Column

“私学4強”健在、享栄にセンバツ4強中京大中京や春優勝の愛工大名電、東邦が続く

2021.06.22

 今春の県大会では、伝統的な“私学4強”と言われている名古屋市内の中京大中京東邦愛工大名電享栄の4校がすべてベスト8に残りシード校となり分散した。それらを追う存在としてはシード校として星城栄徳などもあげられる。そこに、ノーシードの中で至学館や愛産大三河、日本福祉大附に好投手のいる公立の刈谷国府蒲郡などがどこのゾーンに入ってくるのかということが注目された。

 有力校が春季県大会で結果を残してシード校となったということもあって、ベスト8までの組み合わせとしては、有力校が上手く分散したという印象だ。A~Hブロックをシード校メインで順番に展望していこう。

最注目は愛工大名電のFブロック、中京大中京のEブロック

“私学4強”健在、享栄にセンバツ4強中京大中京や春優勝の愛工大名電、東邦が続く | 高校野球ドットコム
東邦・鈴木唯斗

 Aブロックの星城は初戦が愛知啓成東海の勝者となる。星城はクレバーな好捕手森瀬 敬太主将が藤澤 侑也君、川村 珠右君、石田 将生君らの投手陣をリードしていく。春季大会の中京大中京戦で大活躍した溝﨑 悠貴君の打撃も注目だ。初戦を突破すれば、5回戦では愛産大三河もしくは足立 進悟投手が安定している国府あたりを待ち受けることになりそうだ。愛知啓成と愛産大三河は春季県大会はベスト16まで進出している力がある。

 栄徳のBブロックには昨年の夏季大会で準優勝を果たしている愛産大工、毎年夏までにはチーム力を上げてくる伝統校の大府、このところ躍進している岡崎学園などがいる。大府では竹内 裕人君の投打に期待がかかるが、ことに破壊力のある打撃は注目される。名経大高蔵名経大市邨の同系列の両校もこのブロックだ。栄徳は、昨秋は柱不在で苦しんだが、春季大会で山下 稜太郎君が成長して、高木 快大君との2本柱となっていったことが大きい。図抜けた選手がいるワケではないが、中野 幸治監督の下、毎年、夏へ向けてきっちりと整備してくることでも定評がある。

 公立校でこの夏、唯一のシード校となった東浦はCブロックで、しっかりとした野球をする西春豊田の勝者が初戦となる。昨秋のどん底状態から一冬で大きく成長した勢いで目標であるベスト8まで駆け上がれるか注目したい。カギを握るのは大きく成長した左腕大沼 毅羅君と神谷 知宏君の両投手だ。リードオフマンの仲川 将吾君のセンスの良さも光る。立ちはだかりそうな相手としては刈谷工科津島、元気のいい高蔵寺三好豊橋東の勝者に大同大大同と科技学園豊田の勝者あたりだろうか。伝統の愛知商津島北もいる。とはいえ、いずれも決め手がないので、東浦としては大いにチャンスはある。

 Dブロックの東邦は4回戦で当たりそうな豊橋中央が最初のヤマか。東邦鈴木 唯斗君と上田 玖久君を中心とした打撃力は県内でもトップレベル。長身の知崎 滉平君を中心とした投手陣も質が高いが、内野もこなす三浦 心空君がどのような形で起用されていくのかというところもポイントとなりそうだ。豊橋中央辻 康平君らの投手陣がその強力打線をどこまで抑え込めるかであろう。5回戦では愛知黎明清林館の尾張勢と当る可能性が高そうだ。西尾の試合ぶりも注目したい。

 今春の選抜ベスト4で、今大会でも優勝候補筆頭に推す声もある中京大中京はEブロックで4回戦ではイケイケ野球でノリのいい名市工の挑戦を受けそうだ。それを突破すれば評判の好投手遠藤 泰介君を擁する刈谷と地力のある豊川、昨秋ベスト4の中部大春日丘あたりとベスト8を競うことになりそうだ。いずれにしても中京大中京としては、ベスト8までにエース畔柳 亨丞君をどこまで休ませながら戦えるかというところがその先を見据えた場合の最大のポイントとなる。そのためには左腕の柴田 青君と大矢 流晟君、大江 嶺君らがどこまで畔柳投手の負担を軽くさせられるかというところである。また、細江 泰斗君、杉浦 泰文君から始まる全国レベルの打線は桑垣 秀野君、原 尚輝君ら中軸がどこまで破壊力を示していくかというところも見どころだ。

 最も激戦かなと思われるのが春季県大会を制した愛工大名電のFブロックだ。愛工大名電は左腕田村 俊介君と寺嶋 大希君、野嵜 健太君らの投手陣が注目される。主将でもある田村君は打っても3番で投げない時は一塁か外野を守るが、その打撃も魅力だ。このブロックには一昨夏の代表校の誉や、昨年の夏季大会で愛工大名電に劇的な逆転サヨナラ3ランで勝利した至学館豊田大谷もいる。至学館は今年も「何を仕掛けてくるかわからない」トリッキーさは備えている。加えて、球速はさほどないものの石川 大翔君も春先には健大高崎打線から15三振を奪うなどの投球術を持っている。その至学館の初戦中部大一との試合は序盤の好カードと言っていいであろう。

[page_break:東海準Vの享栄、全尾張2連覇の日本福祉大附のブロックも激戦必至]

東海準Vの享栄、全尾張2連覇の日本福祉大附のブロックも激戦必至

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中京大中京・畔柳亨丞

 Gブロックの一昨年夏の準優勝校・桜丘は初戦で当たりそうな同じ東三河地区の公立の伝統校成章が難敵になりそうだ。成章仁枝 瑞貴投手が安定しているし打線も思い切りがいい。河合 邦宗監督も、「久しぶりに投打にまとまったチームになってきている」と手ごたえを感じているだけに、シード校に一泡吹かせたいという思いも十分だ。桜丘も受けて立つと足元を掬われかねない。このブロックには西三河の公立の雄・西尾東や全尾張大会で昨秋、今春と優勝を果たし着実にチーム力を上げている日本福祉大附もいる。日本福祉大附は松山 海大君が安定しており、かつて神村学園を5度甲子園に導いている山本 常夫監督も「ベスト8の壁突破」を大いに意識している。この夏はそのチャンスと見ているようだ。また、かつて春4回、夏2回甲子園出場の愛知もこのブロックだ。さらに、時習館渥美農の東三河勢同士の対戦も1回戦の好カードと言っていいであろう。

 春は県大会準優勝、東海地区大会でも準優勝を果たした享栄のHブロック。中京大中京で全国制覇を果たした大藤 敏行監督が就任して3年目となって、「やっと、自分の描いていたイメージに近いチームになってきた」と大藤監督も好感触を得ている。ことに140キロ超の竹山 日向君、肥田 優心君、菊田 翔友君、濵田 慶太君という豊富な投手陣を武器に、1995(平成7)年以来の夏の甲子園を目指す戦いに挑む。期待の好打者彦坂 藍斗君も故障が癒えて万全で挑めそうだ。リードオフマン田村 虎治郎君も注目選手だ。初戦の相手は板井 勇弥投手が評価されている蒲郡山口 聖亜投手がまとまっている知立東の勝者となる。次は岡崎工科岡崎城西名城大附の勝者が当たりそうだ。昨年の夏季大会ではベスト4まで進出した岡崎工科小林 悠真捕手の評価が高い。反対ゾーンからは、半田安城東の勝者か大成が挑むことになりそうだ。半田は春季県大会では2回戦で享栄に0対14で大敗している。今度対戦出来れば、何とか抵抗を示したいところだ。

 参加校の多い愛知大会(今年は179チーム)は、ベスト8の段階で再抽選となる。そして、多くの指揮官たちは、「ベスト8からは別の大会が始まる感じで新たな緊張感がある」という。胸突き八丁でそこからの新たな戦いということになる。この夏の愛知大会では、あえて順番をつけるとしたら享栄中京大中京愛工大名電東邦至学館という順になるだろうか。それを名古屋市以外の星城栄徳中部大春日丘豊川、日本福祉大附、愛産大三河、豊橋中央などが追う。さらにシードの東浦に好投手のいる刈谷西尾成章国府蒲郡などの公立勢がどういう戦いを示していくかというところも見どころとなる。いずれにしても、「球国愛知」の夏は熱い。その戦いは見どころ満載だ。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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