium]平和リース[/stadium]を使用し、準々決勝、準決勝は土日開催で17、18日が準々決勝、24日が準決勝、休養日を設けて26日決勝の日程で開催される(※雨天順延あり)。投手の連投を避け、夏場の選手の負担軽減を考慮し、準々決勝以降の試合日程に間隔を空ける方式が導入された。

 シード校は昨秋、今春、NHK旗の県大会実績による獲得ポイントに基づいて、第1シードが鹿屋中央で、以下、鹿児島城西鹿児島実神村学園樟南大島枕崎鹿児島商の8校がシードとなった。シード校の組み合わせも、上位シードから順番に入りたい場所を選択する方式となった。

 シード8校の位置が決まった後、残りチームが抽選を行い、対戦カードが決まった。開会式は実施せず、[stadium]平和リース[/stadium]開幕戦で対戦する2チームで午前9時から開始式を行い、串木野上新 遼太郎主将(3年)が選手宣誓する。

 この1年間は3つの県大会全てで優勝校が入れ替わっており、上位の実力は伯仲で本命不在の混戦となりそう。安定して上位の実績を残した鹿屋中央、昨夏の甲子園交流大会出場メンバーが残る鹿児島城西、連覇を目指す神村学園、伝統校・鹿児島実などが中心になるか。

 いずれにしても飛び抜けた戦力、実績を持つチームはなく、下位シードやノーシードからの番狂わせの可能性も十分にある。1投手につき1週間500球以内の球数制限が導入されたことにより、昨秋に続いて準々決勝、準決勝が土日開催、決勝前日にも休養日が設けられた。連投や連戦による負担は軽減されるものと思われる。その分、トータルの大会期間は順延なく消化できたとしても最短でも24日間の長丁場になる。

 投攻守、野球の力はいうまでもないが、長丁場の大会を戦い抜くことを見越した上での心身のコンディション作りが大きなカギを握る。組み合わせを4つのパートに分け、大会の展望、見どころなどを述べる。

【鹿屋中央〜樟南】

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西田 恒河(樟南)

 鹿屋中央はこの1年間、優勝はないものの全大会で4強以上の成績を残した安定感で第1に選出された。投手陣は折尾 凛主将(3年)、峯山 叶斗(3年)の左右2本柱を擁し、機動力を生かした攻撃力、ミスの少ない守備力も県下トップクラス。序盤から好チームとの対戦が予想され、気は抜けない。序盤をきっちり勝ち上がれば、終盤戦に弾みがつく。

 このブロックは、武岡台と春8強の加治木戦、離島の雄・徳之島鹿児島と1回戦の好カードが並ぶ。大会屈指の好左腕・西田 恒河(3年)を擁する第5シード樟南は得点力の向上が夏を制するカギになる。中軸の3番・下池 翔夢主将(3年)、4番・小峰 康生(3年)らが、どこまで打線をけん引できるか。

 西田は最速140キロ台の直球を柱にテンポ良く打たせて取り、三振も多い。西田が大会終盤でも思う存分力を発揮できるよう、2、3番手投手の台頭も待たれるところだ。好右腕・堀 峻太朗(3年)を擁する鶴丸、昨秋8強の川内と県立の実力校も虎視眈々と上位進出をうかがう。

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【鹿児島城西〜枕崎】

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乗田 元気(鹿児島城西)

 鹿児島城西枕崎と、南薩のシード2校が注目校。投手力の整備が課題だった鹿児島城西は、2年生左腕・津波 辰弥が先発して5、6回までの試合を作り、残りを短いイニングの投手リレーで切り抜ける独特の継投を確立させ、NHK旗を制した。乗田 元気主将(3年)、長 隆稀(3年)ら昨夏の甲子園交流大会を経験したメンバーも豊富に残っており、正真正銘の「夏の甲子園」を勝ち取る戦力は整いつつある。

 第7シード枕崎は伝統の「守り勝つ」野球を前面に押し出す。春の県大会準々決勝で神村学園を相手に5安打でコールド勝ちした試合が印象深い。エースの右腕・横原 翔太(2年)は打たれ強いが、2番手投手の台頭が望まれる。少ない安打数でも好機を着実にものにして、堅守で守り抜く野球を実践する。これに続くのは本川瑛光(2年)、玉城 琉之介(3年)の左腕2本柱を擁するれいめい、昨夏準優勝の国分中央、集中打が光る鹿児島工あたりか。加世田鹿屋農を1回戦の好カードに挙げておく。

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【鹿児島実~大島】

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大野 稼頭央(大島)

 第3シード鹿児島実が実力、実績で一歩抜けている。3番・城下 拡主将(3年)を中心に、切り込み隊長・井戸田 直也(3年)、打てる2番打者・平石 匠(3年)と好打者がそろい、迫力は十分ある。課題だった投手力はNHK旗で好投した右腕・大村 真光(3年)、計算ができる左腕・赤嵜 智哉(2年)を軸に整いつつある。

 このところ鹿児島城西神村学園といった新興チームに頭を抑えられている印象があるが、盟主奪還をこの夏にかける。追いかける一番手は第6シード大島。2年生左腕・大野 稼頭央がこの春で成長し、常速140キロに達する力強い直球を武器に春4強の原動力となった。バントをあまり使わず、打ってつなぐ打線にも独特の色がある。大会終盤まで勝ち上がることを見越すと島との往復を計算に入れる必要がある。新日程にどう対応するかもカギになりそう。春8強の鹿児島南は頼れる4番・有村 康介(3年)を中心に得点力が高い。鹿児島情報と昨秋8強の伊集院の対決は好勝負が期待できそうなカードだ。

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【神村学園〜鹿児島商】

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泰 勝利(神村学園)

 「連覇」を目指す第4シード神村学園がこのパートは抜けている印象がある。泰勝利(3年)、逆瀬川敬(3年)、内堀遼汰(2年)と最速140キロを超える投手陣を豊富に擁し、先発完投、いずれのパターンにも対応できる。打線も前薗奎斗主将(3年)、甲斐田 紘整(3年)らを中心に、いろんな組み合わせが考えられ、守備も複数ポジションをこなせる選手がそろう。

 県内無敗を続けていたが、春、NHK旗と力を出し切れない敗戦が続いた。挑戦者の気持ちで王座奪還に挑む。第8シード鹿児島商はNHK旗準優勝でシードの座を勝ち取った。先発は伊地知塁斗(3年)、坂口竜也(3年)、抑えに2年生エース三浦颯真をベースにした継投を確立し、NHK旗では大島、鹿屋中央に競り勝ち、決勝でも鹿児島城西を相手に接戦を演じた。最後まであきらめない粘り強さで古豪復活を目指す。

 攻撃力の高い尚志館加治木工、南薩の強豪・薩南工などが台風の目になるか。出水中央鹿児島玉龍は1回戦屈指の好カードになりそうだ。

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(文=政 純一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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